42 / 336
42
しおりを挟む
何がどうして、こうなった。
目を覚ますと、そりゃあ豪華な部屋だった。
よく漫画とかアニメとかで描かれるザ・貴族の部屋そのもの。
ベッドはキングサイズに、天蓋付きで、その下につけられたカーテンみたいなのは、女子なら一度は憧れるレースじゃなく、どっかの舞台の緞帳みたいに立派なものだ。
マットレスも極上品なのだろう。どのくらい眠っていたのか知らないけど、全身に力が入らない状態でもふんわりと受け止められているのが分かる。沈むところは沈み、支えられるべきところは支えられている。長く眠っていると体が痛くなるはずなのにそれもない。
掛け布団も柔らかくって、暖かいのにちっとも重さを感じない。
部屋もかなり広く、目が動く範囲しか見えないけれど、多分ワンルームの部屋なら十部屋は取れそうなくらいだ。
壁も、天井も、色彩豊かな上品な壁紙で覆われているし、そこかしこに置かれた調度品も、教科書や博物館でしかお目にかかることがないような豪華なモノだ。
と、こうしてじっくり部屋を見聞しているのは、体が全然動かないので誰かを呼ぶこともできないからだ。
ピーちゃんの姿もない。
あの時みたいに、心で何度か呼んでみたけど、全く音沙汰なくむなしくなったので諦めた。
悲しいかな、誰か人が来てくれるのをただ待つしかない。
どれくらいそうしていたろう?
ようやく壁のどこかから扉の開くような音がして、誰かが入ってくる気配がした。パタパタと羽音も聞こえ、ピーちゃんが枕元へ飛んできた。
「ビィーッ!!」
私と目があった瞬間、ピーちゃんは叫び私の顔に頭をすりつけてきた。
「鳥様、お嬢様のお休みを邪魔してはいけませんよ……あら、まぁ」
ほんわりした声が聞こえてすぐ、赤茶色のワンピース姿の女性が私を覗き込んだ。
「お目覚めでしたか? すぐに坊ちゃまを呼んでまいりますね」
そして、そう嬉しそうに微笑んで、私が何か言う間もなくまた視界から消えてしまった。
「ピーチャン、シンパイシタ、モウ、オキナイ、オモッタ」
扉のしまる音がしてすぐ、ピーちゃんがそう言った。
頭をかいてあげたいが、何度も言うが、全く体が動かない。
「ピーちゃん、ごめんね。それに、助けに来てくれてありがとう」
「ピーチャン、タスケタ、デモ、ケッカイ、アツクテ、オソクナッタ。」
ぐりぐりと頭を肩に押しつけながら、ピーちゃんが言う。
「結界……」
「ソウ、オマエ、オレ、ヨンダ。ダカラ、ヤブレタ」
わお、何そのファンタジー。
「本当に、ピーちゃんのおかげで助かったんだね。ピーちゃんを飼ってて良かった」
「ゴホウビ、ニク、タノシミ」
「はいはい」
ピーちゃんが胸の上に飛び上がって、ダンスをしだした。
嬉しそうに小さな体がぴょんぴょん跳ねるのを見ていると、また扉の開く音がした。
「目が覚めたそうだな」
この声はカークだなとか思っていると、綺麗な顔が覗き込んできた。その隣にはさっきの女性もいる。
「体調はどうだ?」
「体が動かない以外は、特に悪くありません」
聞かれた事にとりあえず答える。
「そうか。彼女はアリーダ。キーラ付きの侍女だ。私がいない時、何か必要なものがあったら彼女に言うように」
「お嬢様のお世話をさせていただきます、アリーダと申します。お坊ちゃまに言いにくいことでもなんでも、是非言ってくださいね。」
ニコニコとアリーダさんが頭を下げた。結構なお年だと思うんだけど、すごくかわいらしい人だ。
「キーラ・オンリンナです。よろしくお願いします」
動けないので、そう言って笑顔を作る。まぁまぁ、おかわいらしいとアリーダさんが、カークを見た。カークは咳払いした。
「話をしたいが、その前に……何か、食べるか?」
「は、い?」
「アリーダ、何か食べるものを用意してくれ」
「はいはい、すぐにご用意いたしますね。お嬢様は何か召し上がりたいものはございますか?」
「いいから、消化のよさそうなものを持ってこい」
せっかくアリーダさんが聞いてくれたのに、ムッとしたカークに遮られた。
「うふふ。分かりましたよ。お坊ちゃまにも何か軽いものをお持ちしますね」
楽しそうにアリーダさんは言って、部屋を出て行った。
