5 / 25
05
しおりを挟む「いえ、そんな……」
否定したが、確かに自分はミアと婚約解消するつもりはなかった。
だが、愛しているのはカレンで……。
「それでな、ステイリー侯爵ともう一度話し合った。そして、こう結論をだした。もしお前がそう言う考えならこの婚約は不幸にしかならないだろう、と」
ステイリー侯爵ならそう言うだろう。
浮気も誤解を招くような行動もしない、妻一筋の男だ。
「ミア嬢は侯爵家の後継ぎだ。彼女を支える者が他の女にうつつを抜かすような者では駄目なのだ」
「……ですが、ミアだって、私以外の男を好きだと……それは」
ふと、ミアの言葉を思い出し、口に乗せる。
父は大きくため息をついた。
「その男は私の紹介だ」
「は?」
今なんと?
耳がおかしくなったのかと思ったが、真面目な顔で父は続ける。
「ミア嬢が、自分もお前のような恋をしてみたいと泣いてな、まぁ、確かにお前が他の女を選ぶのに、ミア嬢に相手がいないのは不公平だ。仕方がないから調べ上げてミア嬢を好きだと言う男を紹介した」
言っていることの意味が分からない。
「……何故、そんなことを」
「お前が本気なら、ミア嬢に新しい婚約者を探さなければならないだろう?」
「ですが、まだミアは私の婚約者です!」
「お前が先に不実を働いたのだ。今のままではミア嬢にキズが付いてしまう。お前の不実のせいで、ミア嬢が不幸になってはいけない。ステイリー侯爵家は我が王家にとって欠かせない家なのだ」
困ったように言われても、全く意味が分からない。
「お前は私にとって大事な息子だ。王家の後継ぎにはできないが、出来るだけ幸せになってほしいと思っていた。だからこそミア嬢との婚約をとりつけた。だが、気持ちはどうしようもない」
父はそう言って、首を振った。
「だからお前たちの気持ちをそのまま利用することにした。お前たちが少し悪者になるが、もとはと言えばお前が悪い」
「何を」
「お前の不実にミア嬢が悲しみ、それ慰めた男がお前からミア嬢をとり返した、と言う筋書きだ。大きく見ればお互いの幸せのために婚約を解消した、ともとれるだろう」
「そんなこと認められません!」
「すでに下地は出来上がった。お前はお前の愛する者の手綱をしっかり握っておくように。カレン嬢は男爵家の跡取りだ。このまま彼女の家に婿入りすればいい。お前にも男爵の爵位を用意しよう」
もう決定事項だと言われ、私は全身から力がぬけた。
「ミア嬢は本当に良くできた令嬢だ。お前にはもったいなかったな」
42
お気に入りに追加
536
あなたにおすすめの小説
浮気をした王太子が、真実を見つけた後の十日間
田尾風香
恋愛
婚姻式の当日に出会った侍女を、俺は側に置いていた。浮気と言われても仕方がない。ズレてしまった何かを、どう戻していいかが分からない。声には出せず「助けてくれ」と願う日々。
そんな中、風邪を引いたことがきっかけで、俺は自分が掴むべき手を見つけた。その掴むべき手……王太子妃であり妻であるマルティエナに、謝罪をした俺に許す条件として突きつけられたのは「十日間、マルティエナの好きなものを贈ること」だった。
王子には付き合い切れない!~婚約破棄から始まるミステリー~
あみにあ
恋愛
突然王子より召集がかけられ、やってきた大広間。
貴族たちが集まる中央に、私の婚約者ディエゴ王子がいた。
彼の隣には質素なワンピース姿の令嬢。
何が始まるのかと腕を組み待ち構えてると、
王子はなんと私との婚約破棄を宣言した。
理由は隣にいる名も知らぬ令嬢を虐めた罪。
悔しい惨め、そんな気持ちよりも先にため息が漏れる。
このバカ王子、また騙されたのかと……。
手のかかる王子の婚約者になった、出来る令嬢のお話です。
※短編小説 6話で完結します。
(1/1 21時 1/2 0時 7時 12時 18時 21時 完結)
婚約破棄でみんな幸せ!~嫌われ令嬢の円満婚約解消術~
春野こもも
恋愛
わたくしの名前はエルザ=フォーゲル、16才でございます。
6才の時に初めて顔をあわせた婚約者のレオンハルト殿下に「こんな醜女と結婚するなんて嫌だ! 僕は大きくなったら好きな人と結婚したい!」と言われてしまいました。そんな殿下に憤慨する家族と使用人。
14歳の春、学園に転入してきた男爵令嬢と2人で、人目もはばからず仲良く歩くレオンハルト殿下。再び憤慨するわたくしの愛する家族や使用人の心の安寧のために、エルザは円満な婚約解消を目指します。そのために作成したのは「婚約破棄承諾書」。殿下と男爵令嬢、お二人に愛を育んでいただくためにも、後はレオンハルト殿下の署名さえいただければみんな幸せ婚約破棄が成立します!
