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私はわんわん泣いた
そんなつもりは無かったんだけど、自分ではどうしようもなくて、カークにしがみついたまんまで泣いた。
いままで溜まっていたものが、全部出たのかもしれない。
そんなに長い時間じゃなかったけど、カークは私が泣いている間中ずっと抱きしめてくれていて、時々ポンポンて背中を叩いてくれたり、頭をなででくれたり……うーん、なんて言ったらいいか。
おかげでだいぶ落ち着いたけど、落ち着いたら落ち着いたでどっか冷静な部分が、結局カークなんだね、なんて考えていた。
暫く立って、涙も鼻水も出なくなったころ、
「すまない」
って、軽くカークが謝ってきた。
謝ってなんでもすむと思うな、と言いたいがしゃくりあげ過ぎて声が出せそうになかった。とりあえず頷いておく。
「もう三日もキーラに触ってなかったし、ほら、毎日キーラとキスしてたから、つい……」
つい? ついって何よ。
あれは治療でしょ。人工呼吸と一緒! まるで習慣みたいにいわないでよ。
睨みつけると、カークは肩をすくめる。きっと、反省していない。
「何か飲み物を用意しようか?」
ムッとしていると、カークがそう言って、私を椅子に座らせた。
少し離れた位置にあった椅子をひきよせて、カークも座る。
「……いらない。それより、話って何?」
「あぁ、順番が逆になったけど、体調はどうだ? どこかおかしいところはないか? 」
「……大丈夫」
自分の中で、何が違ったのか良く分からないので首を傾げながら答えると、カークが少し笑った。
「そうか、それはよかった。魔力の移動は上手くいったし、私の魔力の回収もしたから、もう心配しなくていい」
その後に言葉が続かないので、私は気になっていたことを聞くことにした。
「そう言えば、ジャニアス家ってどうなったの?」
何か怪しい感じの話をしていたよね。
「セルジオたちは領地に戻った。屋敷は半壊させて、フランクとリオネルは、我々とこちらに転移し、今は本宮にいる」
「本宮?」
「王城だ。彼らは暫く父の管理下に置かれることになった」
「そうなんだ。えーっと、フランク、さ、ん、はまだ眠っているの?」
“さん”をつけるのが嫌だったが呼び捨てもいやだと思ったら、変な間ができてしまった。カークは気にしなかったみたいに続ける。
「あぁ、あのまま暫く眠らせておくことになった。フランクはリーナの影響を受けやすいようだから。それに世間的には死んだことにしたんだ」
「えっ!」
「そんなに驚くことじゃない、変にリーナを思い出して、うろつかれたら面倒だ」
面倒って。いや、面倒か。また何かされたら嫌だ。
図書館のことを、思い出して身震いする。
「大丈夫か?」
「う、うん。……それって罰なの?」
「フランクにか?」
頷く。
「いや、違う。刑罰は全部終わってからになる。フランクが個人的に動いたのか、誰かに指示されたのか。それに、まだリーナ達がなにを狙っているのか分かっていない」
カークはそう言って首を振った。
「カークはリーナがフランクに命令したと思っているの?」
「どうだろうな。フランクの入れ込みようは、デリックともジョシュアとも違っているように見えた」
「どんなふうに?」
「説明できない」
眉を寄せて渋い顔になる。
「そう……じゃあ、リーナは、どうしているの?」
「彼女は普通に学園に通っている」
「そうなんだ」
ん? あれ。聞いてから気がついたけど、
「カーク達って学園どうしてるの?」
私もだけど。
「あぁ、私とデリック、ケビンは公務で休みにしてある」
「そうなんだ……で、私は?」
「キーラは病欠の届け出を……」
え、何その沈黙。
「大丈夫だ、多分、侯爵が……」
もしかして私、無断欠席なの?
担任、あれだよ。リーナの取り巻きだよね?