目を覚ますと、そりゃあ豪華な部屋だった。
よく漫画とかアニメとかで描かれるザ・貴族の部屋そのもの。
ベッドはキングサイズに、天蓋付きで、その下につけられたカーテンみたいなのは、女子なら一度は憧れるレースじゃなく、どっかの舞台の緞帳みたいに立派なものだ。
マットレスも極上品なのだろう。どのくらい眠っていたのか知らないけど、全身に力が入らない状態でもふんわりと受け止められているのが分かる。沈むところは沈み、支えられるべきところは支えられている。長く眠っていると体が痛くなるはずなのにそれもない。
掛け布団も柔らかくって、暖かいのにちっとも重さを感じない。
部屋もかなり広く、目が動く範囲しか見えないけれど、多分ワンルームの部屋なら十部屋は取れそうなくらいだ。
壁も、天井も、色彩豊かな上品な壁紙で覆われているし、そこかしこに置かれた調度品も、教科書や博物館でしかお目にかかることがないような豪華なモノだ。
と、こうしてじっくり部屋を見聞しているのは、体が全然動かないので誰かを呼ぶこともできないからだ。
ピーちゃんの姿もない。
あの時みたいに、心で何度か呼んでみたけど、全く音沙汰なくむなしくなったので諦めた。
悲しいかな、誰か人が来てくれるのをただ待つしかない。
どれくらいそうしていたろう?
ようやく壁のどこかから扉の開くような音がして、誰かが入ってくる気配がした。パタパタと羽音も聞こえ、ピーちゃんが枕元へ飛んできた。
「ビィーッ!!」
私と目があった瞬間、ピーちゃんは叫び私の顔に頭をすりつけてきた。
「鳥様、お嬢様のお休みを邪魔してはいけませんよ……あら、まぁ」
ほんわりした声が聞こえてすぐ、赤茶色のワンピース姿の女性が私を覗き込んだ。
「お目覚めでしたか? すぐに坊ちゃまを呼んでまいりますね」
そして、そう嬉しそうに微笑んで、私が何か言う間もなくまた視界から消えてしまった。
「ピーチャン、シンパイシタ、モウ、オキナイ、オモッタ」
扉のしまる音がしてすぐ、ピーちゃんがそう言った。
頭をかいてあげたいが、何度も言うが、全く体が動かない。
「ピーちゃん、ごめんね。それに、助けに来てくれてありがとう」
「ピーチャン、タスケタ、デモ、ケッカイ、アツクテ、オソクナッタ。」
ぐりぐりと頭を肩に押しつけながら、ピーちゃんが言う。
「結界……」
「ソウ、オマエ、オレ、ヨンダ。ダカラ、ヤブレタ」
わお、何そのファンタジー。
「本当に、ピーちゃんのおかげで助かったんだね。ピーちゃんを飼ってて良かった」
「ゴホウビ、ニク、タノシミ」
「はいはい」
ピーちゃんが胸の上に飛び上がって、ダンスをしだした。
嬉しそうに小さな体がぴょんぴょん跳ねるのを見ていると、また扉の開く音がした。
「目が覚めたそうだな」
この声はカークだなとか思っていると、綺麗な顔が覗き込んできた。その隣にはさっきの女性もいる。
「体調はどうだ?」
「体が動かない以外は、特に悪くありません」
聞かれた事にとりあえず答える。
「そうか。彼女はアリーダ。キーラ付きの侍女だ。私がいない時、何か必要なものがあったら彼女に言うように」
「お嬢様のお世話をさせていただきます、アリーダと申します。お坊ちゃまに言いにくいことでもなんでも、是非言ってくださいね。」
ニコニコとアリーダさんが頭を下げた。結構なお年だと思うんだけど、すごくかわいらしい人だ。
「キーラ・オンリンナです。よろしくお願いします」
動けないので、そう言って笑顔を作る。まぁまぁ、おかわいらしいとアリーダさんが、カークを見た。カークは咳払いした。
「話をしたいが、その前に……何か、食べるか?」
「は、い?」
「アリーダ、何か食べるものを用意してくれ」
「はいはい、すぐにご用意いたしますね。お嬢様は何か召し上がりたいものはございますか?」
「いいから、消化のよさそうなものを持ってこい」
せっかくアリーダさんが聞いてくれたのに、ムッとしたカークに遮られた。
「うふふ。分かりましたよ。お坊ちゃまにも何か軽いものをお持ちしますね」
楽しそうにアリーダさんは言って、部屋を出て行った。
23
お気に入りに追加
324
あなたにおすすめの小説

