このやってられない世界で

みなせ

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 うへぇ、と内心思いながら、ダリルの爵位を継いだら分かると言うのが気になった。
 そう言えば、カークが帰ってきたら当主になる契約をすると言っていた。それに関係があるだろうか?

「アディソン家は、ダリルが爵位を継ぐの?」
「どうだろうな。一応長男だから、継ぐかもな」
「かもなって」
「選ばれなければどうしようもないだろう?」
「選ばれる? 誰に?」
「父と陛下、だ」
「選ばれなければどうなるの?」
「今まで通りだ」

 ダリルはそう肩をすくめた。

「家からは出るかもしれないが、騎士団に所属して、普通に結婚するだろうな」
「結婚!」
「なんで驚くんだ。するだろ、普通」
「普通……って、相手は?」
「おい、おまえなぁ」

 思い切りのため息。
 すみません。なんとなく口に出てしまいました。

「もしかして、婚約者とかっているの?」
「いや、居ない」
「好きな人は?」
「だから、何故それを聞く。デリカシーってものがないのか」
「だって、貴族って政略結婚とかで婚約者がいるのが普通かと思って」

 不思議だった。
 ゲーム【忘却のアビリティ】に悪役令嬢はキーラだけ。
 そのキーラは攻略対象者の誰とも絡まない。
 攻略対象者には女の影もない。高感度さえ上げれば、ヒロインの一人勝ちだ。
 でも、ヒロインへの嫌がらせはある。(←これはキーラはやっていない)
 それは何故なのかって。

「それはどこの国の話だ……」
「違うの?」
「違うな。そうか、キーラは……知らないか。知らないよな」

 呆れられてしまった。

「じゃあ政略結婚ってないの?」
「ある。が、まれだ。殆どないと言ってもいいくらい少ないな。他国の人間と結婚する場合くらいだな。それでも他国はどうか知らないが、この国では本人が嫌がればナシだ。政略と言っても名ばかりだな」
「へぇ。じゃあ、ほぼ恋愛結婚ってこと?」
「そう、なるな」
「身分は?」
「関係ない」

 そうなのか。だから、攻略対象者にも婚約者がいないのか。
 そこはゲーム通りになるんだ。

「なら、婚約もしないの?」
「一応結婚を決めて、結婚式までの間が婚約期間になる。最大でも一年くらいが普通だ」
「ふーん」
「社交界が出会いの場だけど、今、適齢期の男女は出席していない」
「何で?」
「殿下の相手がまだ決まっていないから」
「は? え? 殿下ってカークでしょ?」

 何でそこでカークが出てくるの?

「説明が難しいな。これまでの王家の前例から見て、王太子が伴侶を選んだ平均は十八歳から二十三歳くらいだ。だから、この国の殿下を狙う、殿下に年が近い女子は殿下が社交界に出る十八歳まで、皆家にこもっている」
「何で? 別にこもらなくても。学園だってあるし」
「キーラは一般クラスか?」
「うん」
「そうか。殿下は別棟じゃないか?」
「あ」

 あ、そうか。リーナへのいやがらせは、そう言うことなのか。
 カークを狙っている多くの女子が、暗黙の了解を破るリーナを面白くなかったってことか。

「それは分かったけど、なんでダリルも……」
「キーラ、さっきも言ったけど、少しデリカシーってのを覚えたほうがいいぞ」
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