「リーナは私が王宮にいるの知ってるよね。なら、リーナから先生に伝わっていないの?」
「あぁ、そうか……そうだな。ジョシュアにはリーナから伝わっているかもしれないな。でも学園には……」
ぼそぼそとつぶやき、カークは私を見た。
「明日ちゃんと確認しておく」
そして、弱々しくそう言った。
そんなつもりは無かったんだけど、自分ではどうしようもなくて、カークにしがみついたまんまで泣いた。
いままで溜まっていたものが、全部出たのかもしれない。
そんなに長い時間じゃなかったけど、カークは私が泣いている間中ずっと抱きしめてくれていて、時々ポンポンて背中を叩いてくれたり、頭をなででくれたり……うーん、なんて言ったらいいか。
おかげでだいぶ落ち着いたけど、落ち着いたら落ち着いたでどっか冷静な部分が、結局カークなんだね、なんて考えていた。
暫く立って、涙も鼻水も出なくなったころ、
「すまない」
って、軽くカークが謝ってきた。
謝ってなんでもすむと思うな、と言いたいがしゃくりあげ過ぎて声が出せそうになかった。とりあえず頷いておく。
「もう三日もキーラに触ってなかったし、ほら、毎日キーラとキスしてたから、つい……」
つい? ついって何よ。
あれは治療でしょ。人工呼吸と一緒! まるで習慣みたいにいわないでよ。
睨みつけると、カークは肩をすくめる。きっと、反省していない。
「何か飲み物を用意しようか?」
ムッとしていると、カークがそう言って、私を椅子に座らせた。
少し離れた位置にあった椅子をひきよせて、カークも座る。
「……いらない。それより、話って何?」
「あぁ、順番が逆になったけど、体調はどうだ? どこかおかしいところはないか? 」
「……大丈夫」
自分の中で、何が違ったのか良く分からないので首を傾げながら答えると、カークが少し笑った。
「そうか、それはよかった。魔力の移動は上手くいったし、私の魔力の回収もしたから、もう心配しなくていい」
その後に言葉が続かないので、私は気になっていたことを聞くことにした。
「そう言えば、ジャニアス家ってどうなったの?」
何か怪しい感じの話をしていたよね。
「セルジオたちは領地に戻った。屋敷は半壊させて、フランクとリオネルは、我々とこちらに転移し、今は本宮にいる」
「本宮?」
「王城だ。彼らは暫く父の管理下に置かれることになった」
「そうなんだ。えーっと、フランク、さ、ん、はまだ眠っているの?」
“さん”をつけるのが嫌だったが呼び捨てもいやだと思ったら、変な間ができてしまった。カークは気にしなかったみたいに続ける。
「あぁ、あのまま暫く眠らせておくことになった。フランクはリーナの影響を受けやすいようだから。それに世間的には死んだことにしたんだ」
「えっ!」
「そんなに驚くことじゃない、変にリーナを思い出して、うろつかれたら面倒だ」
面倒って。いや、面倒か。また何かされたら嫌だ。
図書館のことを、思い出して身震いする。
「大丈夫か?」
「う、うん。……それって罰なの?」
「フランクにか?」
頷く。
「いや、違う。刑罰は全部終わってからになる。フランクが個人的に動いたのか、誰かに指示されたのか。それに、まだリーナ達がなにを狙っているのか分かっていない」
カークはそう言って首を振った。
「カークはリーナがフランクに命令したと思っているの?」
「どうだろうな。フランクの入れ込みようは、デリックともジョシュアとも違っているように見えた」
「どんなふうに?」
「説明できない」
眉を寄せて渋い顔になる。
「そう……じゃあ、リーナは、どうしているの?」
「彼女は普通に学園に通っている」
「そうなんだ」
ん? あれ。聞いてから気がついたけど、
「カーク達って学園どうしてるの?」
私もだけど。
「あぁ、私とデリック、ケビンは公務で休みにしてある」
「そうなんだ……で、私は?」
「キーラは病欠の届け出を……」
え、何その沈黙。
「大丈夫だ、多分、侯爵が……」
もしかして私、無断欠席なの?
担任、あれだよ。リーナの取り巻きだよね?
「リーナは私が王宮にいるの知ってるよね。なら、リーナから先生に伝わっていないの?」
「あぁ、そうか……そうだな。ジョシュアにはリーナから伝わっているかもしれないな。でも学園には……」
ぼそぼそとつぶやき、カークは私を見た。
「明日ちゃんと確認しておく」
そして、弱々しくそう言った。
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