このやってられない世界で

みなせ

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 また、やってしまった。
 途中何度かアリーダさんに起こされたのはなんとなく覚えているけど、結局ちゃんと目が覚めたのは真夜中で、時計を見ると次の日になっていた。
 流石にもう眠くなくてベッドを出た。
 多分アリーダさんがやってくれたんだろう。ピーちゃんのカゴにはカバーがかけられ、テーブルの上にはサンドイッチとポットが用意されていた。
 お昼も夜も食べ損ねてしまったからすごくありがたい。

「明りつけたらピーちゃん起きそうだなぁ」

 起きたらきっとサンドイッチを狙ってくるだろう。
 ふと庭を見ると、いい感じに明るい。

「外で食べるか」

 サンドイッチとカップだけ持ってガゼボへ向かう。

――――うん、ちょうどいい。

 月を見ながらゆっくりサンドイッチを食べる。
 中身は全部味が違うジャムだ。
 これはこれでおいしいけど、ここの食事は本当においしい。二食食べられなかったのは本当に残念だ。

「キーラ」

 ほぼ食事も終った頃、カークが現れた。
 はい、想定の範囲内です。ちょっとびっくりしたけど。

「もう、大丈夫か?」
「うん。ごめん。驚かせて……まだ起きてたの?」
「目が覚めるのを待っていた」

 カークは言いながら私の隣に腰をおろす。

「……キーラのところの家令も心配していた」
「あ」

 そうだった。今日もアーサーに連絡するんだった。

「大丈夫だった?」
「あぁ、ブレスレットがキーラの魔力じゃなければ駄目なら起こそうと思っていたんだが、誰でもよかったから。ただ、キーラがいなかったからかなり心配された」

 それは、重ねがさねすみません。

「それで、外で会う話だが、私やキーラが外とは言え直接会うと、誰かに見られた時面倒だ。それで、リーナについての陳情を利用して、事情を聞くために騎士団へ呼び出すと言う形をとることにした」
「じゃあ、会うのはダリルとデリック?」
「呼び出す場所が騎士団の本部だから、そう言うことになる」
「……大丈夫かな?」
「何がだ?」
「えーっと」

 アーサーは二人のこと結構怒ってたけど、アーサーも大人だから、大丈夫……だよね。

「ううん、なんでもない」
「……アルマンから聞いたが、あの家令はカーラが連れてきたのか?」
「連れて来たって言うか、なんでも冒険者仲間だったみたい」
「冒険者……それは聞いたことがなかったな」

 少し寂しそうにカークが言った。
 大丈夫、キーラも知らなかったから。

「アーサー、結構強いみたいだよ。魔法も使えるみたいだし」
「だろうな」
「分かるの?」

 って、愚問でしたね。

「まぁ、ね。……近いうち、直接会ってみたいな」
「……うん」

 何か嫌な予感がするけど、とりあえず頷いておこう。

「ところで、キーラ、何で急に治癒魔法を使おうと思ったんだ?」
「それは、使えるはず、だから?」
「そう言えば前も使えると言っていたな」
「うん、前は、確かに使えたんだけど……」

 と、首を傾げる。

「なんて言うか使い方を忘れたのかな?」
「……」
「こんな感じかなと思ってやってみたんだけど、魔力の流れを感じたら、いつかみたいに急にぐるぐるして具合が悪くなった」
「そうか」
「何でだろう?」

 カークも顔をしかめながら、首を傾げる。
 分からないよね。やっぱり。

「なんでだろうな? キーラなら魔法を使えないはずはないと思うんだが」
「カークでも分からないなら、仕方がないね」
「私は魔法は感覚で使っているから……後でケビンに聞いてみよう」

 そう言って、カークは私の頭をなでた。

「分かるまで、魔法は禁止。絶対使ったら駄目だ」
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