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「ところで、リーナはどうしているの?」
アーサーに釘を刺されたので、大人しくするためにも敵の情報を集めることにした。そうなると一番気にしなければならないのはヒロインでもある、義妹だろう。
「リーナお嬢様は、おかわりありません」
「デリックが家に来たことを不審に思ったりしていなかった?」
「特に気にした様子はありませんでしたよ。自分に会いに来た、くらいにしか思っていないのか、理由すら聞きませんでした」
「え? 本当に?」
思わず聞き返す。私もよく知らないけど、そんな簡単に貴族ってお宅訪問しないわよね。前もってお手紙書いて……とかなくていいの?
「デ、デリックはなんて?」
「近くに来たから寄ったとおっしゃいましたら、そう、と」
「そ、そうなんだ」
リーナってヒロインだよね。ヒロインって、そんな感じでいいの?
「リーナって、天然なのかしら」
「何かおっしゃいましたか?」
「ううん。何でもない。リーナって前からあんな感じだった?」
「そうですね。こちらにいらした当初からそんな感じでしたよ。いつも微笑んでいらして、あまり感情的になることはないですね」
お母様が亡くなって涙も乾かぬうちに、父たちはこの家にやってきた。父が生きていたことさえ知らなかったキーラに、義母と義妹を当たり前のように紹介し、最初の挨拶もそこそこに屋根裏に追いやった。
顔を合わせるたびに怒声を浴びせたのは父、家の中をどんどん変えて、使用人を使って嫌がらせをするのは義母だった。
家でのリーナはにこにことしているだけで、直接キーラに接触することも、何かすることはなかった。
どちらかと言うと、父も義母も、キーラとリーナを接触させないようにしていたように感じる。
リーナの通学にわざわざ馬車を用意したのも、別棟にある科へ転入させたのも、キーラとリーナを引き離すためだったのかもしれない。
「そう言えば私、あまりリーナと話したことが無いかも」
よく顔を合わせるようになったのは、学園でキーラが悪女だという噂が蔓延してからだ。今にも泣きそうな目をしながら、キーラの前に現れては、仲良くしたいだの、誤解を解きたいだの言っていた。
「誤解、か。……アーサーは、リーナのことをどう思う?」
「そうですね、旦那様と奥様のお人形でしょうか」
「お人形?」
「リーナお嬢様は魔力がありません」
アーサーがよく分からないことを言い始めた。
「魔力は、その量が多いか少ないかはありますが、殆どの人が持っています。持っていない人はいない、といってもいいでしょう」
「いないって、リーナは、ないんでしょう?」
「そうです。旦那様と奥様はそれを隠そうとしています」
「なんで? 別に魔力が無くても大丈夫じゃないの?」
「普通に生活するなら、大丈夫です。魔力を付加する魔石もありますし、ですが、オンリンナ家を継ぐには魔力が強くなければなりません」
オンリンナ家を継ぐ?
ってことは、父は、このオンリンナ家をリーナに継がせるつもり、と言うこと?
「私、追い出されるの?」
「……」
アーサーが無言になる。
そうなんだ。私、追い出されるのか。え、でも、じゃあ。
「アーサー、聖女って、魔法使えるの?」
アーサーに釘を刺されたので、大人しくするためにも敵の情報を集めることにした。そうなると一番気にしなければならないのはヒロインでもある、義妹だろう。
「リーナお嬢様は、おかわりありません」
「デリックが家に来たことを不審に思ったりしていなかった?」
「特に気にした様子はありませんでしたよ。自分に会いに来た、くらいにしか思っていないのか、理由すら聞きませんでした」
「え? 本当に?」
思わず聞き返す。私もよく知らないけど、そんな簡単に貴族ってお宅訪問しないわよね。前もってお手紙書いて……とかなくていいの?
「デ、デリックはなんて?」
「近くに来たから寄ったとおっしゃいましたら、そう、と」
「そ、そうなんだ」
リーナってヒロインだよね。ヒロインって、そんな感じでいいの?
「リーナって、天然なのかしら」
「何かおっしゃいましたか?」
「ううん。何でもない。リーナって前からあんな感じだった?」
「そうですね。こちらにいらした当初からそんな感じでしたよ。いつも微笑んでいらして、あまり感情的になることはないですね」
お母様が亡くなって涙も乾かぬうちに、父たちはこの家にやってきた。父が生きていたことさえ知らなかったキーラに、義母と義妹を当たり前のように紹介し、最初の挨拶もそこそこに屋根裏に追いやった。
顔を合わせるたびに怒声を浴びせたのは父、家の中をどんどん変えて、使用人を使って嫌がらせをするのは義母だった。
家でのリーナはにこにことしているだけで、直接キーラに接触することも、何かすることはなかった。
どちらかと言うと、父も義母も、キーラとリーナを接触させないようにしていたように感じる。
リーナの通学にわざわざ馬車を用意したのも、別棟にある科へ転入させたのも、キーラとリーナを引き離すためだったのかもしれない。
「そう言えば私、あまりリーナと話したことが無いかも」
よく顔を合わせるようになったのは、学園でキーラが悪女だという噂が蔓延してからだ。今にも泣きそうな目をしながら、キーラの前に現れては、仲良くしたいだの、誤解を解きたいだの言っていた。
「誤解、か。……アーサーは、リーナのことをどう思う?」
「そうですね、旦那様と奥様のお人形でしょうか」
「お人形?」
「リーナお嬢様は魔力がありません」
アーサーがよく分からないことを言い始めた。
「魔力は、その量が多いか少ないかはありますが、殆どの人が持っています。持っていない人はいない、といってもいいでしょう」
「いないって、リーナは、ないんでしょう?」
「そうです。旦那様と奥様はそれを隠そうとしています」
「なんで? 別に魔力が無くても大丈夫じゃないの?」
「普通に生活するなら、大丈夫です。魔力を付加する魔石もありますし、ですが、オンリンナ家を継ぐには魔力が強くなければなりません」
オンリンナ家を継ぐ?
ってことは、父は、このオンリンナ家をリーナに継がせるつもり、と言うこと?
「私、追い出されるの?」
「……」
アーサーが無言になる。
そうなんだ。私、追い出されるのか。え、でも、じゃあ。
「アーサー、聖女って、魔法使えるの?」
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