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「それで、私はこれからどうなるんでしょう?」
自分でもどこからのそれで、なのか分からないけれど、とりあえずそう聞いてみた。
目の前の二人は、勝手に納得し、勝手に会話を終わらせて、何故か今はのんびり食後のお茶中だ。
「キーラ嬢は魔法、使えるの?」
質問を質問で返された。
「自分には治癒魔法を使えますけど、他は分かりません」
「自分には?」
ケビンは不思議そうな顔をする。
あれ、私またおかしなこと言ったかな?
「自分が怪我をしたら、自分で治せます」
「それは、他人には使えない、ってこと?」
「使ったことがないので、ちょっと分からない?」
と首を傾げる。
「使ったことがない、ね。了解……治癒魔法が使えるってことは、魔力は感じること出来るよね?」
「魔法が動くのと、魔力が抜かれたのと、魔力をもらったのは分かります」
「へぇ、流石オンリンナ家の血筋だね」
と、ケビンは驚いたような表情になる。
「まぁ、それだけ分かれば十分。自分の魔力が他人の魔力かまで分かれば上等だけど、魔法が使えないならまだ難しいか」
「ヒュフラー様、私って魔法使えるのでしょうか?」
アーサーはすぐ使えるって言っていたけど、なんだか使える気がしない。
「ケビンでいいよ。キーラ嬢が魔法を使えるかは、使ってみれば分かる」
「え」
「魔力があることが感じられれば後は形にするだけだから、簡単だろ?」
簡単、って簡単に言いますけど、どう言うことでしょう。
私には、ゲームのエフェクトたっぷりの魔法のイメージしかないんですよ。
「んー、そうだな」
ケビンはそう言って、自分が飲んでいたティーカップの上に手をかざす。
ふわんと空気が動いて、ティーカップの中身が凍りつく。
「おお! 凍った!」
思わず身を乗り出して覗き込むと、ケビンが珍しくないでしょと笑った。
いや十分珍しい。呪文がいらないのは薄々分かっていたけど、こんな簡単なの。
「はい、やってみて」
と、私の前に新しいティーカップを置く。
やってみてと言われても、どうやって?
「ケビンは教え方が下手だ。そんなに簡単に使えるようになったら、この世界の人間みんなお前みたいになっている」
困惑していると、カークがようやく話に入ってきた。
「魔力の流れが分かるなら、もう使っているようなものだ」
「キーラ、手をカップの上に」
言われるままカップの上に手をかざす。
「目を閉じて、自分の中の魔力を感じるんだ」
カークがそう言って私を後ろから抱き締め、私の手の上に自分の手を重ねる。
ケビンがうわって声を上げたのが聞こえたけど……私はもう目を閉じていたので無視することにした。
「手の方に魔力が動くのを感じるか?」
「うーん? なんとなく?」
「じゃあ、そのままお湯を沸騰させるイメージで」
「え? 凍らせないの?」
「私の魔力はどちらかと言うと火に近い。凍らせるより温める方が得意だ」
私の魔力? 私って、私? カーク?
火に近い? 火属性ってこと?
頭の中に疑問がいっぱいで、集中が途切れる。
「……今のキーラの中にある魔力は殆どが私から移動したものだから」
だから何! どうしてみんな中途半端なところで説明止めるの。
それに今私質問してない!
私は目を開けてカークを振り返る。
「カーク、私今何も聞いてないけど」
「……集中集中」
あ、ごまかした。
「ほら、もう一回、沸騰してるイメージだ」
「うー」
仕方がない、真面目にさっさと終わらせてしまおう。
出来るかできないかは分からないけど。
もう一度目を閉じて、手のひらの方へ流れる力を感じる。
重ねられたカークの手からも、同じような魔力を感じたと思ったら、急にその流れが強くなった。
「んっ!」
全身から引っ張られるように流れた力の気持ち悪さに声を上げ身を縮めると、ケビンが叫んた。
「カーク! 魔力を止めろ!」
ボンッ!!って音がして、その音に目を開ける。
「力込めすぎだ」
呆れたようなケビンの声に、カップを見ると、カップの中身が見事に蒸発していた。
自分でもどこからのそれで、なのか分からないけれど、とりあえずそう聞いてみた。
目の前の二人は、勝手に納得し、勝手に会話を終わらせて、何故か今はのんびり食後のお茶中だ。
「キーラ嬢は魔法、使えるの?」
質問を質問で返された。
「自分には治癒魔法を使えますけど、他は分かりません」
「自分には?」
ケビンは不思議そうな顔をする。
あれ、私またおかしなこと言ったかな?