どうやら悪役令嬢のようですが、興味が無いので錬金術師を目指します(旧:公爵令嬢ですが錬金術師を兼業します)
水神瑠架
ファンタジー
――悪役令嬢だったようですが私は今、自由に楽しく生きています! ――
乙女ゲームに酷似した世界に転生? けど私、このゲームの本筋よりも寄り道のミニゲームにはまっていたんですけど? 基本的に攻略者達の顔もうろ覚えなんですけど?! けど転生してしまったら仕方無いですよね。攻略者を助けるなんて面倒い事するような性格でも無いし好きに生きてもいいですよね? 運が良いのか悪いのか好きな事出来そうな環境に産まれたようですしヒロイン役でも無いようですので。という事で私、顔もうろ覚えのキャラの救済よりも好きな事をして生きて行きます! ……極めろ【錬金術師】! 目指せ【錬金術マスター】!
★★
乙女ゲームの本筋の恋愛じゃない所にはまっていた女性の前世が蘇った公爵令嬢が自分がゲームの中での悪役令嬢だという事も知らず大好きな【錬金術】を極めるため邁進します。流石に途中で気づきますし、相手役も出てきますが、しばらく出てこないと思います。好きに生きた結果攻略者達の悲惨なフラグを折ったりするかも? 基本的に主人公は「攻略者の救済<自分が自由に生きる事」ですので薄情に見える事もあるかもしれません。そんな主人公が生きる世界をとくと御覧あれ!
★★
この話の中での【錬金術】は学問というよりも何かを「創作」する事の出来る手段の意味合いが大きいです。ですので本来の錬金術の学術的な論理は出てきません。この世界での独自の力が【錬金術】となります。

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)
いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。
---------
掲載は不定期になります。
追記
「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。
お知らせ
カクヨム様でも掲載中です。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜
青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ
孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。
そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。
これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。
小説家になろう様からの転載です!

【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです
ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。
女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。
前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る!
そんな変わった公爵令嬢の物語。
アルファポリスOnly
2019/4/21 完結しました。
沢山のお気に入り、本当に感謝します。
7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。
2021年9月。
ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。
10月、再び完結に戻します。
御声援御愛読ありがとうございました。

生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~
こひな
恋愛
市川みのり 31歳。
成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。
彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。
貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。
※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

転生貴族のスローライフ
マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた
しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった
これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である
*基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~
Ss侍
ファンタジー
"私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。
動けない、何もできない、そもそも身体がない。
自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。
ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。
それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる