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「出て行ってもらうと言いますが、一体どうやって」
もっともな質問だ。
カークが簡単に出て行ってもらうと言った時、私もそう思った。
「それを相談しようと思って今日急にここに来たの。ほら明日帰ってくるんでしょ?」
「そうですね。……明日帰る予定です」
「そうだよね、だから、あの人が帰ってくる前に話したかったの」
「それはお嬢様の考えですか? それとも王家の方たちの考えですか?」
「カー……殿下にも言われたけど、私もそう思ってる」
「殿下……王家を信じるのですか?」
アーサーの眉の間のしわが一層深くなる。
「信じるとか、信じないとかじゃなく……関係ない人たちをいつまでもこの家におきたくないだけだよ」
「関係ないのは、王家も同じではないのですか? それどころかさっきの話だとこの状態になったのも王家のせいでは?」
「それは……」
「……旦那様に届いた手紙では、お嬢様が王家に保護されたのは王家の不手際のせいだとありました。それに、今日お嬢様についてきた護衛、あの方はお嬢様を殴った方の血縁ですよね? 殴った本人の気配もお嬢様から感じます。加害者を被害者の側に置くのも信じられません」
アーサーが、凄く怒っている。一瞬息を吸って、
「そして、お嬢様を預かると言う手紙以外に、お嬢様に関する連絡もありませんでした。こちらから何度かお嬢様の状態を尋ねる文書も送りましたが、一度も返答がありませんでした。私たちがどんなに心配したか分かりますか? 私にしてみれば、お嬢様をこのような目に合わせた王家の言葉を簡単には信じられません」
私を抱きしめているマリーも、その言葉に何度も頷いている。
確かにそう言われると、おかしく感じる。
でも。
「じゃあ、アーサーは、あの人たちがここにいたほうがいいと思っているの?」
「そうは思っていません。出て行ってもらう方がいい、そう思います。ですが、それによってお嬢様にまた不利益が……」
「不利益。もう不利益なら充分被ってる。あの人は私と何の関係もない人なんだよ? それなのに私をここに押し込めて、この家を自由にしてる」
「……そうですね」
アーサーがため息をついた。
「アーサー、手紙って、もしかしてあの人の名前で書いた?」
「はい」
「私を返すようにって?」
「えぇ」
「そっか」
なんとなくほっとした。あの人は私にやっぱり興味なかった。
「どうしました?」
「その手紙が来たのは知っていたけど、あの人からだって聞いて何でだろうって……」
「あぁ、そう言うことでしたか」
アーサーも思い当たったらしい。
「私の名前で書くわけにはいかなかったので、旦那様の名前で出しました。そのせいで返事が来なかったのですね」
「……多分」
カークが返事を書かなかった理由は分からないけど。
「……お嬢様。リーナお嬢様がこちらに向かっているようです」
私が次の言葉を探していると、不意にアーサーがそう言った。
「へ?」
どう言うこと? まだお昼前だよ。学園は今日午後もあるよね。
って、なんでリーナが来るのが分かるの?
「リーナお嬢様の馬車がこちらに向かっています」
それは分かったけど。
「どうしよう。会いたくないし、まだ何も話してない」
「お嬢様は今日はあちらに戻るんですよね」
「うん」
「なら、これをお持ちください」
アーサーがそう言って、腕からブレスレットを一つ外して私に差し出した。
「これは?」
「魔力を通すとこちら側と通信できます。使い方が分からなければ誰かに聞いてください」
「誰かって」
「殿下でもいいですよ」
え、そこはカークなの?
「ここにまた来るのは危険です。相談はどこか外でした方がいいでしょう。夜にでも連絡をください」
「分かった」
アーサーがドアを開けると、やっぱり侍女がドアの前に居た。
この人たち、何なの? 暇なの?
「何をしているんですか? 仕事に戻りなさい。お嬢様先に行ってください」
アーサーに言われ、私はとりあえず玄関を目指す。
自分の家だから、最短距離で行ける。
マリーが玄関を開けると、ダリルが立っていて、私をひょいと担ぎあげた。
「わっ!」
「リーナが近づいてる。急ぐから我慢してくれ」
言うが早いが走りだし、あっという間に馬車へ放り込まれた。
馬車が動きだすのと、向かい側から見知ったオンリンナ家の馬車が来るのが同時だった。
「危なかったな」
ダリルが馬車の床に座り込んだ私を、椅子の上に持ち上げながらそう言った。
うーんやっぱり、私の扱いかなりひどくない?