前編・後編の全2話です。残酷描写は保険です。
【小説家になろうデイリーランキング1位いただきました――2019/6/17】
勝手にしなさいよ
棗
恋愛
どうせ将来、婚約破棄されると分かりきってる相手と婚約するなんて真っ平ごめんです!でも、相手は王族なので公爵家から破棄は出来ないのです。なら、徹底的に避けるのみ。と思っていた悪役令嬢予定のヴァイオレットだが……
バッドエンド確定の悪役令嬢に転生してしまったので、好き勝手しようと思います
新野乃花(大舟)
恋愛
日本で普通の生活を送っていた私は、気が付いたらアリシラ・アーレントという名前の悪役令嬢になってしまっていた。過去には気に入らない他の貴族令嬢に嫌がらせをしたり、国中の女性たちから大人気の第一王子を誘惑しにかかったりと、調べれば調べるほど最後には正ヒロインからざまぁされる結末しか見えない今の私。なので私はそういう人たちとの接点を絶って、一人で自由にのびのびスローライフを楽しむことにした……はずだったのに、それでも私の事をざまぁさせるべく色々な負けフラグが勝手に立っていく…。行くも戻るもバッドエンド確定な私は、この世界で生き抜くことができるのでしょうか…?
幼馴染の公爵令嬢が、私の婚約者を狙っていたので、流れに身を任せてみる事にした。
完菜
恋愛
公爵令嬢のアンジェラは、自分の婚約者が大嫌いだった。アンジェラの婚約者は、エール王国の第二王子、アレックス・モーリア・エール。彼は、誰からも愛される美貌の持ち主。何度、アンジェラは、婚約を羨ましがられたかわからない。でもアンジェラ自身は、5歳の時に婚約してから一度も嬉しいなんて思った事はない。アンジェラの唯一の幼馴染、公爵令嬢エリーもアンジェラの婚約者を羨ましがったうちの一人。アンジェラが、何度この婚約が良いものではないと説明しても信じて貰えなかった。アンジェラ、エリー、アレックス、この三人が貴族学園に通い始めると同時に、物語は動き出す。
婚約破棄イベントが壊れた!
秋月一花
恋愛
学園の卒業パーティー。たった一人で姿を現した私、カリスタ。会場内はざわつき、私へと一斉に視線が集まる。
――卒業パーティーで、私は婚約破棄を宣言される。長かった。とっても長かった。ヒロイン、頑張って王子様と一緒に国を持ち上げてね!
……って思ったら、これ私の知っている婚約破棄イベントじゃない!
「カリスタ、どうして先に行ってしまったんだい?」
おかしい、おかしい。絶対におかしい!
国外追放されて平民として生きるつもりだったのに! このままだと私が王妃になってしまう! どうしてそうなった、ヒロイン王太子狙いだったじゃん!
2021/07/04 カクヨム様にも投稿しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる