このやってられない世界で

みなせ

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「キーラのためって、どう言うこと?」

 かっとなって、せっかく寝返り頑張ったのに、元に戻ってカークの方を見た。
 ゴロンゴロンして恰好悪いけど、仕方がない。
 ついでに邪魔な掛け布団も寄せてみる。
 上手くいったら、この男に一発蹴りか拳を入れてやろう!

「調べてたなら、何で半年もほおっておいたの!? キーラは一人であんなに頑張ってたのに!」

 背を向けていると思ったのに、思いっきり目が合ってしまった。
 それで、急に冷静になった。
 この言い方だとまるで……
 カークは私を困ったような顔で見つめ、こてんと首を傾げた。
 いや、似合うよ。似合うけど、違うから!

「えーっと」
「……大丈夫だ、もう知っている」
「は?」

 ちょっとだけ間を取って、カークが言った。
 今、知ってる、って言ったよね?

「何を……」
「君が異世界転生者だと言うことはもう知っているから、隠さなくていい」
「い、いつから」
「いつ、と言えば、君については、キーラが君になった瞬間から、だな」

 何でもないことのように言うけど。

「何で……」
「知っているか、か?」

 うんうんと頷く。

「どう話せばいいだろうね?」

 カークはそう少し考えるような仕草をした。

「まず、キーラの生家・オンリンナ家は異世界転生者の血統で、オンリンナ家の直系は、ほぼ全員異世界転生者だ。だから、そのオンリンナ家の直系であるキーラも、当然異世界転生者で、いずれ転生者として覚醒することは知っていた。生まれてすぐ目覚める者もいれば死ぬ間際に思い出す者もいるから、キーラがいつ目覚めるかは分からなかった。ここまではいいね?」

 頷く。

「次に、何故私が君が転生者として目覚めたことを知ったかだけど、王家の直系には、人の魔力や魂の色が分かる力がある。その力は契約した家に関して、何か特別な変化があれば分かるようになっている。オンリンナ家と王家は、フォルナトル王国建国時からの契約でそれが行われている」

 何、そのチート。
 すべての異世界転生モノの話の根底を覆す能力じゃない。

「王家の資料でも、誰も転生者の覚醒に立ち会ったと言う記録はなく、父からは、異世界転生者が目覚める時は何かが爆発するような衝撃が来ると聞いていた。君のことを知ってからずっと気にはしていた。いつ目覚めるのか、とずっと待っていた。まさかデリックに殴られて目覚めるとは思わなかったけどね」

 と、肩をすくめた。

「もともとのキーラの色は、深い森に差す月の光みたいだったよ。それがデリックに殴られた瞬間、空間を染め上げる強い光が、まるで花が咲くようにはじけて君が現れた。他の人に見せられないのがもったいないくらい、幻想的で、綺麗で、そしてすごい衝撃だった」
「それは、私がキーラを消したからかも知れないじゃないですか」
「いや、それはない。確かに、元のキーラとは全然違うけれど、根本は変わっていない。なんて言うか、元のキーラが新しい何かを手に入れた、目覚めたという言葉がぴったりな状態に見える」

 全然違うって言われた。それは自分でもそう思うけど。
 カークの目に、私はどんな風に見えているんだろう?

「最後に、どうしてキーラを助けなかったか、だけど。いくつか理由がある。一番は、カーラとの約束だ」
「お母様? 殿下は、お母様とはいつから会っていたんですか」
「五歳くらいからだな。カーラが目覚めた時は残念ながら私はまだ乳飲み子だったからね、立太子した後父から紹介された。その時だよ、キーラを初めて見たのは。カーラに遠目であれが私の娘ですと言われたけれど、紹介はされなかった」

 お母様、グッジョブです。

「カーラには何度も紹介してほしいと言ったんだけどね、『いずれ、キーラも変わる。オンリンナ家の宿命だから、今のキーラを好きになったら後悔するかもしれない。私はあの人がもういなくなったからいいけれど、もし今あの人に会って、あの人に否定されたら、私はきっと生きていけない。だからもし、キーラを本当に欲しいと思うなら、目覚めた後にしなさい』ってね」

 前言撤回、お母様、そこは完全否定でお願いしたかった。
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