もっともな質問だ。
カークが簡単に出て行ってもらうと言った時、私もそう思った。
「それを相談しようと思って今日急にここに来たの。ほら明日帰ってくるんでしょ?」
「そうですね。……明日帰る予定です」
「そうだよね、だから、あの人が帰ってくる前に話したかったの」
「それはお嬢様の考えですか? それとも王家の方たちの考えですか?」
「カー……殿下にも言われたけど、私もそう思ってる」
「殿下……王家を信じるのですか?」
アーサーの眉の間のしわが一層深くなる。
「信じるとか、信じないとかじゃなく……関係ない人たちをいつまでもこの家におきたくないだけだよ」
「関係ないのは、王家も同じではないのですか? それどころかさっきの話だとこの状態になったのも王家のせいでは?」
「それは……」
「……旦那様に届いた手紙では、お嬢様が王家に保護されたのは王家の不手際のせいだとありました。それに、今日お嬢様についてきた護衛、あの方はお嬢様を殴った方の血縁ですよね? 殴った本人の気配もお嬢様から感じます。加害者を被害者の側に置くのも信じられません」
アーサーが、凄く怒っている。一瞬息を吸って、
「そして、お嬢様を預かると言う手紙以外に、お嬢様に関する連絡もありませんでした。こちらから何度かお嬢様の状態を尋ねる文書も送りましたが、一度も返答がありませんでした。私たちがどんなに心配したか分かりますか? 私にしてみれば、お嬢様をこのような目に合わせた王家の言葉を簡単には信じられません」
私を抱きしめているマリーも、その言葉に何度も頷いている。
確かにそう言われると、おかしく感じる。
でも。
「じゃあ、アーサーは、あの人たちがここにいたほうがいいと思っているの?」
「そうは思っていません。出て行ってもらう方がいい、そう思います。ですが、それによってお嬢様にまた不利益が……」
「不利益。もう不利益なら充分被ってる。あの人は私と何の関係もない人なんだよ? それなのに私をここに押し込めて、この家を自由にしてる」
「……そうですね」
アーサーがため息をついた。
「アーサー、手紙って、もしかしてあの人の名前で書いた?」
「はい」
「私を返すようにって?」
「えぇ」
「そっか」
なんとなくほっとした。あの人は私にやっぱり興味なかった。
「どうしました?」
「その手紙が来たのは知っていたけど、あの人からだって聞いて何でだろうって……」
「あぁ、そう言うことでしたか」
アーサーも思い当たったらしい。
「私の名前で書くわけにはいかなかったので、旦那様の名前で出しました。そのせいで返事が来なかったのですね」
「……多分」
カークが返事を書かなかった理由は分からないけど。
「……お嬢様。リーナお嬢様がこちらに向かっているようです」
私が次の言葉を探していると、不意にアーサーがそう言った。
「へ?」
どう言うこと? まだお昼前だよ。学園は今日午後もあるよね。
って、なんでリーナが来るのが分かるの?
「リーナお嬢様の馬車がこちらに向かっています」
それは分かったけど。
「どうしよう。会いたくないし、まだ何も話してない」
「お嬢様は今日はあちらに戻るんですよね」
「うん」
「なら、これをお持ちください」
アーサーがそう言って、腕からブレスレットを一つ外して私に差し出した。
「これは?」
「魔力を通すとこちら側と通信できます。使い方が分からなければ誰かに聞いてください」
「誰かって」
「殿下でもいいですよ」
え、そこはカークなの?
「ここにまた来るのは危険です。相談はどこか外でした方がいいでしょう。夜にでも連絡をください」
「分かった」
アーサーがドアを開けると、やっぱり侍女がドアの前に居た。
この人たち、何なの? 暇なの?
「何をしているんですか? 仕事に戻りなさい。お嬢様先に行ってください」
アーサーに言われ、私はとりあえず玄関を目指す。
自分の家だから、最短距離で行ける。
マリーが玄関を開けると、ダリルが立っていて、私をひょいと担ぎあげた。
「わっ!」
「リーナが近づいてる。急ぐから我慢してくれ」
言うが早いが走りだし、あっという間に馬車へ放り込まれた。
馬車が動きだすのと、向かい側から見知ったオンリンナ家の馬車が来るのが同時だった。
「危なかったな」
ダリルが馬車の床に座り込んだ私を、椅子の上に持ち上げながらそう言った。
うーんやっぱり、私の扱いかなりひどくない?
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