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「ごめん。キーラ」
そうカークの声が聞こえたような気がした。
目が覚めると、ちゃんとベッドの上にいた。
ぱちっとすっきり爽やかな目覚めに、自分でもびっくりするくらい。
眠気はもちろんまったくないし、だるさも重さも感じなかった。
昨日までの自分の体とは何かが違っている。そう感じた。
「もう大丈夫だな」
朝ご飯を持って現れたケビンが、ピアスを見てそう言った。
自分でも見てみたら、濃い青だったピアスの色が、透き通るアイスブルーになっている。
「これ……どう言うこと?」
「それが、本来の正しい色だ。体、楽になってるだろう?」
「うん、昨日までとは全然違う。すっきり爽やか」
「良かったな。……昨日、カーク来たんだろ?」
「うん。来たよ」
頷くと、ケビンは顔をしかめた。
「何?」
「いや。カーク何か言っていたか?」
「昨日? 昨日は、花を見てただけで、特に何も言ってなかったと思う」
ずっと……してたって言うのはいいよね、言わなくでも。
あ、でも、昨日……、最後に魔力が流れてきたような。
あれのせい、かな?
「あ、もしかしてカークが治してくれた、の?」
「……まぁ、そうだな。そう言うことになるな」
ケビンの顔がさらにしかめられる。何だろう、何かあるのか?
「で、そのカークはどうしたの?」
朝一で現れそうなのに。
「アリーダさんに怒られてる」
「え?」
「気にするな。カークのは自業自得だから。それより、朝ご飯が終わったら少し歩いてみるか? 多分もう眠くならないと思うけど、確かめた方がいい」
ケビンの言う通りだ。本当に大丈夫かは歩いてみたほうがいい。
さっそくご飯を食べて、庭へと繰り出す。
ケビンが先を歩き、私が後に続く。
いつもならそろそろピアスの色が変わる辺りで、ケビンが足を止めた。
「どうだ?」
「全然大丈夫。まだまだ歩けそう。……ピアスは?」
「変わってない。よかったな」
ケビンはそう言ったけど、さっきからずっと浮かない顔だ。
私は眠くならなくて嬉しいけれど、何か気になることがあるんだろうか。
「もう少し歩くか? それとも戻る?」
「もう少し歩いてみる。庭もゆっくり見てみたいし」
そう言って歩き出したけど、雰囲気が悪い。なんて言うか重苦しい。
この間、一緒に歩いた時はもう少し気楽だったのに。
言葉もなくて見上げた空に鳥影を見て思い出した。
ペットとは名ばかりの変なトリのことを。
「ケビン、いつも聞くけど、ピーちゃん元気だった?」
「あぁ、また少し大きくなっていた」
「え。またって、どのくらい」
「手のひらから溢れるくらいだな。飛ぶのが大変そうだった」
ケビンの手、結構大きいのに、それ以上のサイズってこと?
大きくなりすぎでしょ。
羽のサイズが変わらないなら、そりゃあ飛べなくなる。
「まだ飛べるんだよね」
「一応飛んでたけど、低空飛行だった」
「一応……って、それ、もう飛べてないんじゃない! まさか毎日肉ばっかりたべさせてないよね」
「……」
なんで黙る。そしてなんで目を反らす。
ほっといた私も悪いけど、もしかしたらピーちゃんは原型をとどめていないかもしれない。
「ケビン、ピーちゃんをそろそろ連れてきてもらえる?」
「分かった。必ず連れてくる」
――――作者より一言―――――
ここまで読んでくださりありがとうございます。
記念すべき(?)100話になりました。
なかなか進まない上、まだまだだらだら続きます。
ラストに到達できるよう頑張りますので、
出来ればこれからもよろしくお願いします。
そうカークの声が聞こえたような気がした。
目が覚めると、ちゃんとベッドの上にいた。
ぱちっとすっきり爽やかな目覚めに、自分でもびっくりするくらい。
眠気はもちろんまったくないし、だるさも重さも感じなかった。
昨日までの自分の体とは何かが違っている。そう感じた。
「もう大丈夫だな」
朝ご飯を持って現れたケビンが、ピアスを見てそう言った。
自分でも見てみたら、濃い青だったピアスの色が、透き通るアイスブルーになっている。
「これ……どう言うこと?」
「それが、本来の正しい色だ。体、楽になってるだろう?」
「うん、昨日までとは全然違う。すっきり爽やか」
「良かったな。……昨日、カーク来たんだろ?」
「うん。来たよ」
頷くと、ケビンは顔をしかめた。
「何?」
「いや。カーク何か言っていたか?」
「昨日? 昨日は、花を見てただけで、特に何も言ってなかったと思う」
ずっと……してたって言うのはいいよね、言わなくでも。
あ、でも、昨日……、最後に魔力が流れてきたような。
あれのせい、かな?
「あ、もしかしてカークが治してくれた、の?」
「……まぁ、そうだな。そう言うことになるな」
ケビンの顔がさらにしかめられる。何だろう、何かあるのか?
「で、そのカークはどうしたの?」
朝一で現れそうなのに。
「アリーダさんに怒られてる」
「え?」
「気にするな。カークのは自業自得だから。それより、朝ご飯が終わったら少し歩いてみるか? 多分もう眠くならないと思うけど、確かめた方がいい」
ケビンの言う通りだ。本当に大丈夫かは歩いてみたほうがいい。
さっそくご飯を食べて、庭へと繰り出す。
ケビンが先を歩き、私が後に続く。
いつもならそろそろピアスの色が変わる辺りで、ケビンが足を止めた。
「どうだ?」
「全然大丈夫。まだまだ歩けそう。……ピアスは?」
「変わってない。よかったな」
ケビンはそう言ったけど、さっきからずっと浮かない顔だ。
私は眠くならなくて嬉しいけれど、何か気になることがあるんだろうか。
「もう少し歩くか? それとも戻る?」
「もう少し歩いてみる。庭もゆっくり見てみたいし」
そう言って歩き出したけど、雰囲気が悪い。なんて言うか重苦しい。
この間、一緒に歩いた時はもう少し気楽だったのに。
言葉もなくて見上げた空に鳥影を見て思い出した。
ペットとは名ばかりの変なトリのことを。
「ケビン、いつも聞くけど、ピーちゃん元気だった?」
「あぁ、また少し大きくなっていた」
「え。またって、どのくらい」
「手のひらから溢れるくらいだな。飛ぶのが大変そうだった」
ケビンの手、結構大きいのに、それ以上のサイズってこと?
大きくなりすぎでしょ。
羽のサイズが変わらないなら、そりゃあ飛べなくなる。
「まだ飛べるんだよね」
「一応飛んでたけど、低空飛行だった」
「一応……って、それ、もう飛べてないんじゃない! まさか毎日肉ばっかりたべさせてないよね」
「……」
なんで黙る。そしてなんで目を反らす。
ほっといた私も悪いけど、もしかしたらピーちゃんは原型をとどめていないかもしれない。
「ケビン、ピーちゃんをそろそろ連れてきてもらえる?」
「分かった。必ず連れてくる」
――――作者より一言―――――
ここまで読んでくださりありがとうございます。
記念すべき(?)100話になりました。
なかなか進まない上、まだまだだらだら続きます。
ラストに到達できるよう頑張りますので、
出来ればこれからもよろしくお願いします。
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