このやってられない世界で

みなせ

文字の大きさ
上 下
76 / 336

76 カーラの日記3

しおりを挟む
 大変なことになってしまった。
 アーサーにも、マリーにも、あの人たちにも怒られてしまった。
 特にクリスには本気で怒られた。

 ちらっとキーラを見せたあのお茶会から、毎回毎回、会うたびに紹介しろとうるさかったけど、同じ年の子に興味があるんだろう位にしか思っていなかった。
 今日急に城に呼び出されて、何事かと思ったら、廃嫡ものの事件を起こしたという。
 アリーダにその内容を聞いて、鳥肌が立った。

 クリスに、何故あの子がキーラのことを知っているのかと聞かれて、少しだけ気にかけてもらえればという簡単な気持ちで連れて行ったことを打ち明けたら、短絡的すぎるとさらに怒られた。

 このまま放置はできない。
 なんとかするようにと言われたので、明日会いに行くことになった。


  ※※※


 今日、お茶会と言う名の話し合いをしてきた。

 怖い。
 本当に怖い。

 信じられないほどの執着を見せている。
 まさかあんなに執着しているとは思わなかった。
 知り合ったら最後、絶対に手を離さなそうな勢いだった。
 あの子、キーラと同じ年の筈なのに、絶対おかしい。
 クリスがアリーダに再教育を命じていたけど、あれはそんなんじゃどうにもならないと思う。

 怖い、本当に怖い。

 確かに、家の娘はかわいい。
 遠くから見ると、あの人に似て見た目は綺麗だから、少しは気に入るだろうとは思ってた。でもあの子の周りには、家の娘なんか足元にも及ばないくらいのきれいどころがそろっているから、あんなに執着するとは思わなかった。

 あぁ、カーラの娘だなくらいで良かったのに。

 効果がありすぎた。
 今は、とてつもなく後悔している。

 せめて、クリスに相談してから実行すべきだった。


  ※※※


 今日も話し合いに行ってきた。
 もしかしてちゃんと紹介しないことが執着の原因じゃないか、
 ちゃんと紹介してしまえばと言ってみたが、却下された。
 もっとひどくなる、らしい。

 どうしてかと聞いたが、それは聞かない方がいいと言われた。
 きっとまた訳の分からない理由があるんだろう。

 長い話し合いの末、キーラに近づかせないためにも、とりあえず、キーラを人質にして行動を制限する方向で決まった。
 新しい契約が必要だったけど、いざとなればクリスがなんとかしてくれることになったからいいだろう。

 ゲーム的にはあの子の関心を得られた方がいいけれど、
 もしゲーム的な何かが起こらなければ、別の意味でキーラの危機だ。

 吉と出るか凶と出るか、不安しかない。

 キーラのためと思ってしたことだけど、キーラにはもしかしたら悪いことをしてしまったのかもしれない。
 私の目の黒いうちは、絶対に渡しはしないけれど。
 キーラが覚醒してしまったら、ちょっとした隙を狙ってくる。
 アリーダにそうならないようお願いしたけれど、あの子の方が上手だし、何よりもアリーダはあの子に弱い。
 いざとなればあてにはできない気がする。


  ※※※


 出来れば、ゲームが始まる前にキーラが覚醒してくれるのが、一番いい。
 そうすれば私がキーラを守れるから。
 でも、ゲームが始まってからの覚醒だと、間に合わないかもしれない。

 キーラ自身、少しぼんやりした子だし、覚醒しても日本人の女の子ならいくらシッカリしていたとしても、キーラに毛が生えたくらいの危機感しかないと思う。
 乙女ゲームのヒロイン並みに、男を手玉に取れるような子だったら問題ないけど、そんな子なかなかいないと思う。
 せめて、このページが、あの子に見つかる前に読まれて、不要な隙を作らないでくれればいいけど。


 キーラ、あの子には、本当に気をつけるのよ。

























――――作者より一言―――――

ここまで読んでくださりありがとうございます。

カーラの日記が長くなってしまったので、
本日2度目の更新しました。

次回もよろしくお願いします。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

どうやら悪役令嬢のようですが、興味が無いので錬金術師を目指します(旧:公爵令嬢ですが錬金術師を兼業します)

水神瑠架
ファンタジー
――悪役令嬢だったようですが私は今、自由に楽しく生きています! ――  乙女ゲームに酷似した世界に転生? けど私、このゲームの本筋よりも寄り道のミニゲームにはまっていたんですけど? 基本的に攻略者達の顔もうろ覚えなんですけど?! けど転生してしまったら仕方無いですよね。攻略者を助けるなんて面倒い事するような性格でも無いし好きに生きてもいいですよね? 運が良いのか悪いのか好きな事出来そうな環境に産まれたようですしヒロイン役でも無いようですので。という事で私、顔もうろ覚えのキャラの救済よりも好きな事をして生きて行きます! ……極めろ【錬金術師】! 目指せ【錬金術マスター】! ★★  乙女ゲームの本筋の恋愛じゃない所にはまっていた女性の前世が蘇った公爵令嬢が自分がゲームの中での悪役令嬢だという事も知らず大好きな【錬金術】を極めるため邁進します。流石に途中で気づきますし、相手役も出てきますが、しばらく出てこないと思います。好きに生きた結果攻略者達の悲惨なフラグを折ったりするかも? 基本的に主人公は「攻略者の救済<自分が自由に生きる事」ですので薄情に見える事もあるかもしれません。そんな主人公が生きる世界をとくと御覧あれ! ★★  この話の中での【錬金術】は学問というよりも何かを「創作」する事の出来る手段の意味合いが大きいです。ですので本来の錬金術の学術的な論理は出てきません。この世界での独自の力が【錬金術】となります。

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)

いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。 --------- 掲載は不定期になります。 追記 「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。 お知らせ カクヨム様でも掲載中です。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです

ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。 女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。 前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る! そんな変わった公爵令嬢の物語。 アルファポリスOnly 2019/4/21 完結しました。 沢山のお気に入り、本当に感謝します。 7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。 2021年9月。 ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。 10月、再び完結に戻します。 御声援御愛読ありがとうございました。

生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~

こひな
恋愛
市川みのり 31歳。 成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。 彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。 貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。 ※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む

家具屋ふふみに
ファンタジー
 この世界には魔法が存在する。  そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。  その属性は主に6つ。  火・水・風・土・雷・そして……無。    クーリアは伯爵令嬢として生まれた。  貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。  そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。    無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。  その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。      だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。    そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。    これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。  そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。 設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m ※←このマークがある話は大体一人称。

処理中です...