婚約解消は君の方から

みなせ

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「いえ、そんな……」

 否定したが、確かに自分はミアと婚約解消するつもりはなかった。
 だが、愛しているのはカレンで……。

「それでな、ステイリー侯爵ともう一度話し合った。そして、こう結論をだした。もしお前がそう言う考えならこの婚約は不幸にしかならないだろう、と」

 ステイリー侯爵ならそう言うだろう。
 浮気も誤解を招くような行動もしない、妻一筋の男だ。

「ミア嬢は侯爵家の後継ぎだ。彼女を支える者が他の女にうつつを抜かすような者では駄目なのだ」
「……ですが、ミアだって、私以外の男を好きだと……それは」

 ふと、ミアの言葉を思い出し、口に乗せる。
 父は大きくため息をついた。

「その男は私の紹介だ」
「は?」

 今なんと?
 耳がおかしくなったのかと思ったが、真面目な顔で父は続ける。

「ミア嬢が、自分もお前のような恋をしてみたいと泣いてな、まぁ、確かにお前が他の女を選ぶのに、ミア嬢に相手がいないのは不公平だ。仕方がないから調べ上げてミア嬢を好きだと言う男を紹介した」

 言っていることの意味が分からない。

「……何故、そんなことを」
「お前が本気なら、ミア嬢に新しい婚約者を探さなければならないだろう?」
「ですが、まだミアは私の婚約者です!」
「お前が先に不実を働いたのだ。今のままではミア嬢にキズが付いてしまう。お前の不実のせいで、ミア嬢が不幸になってはいけない。ステイリー侯爵家は我が王家にとって欠かせない家なのだ」

 困ったように言われても、全く意味が分からない。

「お前は私にとって大事な息子だ。王家の後継ぎにはできないが、出来るだけ幸せになってほしいと思っていた。だからこそミア嬢との婚約をとりつけた。だが、気持ちはどうしようもない」

 父はそう言って、首を振った。

「だからお前たちの気持ちをそのまま利用することにした。お前たちが少し悪者になるが、もとはと言えばお前が悪い」
「何を」
「お前の不実にミア嬢が悲しみ、それ慰めた男がお前からミア嬢をとり返した、と言う筋書きだ。大きく見ればお互いの幸せのために婚約を解消した、ともとれるだろう」
「そんなこと認められません!」
「すでに下地は出来上がった。お前はお前の愛する者の手綱をしっかり握っておくように。カレン嬢は男爵家の跡取りだ。このまま彼女の家に婿入りすればいい。お前にも男爵の爵位を用意しよう」

 もう決定事項だと言われ、私は全身から力がぬけた。

「ミア嬢は本当に良くできた令嬢だ。お前にはもったいなかったな」



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