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畑の真ん中にその駅はあった。
意外としっかりした建物の前には何台もの馬車が止まり、同じような服を着た人が荷物を降ろしたりと忙しそうにしている。
私たちの乗った馬車は、建物のちょうど真ん中、入口の前に止まっていた。
「殿下。お久しぶりです」
馬車から降りてすぐ、そう声をかける人がいた。
他の人よりも少しだけ飾りの多いジャケットを着たおじさんだ。
後頭部が少し寂しいけど、威厳はある。みた感じ偉い人っぽい。
「バルトル卿。元気そうでなによりだ」
カークがにこやかに応じると、おじさんは頭を下げた。
「ありがとうございます。今回の交渉の責任者に任命されました」
「面倒をかけるな」
「いいえ、微力ながら、最善を尽くします。ところで、そちらの方は……」
「あぁ」
カークとおじさんが私を見た。
「彼女がキーラ・オンリンナ嬢だ。道中よろしく頼む」
「キーラ・オンリンナと申します。よろしくお願いいたします」
紹介されて、そう軽く頭を下げると、おじさんは目を細めた。
「ファーナー・バルトルと申します。この度は叙爵、おめでとうございます。道中なにかありましたら遠慮なくお申し付けください」
「ありがとうございます」
ニコニコしながら、そんなやり取りをする。
やっぱりこう言うのは苦手だ。話も続かないし。
「オンリンナ様の車両は五両目になります。誰かに案内させましょう」
おじさんはそう言って、近くの職員らしい男性を呼んだ。
駅は一階建てで、アーチ型の入り口をくぐると、前世と同じような作りのホームがあった。線路は一本。
つやつやして流線が綺麗な緑色の車両は、八両編成で、何製なのかは分からないが、金属っぽいものでできている。
あ、扉は手動だったけど、本当に良く作ったよねって感じだ。
「こちらです。少し遅れそうですので、出発前にまた連絡します」
と案内された場所では、ケビンとミリアさんが待っていた。
「やっと来たな。来ないかと思った」
ケビンがそう言いながら、私の手からピーちゃんのカゴをとりあげた。
「良い列車だな。私も中を見てみたい。キーラ、乗ってみよう」
カークが、ムッとして言い返そうとした私の背を押して、列車に乗り込む。
中もやっぱり滑らかな線が印象的な作りになっていた。
私が乗った車両にはバストイレ付の個室が一つに、ベッドだけの部屋が二つ。その間にテーブルと椅子が置かれた空間があった。どの場所も窓が大きくて景色が良く見えそうだ。
「キーラはここね」
ケビンがバストイレ付を指差した。
「え、いいの?」
「いいに決まってる」
とカークが私を置いて、さっさとその部屋へと入って行った。
「これなら長旅も過ごしやすそうだな」
カークは興味深そうに部屋のあちこちの扉を開けたり、覗いたりしてそう言った。
「そうだね、でも一日だからもったいない」
「そうか? 一日は意外と長いよ」
「カーク、そろそろ出発だってよ」
ケビンがカゴを持って部屋に入ってきた。
「そうか、早いな」
カークはそう言って、私に近付くとやっぱり抱きしめてきた。
「キーラ、気をつけて」
「うん」
私も抱きしめ返すと、カークはため息をついて離れた。
「ケビンも気をつけて。ミリアも、キーラを頼む」
「あぁ、分かってる」
「お任せください」
二人にもそう言って、あっさりと外へ向かった。
なんとなくその後を扉まで追う。
「カーク」
列車から降りたカークが振り返る。
「キーラ、帰れなくなったら、迎えに行く」
「うん」
「だから、心配しないで行っておいで」
「うん」
頷くと同時に、さっきの職員さんがやってきた。
「扉を閉めます。よろしいですか?」
「あぁ、大丈夫だ」
私より先にカークが答えて、扉が閉められた。
――――作者より一言―――――
ここまで読んでくださりありがとうございます。
明日の更新はお休みします。
次回更新は9月29日になります。
次回もよろしくお願いします。
意外としっかりした建物の前には何台もの馬車が止まり、同じような服を着た人が荷物を降ろしたりと忙しそうにしている。
私たちの乗った馬車は、建物のちょうど真ん中、入口の前に止まっていた。
「殿下。お久しぶりです」
馬車から降りてすぐ、そう声をかける人がいた。
他の人よりも少しだけ飾りの多いジャケットを着たおじさんだ。
後頭部が少し寂しいけど、威厳はある。みた感じ偉い人っぽい。
「バルトル卿。元気そうでなによりだ」
カークがにこやかに応じると、おじさんは頭を下げた。
「ありがとうございます。今回の交渉の責任者に任命されました」
「面倒をかけるな」
「いいえ、微力ながら、最善を尽くします。ところで、そちらの方は……」
「あぁ」
カークとおじさんが私を見た。
「彼女がキーラ・オンリンナ嬢だ。道中よろしく頼む」
「キーラ・オンリンナと申します。よろしくお願いいたします」
紹介されて、そう軽く頭を下げると、おじさんは目を細めた。
「ファーナー・バルトルと申します。この度は叙爵、おめでとうございます。道中なにかありましたら遠慮なくお申し付けください」
「ありがとうございます」
ニコニコしながら、そんなやり取りをする。
やっぱりこう言うのは苦手だ。話も続かないし。
「オンリンナ様の車両は五両目になります。誰かに案内させましょう」
おじさんはそう言って、近くの職員らしい男性を呼んだ。
駅は一階建てで、アーチ型の入り口をくぐると、前世と同じような作りのホームがあった。線路は一本。
つやつやして流線が綺麗な緑色の車両は、八両編成で、何製なのかは分からないが、金属っぽいものでできている。
あ、扉は手動だったけど、本当に良く作ったよねって感じだ。
「こちらです。少し遅れそうですので、出発前にまた連絡します」
と案内された場所では、ケビンとミリアさんが待っていた。
「やっと来たな。来ないかと思った」
ケビンがそう言いながら、私の手からピーちゃんのカゴをとりあげた。
「良い列車だな。私も中を見てみたい。キーラ、乗ってみよう」
カークが、ムッとして言い返そうとした私の背を押して、列車に乗り込む。
中もやっぱり滑らかな線が印象的な作りになっていた。
私が乗った車両にはバストイレ付の個室が一つに、ベッドだけの部屋が二つ。その間にテーブルと椅子が置かれた空間があった。どの場所も窓が大きくて景色が良く見えそうだ。
「キーラはここね」
ケビンがバストイレ付を指差した。
「え、いいの?」
「いいに決まってる」
とカークが私を置いて、さっさとその部屋へと入って行った。
「これなら長旅も過ごしやすそうだな」
カークは興味深そうに部屋のあちこちの扉を開けたり、覗いたりしてそう言った。
「そうだね、でも一日だからもったいない」
「そうか? 一日は意外と長いよ」
「カーク、そろそろ出発だってよ」
ケビンがカゴを持って部屋に入ってきた。
「そうか、早いな」
カークはそう言って、私に近付くとやっぱり抱きしめてきた。
「キーラ、気をつけて」
「うん」
私も抱きしめ返すと、カークはため息をついて離れた。
「ケビンも気をつけて。ミリアも、キーラを頼む」
「あぁ、分かってる」
「お任せください」
二人にもそう言って、あっさりと外へ向かった。
なんとなくその後を扉まで追う。
「カーク」
列車から降りたカークが振り返る。
「キーラ、帰れなくなったら、迎えに行く」
「うん」
「だから、心配しないで行っておいで」
「うん」
頷くと同時に、さっきの職員さんがやってきた。
「扉を閉めます。よろしいですか?」
「あぁ、大丈夫だ」
私より先にカークが答えて、扉が閉められた。
――――作者より一言―――――
ここまで読んでくださりありがとうございます。
明日の更新はお休みします。
次回更新は9月29日になります。
次回もよろしくお願いします。
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