「自分が怪我をしたら、自分で治せます」
「それは、他人には使えない、ってこと?」
「使ったことがないので、ちょっと分からない?」
と首を傾げる。
「使ったことがない、ね。了解……治癒魔法が使えるってことは、魔力は感じること出来るよね?」
「魔法が動くのと、魔力が抜かれたのと、魔力をもらったのは分かります」
「へぇ、流石オンリンナ家の血筋だね」
と、ケビンは驚いたような表情になる。
「まぁ、それだけ分かれば十分。自分の魔力が他人の魔力かまで分かれば上等だけど、魔法が使えないならまだ難しいか」
「ヒュフラー様、私って魔法使えるのでしょうか?」
アーサーはすぐ使えるって言っていたけど、なんだか使える気がしない。
「ケビンでいいよ。キーラ嬢が魔法を使えるかは、使ってみれば分かる」
「え」
「魔力があることが感じられれば後は形にするだけだから、簡単だろ?」
簡単、って簡単に言いますけど、どう言うことでしょう。
私には、ゲームのエフェクトたっぷりの魔法のイメージしかないんですよ。
「んー、そうだな」
ケビンはそう言って、自分が飲んでいたティーカップの上に手をかざす。
ふわんと空気が動いて、ティーカップの中身が凍りつく。
「おお! 凍った!」
思わず身を乗り出して覗き込むと、ケビンが珍しくないでしょと笑った。
いや十分珍しい。呪文がいらないのは薄々分かっていたけど、こんな簡単なの。
「はい、やってみて」
と、私の前に新しいティーカップを置く。
やってみてと言われても、どうやって?
「ケビンは教え方が下手だ。そんなに簡単に使えるようになったら、この世界の人間みんなお前みたいになっている」
困惑していると、カークがようやく話に入ってきた。
「魔力の流れが分かるなら、もう使っているようなものだ」
「キーラ、手をカップの上に」
言われるままカップの上に手をかざす。
「目を閉じて、自分の中の魔力を感じるんだ」
カークがそう言って私を後ろから抱き締め、私の手の上に自分の手を重ねる。
ケビンがうわって声を上げたのが聞こえたけど……私はもう目を閉じていたので無視することにした。
「手の方に魔力が動くのを感じるか?」
「うーん? なんとなく?」
「じゃあ、そのままお湯を沸騰させるイメージで」
「え? 凍らせないの?」
「私の魔力はどちらかと言うと火に近い。凍らせるより温める方が得意だ」
私の魔力? 私って、私? カーク?
火に近い? 火属性ってこと?
頭の中に疑問がいっぱいで、集中が途切れる。
「……今のキーラの中にある魔力は殆どが私から移動したものだから」
だから何! どうしてみんな中途半端なところで説明止めるの。
それに今私質問してない!
私は目を開けてカークを振り返る。
「カーク、私今何も聞いてないけど」
「……集中集中」
あ、ごまかした。
「ほら、もう一回、沸騰してるイメージだ」
「うー」
仕方がない、真面目にさっさと終わらせてしまおう。
出来るかできないかは分からないけど。
もう一度目を閉じて、手のひらの方へ流れる力を感じる。
重ねられたカークの手からも、同じような魔力を感じたと思ったら、急にその流れが強くなった。
「んっ!」
全身から引っ張られるように流れた力の気持ち悪さに声を上げ身を縮めると、ケビンが叫んた。
「カーク! 魔力を止めろ!」
ボンッ!!って音がして、その音に目を開ける。
「力込めすぎだ」
呆れたようなケビンの声に、カップを見ると、カップの中身が見事に蒸発していた。
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