27 / 63
27.童話? 神話? それとも昔話?
しおりを挟む神は世界の始まりに、たくさんの生命を創造した。
人、動物、植物……世界に必要なありとあらゆるものだ。そして最後に精霊と、彼らをまとめる精霊王を産みだした。
神は、精霊王とその眷属に世界を守るよう申しつけたが、彼らは自分たちのためだけに――――人以外の世界を守ると宣言した。
精霊たちは神と人との間にあり、自らが世界の上位者であると思っていたことから、自分たちと同じ形をした人を嫌悪したのだ。
神は、どんなに命令しても人を守ろうとしない精霊たちからも加護を諦め、人に知恵と少しの力を与えることで、この世界で生きられるようにした。
世界は、精霊と人がお互いに干渉しないと言う約定のもと、ゆっくりと、長い時間をかけて形作られて行った。
しかしお互い干渉しないとはいえ、同じ世界に生きている。
ごくまれにではあるが、人でありながら精霊が見える者が出てきた。
彼らは皆美しい心と魂の輝きで精霊たちを魅了し、中には精霊の加護を与えられるものもいた。
そして、そのおかげで不思議な力を振るうようになった彼らを、人々は精霊の隣人と呼び崇め、彼らを通して精霊に祈りを捧げるようになった。
精霊たちは、その祈りに満足し少しだけ人に近付き、人のために世界を守ることを考えるようになっていた。
しかし人は精霊に対する信仰と同時に、悪意も生みだしていた。
神は、人は適度に悪意を持っているべきとしていたが、土地や僅かな利益を求め争う人々は、その悪意をどんどん大きくしていっていたのだ。
悪意は増えすぎると、その体からあふれだし世界に穢れを生み、穢れはさらなる争いを人々に与え、どんどんと増えて行く。
そしてとうとう実体を持ち、人にとりつき意思を奪い、獣の形となり人を襲い、人々の生活を脅かした。
神は世界を作る時、精霊王と人が力を合わせれば穢れを払えるようにしておいたが、穢れがあっても問題のない精霊王たちは穢れを払おうとはしなかった。
このまま精霊王たちが動かなければ、世界は滅んでしまう。
神は精霊王たちにこの世界を助けさせるために、一計を案じた。
精霊たちが声をかけたり、手を貸したり、加護を与えたりした人の特徴を集め、人の中でも最も輝く魂を持つ存在を作った。
神が新たに創りだした“ヒト”に、精霊たちだけでなく、精霊王たちも興味を持った。そして、その“ヒト”を愛し子と呼びその傍らに在るようになった。
それは神が望んだ、精霊と人の姿だった。
“ヒト”が世界を愛せば、精霊たちは“ヒト”のために、“ヒト”とともに世界を救うと考えたからだ。
神は、時満ちた時そんな精霊たちの前に現れ、もしこの“ヒト”とともに在りたいなら、“ヒト”と共に世界を救うよう求めた。
愛し子は人、動物、植物だけでなく、精霊も世界をも愛し、穢れに満ちた世界を憂い、互いを傷つけあう人を悲しんでいた。
どうにか助けてほしいと愛し子は、精霊王たちに願った。
精霊王たちは、愛し子のため世界を救う事は受け入れた。しかし自らが愛する愛し子がその身を持って戦うことを良しとしなかった。
大事な愛し子が、人のために傷つくことが許せなかったのだ。
仕方なく神は、もう一人新たな"ヒト"を創った。
愛し子となった"ヒト"と、世界に無数いる"人"のちょうど中間くらいの存在だ。精霊ではなく人が好む容姿に、力ある美しい体。人から愛される柔和な性格と強い力を与えた。
誰からも愛され、すべての人を愛す存在。
神はその存在を聖女とした。
それ以来、世界に穢れが溢れると、まずはじめに愛し子が。
そして数年後に聖女が、それぞれ恵まれた場所に誕生する。
時が満ちれば聖女は自らの使命を思い出し、
愛し子に世界の救済を願う。
愛し子はその願いに応え、精霊王に聖女への助力を願う。
精霊王たちは愛し子のために聖女へ力を貸し、聖女と共に闘い、世界の穢れを払うことになった。
10
お気に入りに追加
119
あなたにおすすめの小説
妹と寝たんですか?エセ聖女ですよ?~妃の座を奪われかけた令嬢の反撃~
岡暁舟
恋愛
100年に一度の確率で、令嬢に宿るとされる、聖なる魂。これを授かった令嬢は聖女と認定され、無条件で時の皇帝と婚約することになる。そして、その魂を引き当てたのが、この私、エミリー・バレットである。
本来ならば、私が皇帝と婚約することになるのだが、どういうわけだか、偽物の聖女を名乗る不届き者がいるようだ。その名はジューン・バレット。私の妹である。
別にどうしても皇帝と婚約したかったわけではない。でも、妹に裏切られたと思うと、少し癪だった。そして、既に二人は一夜を過ごしてしまったそう!ジューンの笑顔と言ったら……ああ、憎たらしい!
そんなこんなで、いよいよ私に名誉挽回のチャンスが回ってきた。ここで私が聖女であることを証明すれば……。
初めての異世界転生
藤井 サトル
ファンタジー
その日、幸村 大地(ゆきむら だいち)は女神に選ばれた。
女神とのやり取りの末、大地は女神の手によって異世界へと転生する。その身には女神にいくつもの能力を授かって。
まさにファンタジーの世界へ来た大地は聖女を始めにいろんな人に出会い、出会い金を稼いだり、稼いだ金が直ぐに消えたり、路上で寝たり、チート能力を振るったりと、たぶん楽しく世界を謳歌する。
このお話は【転生者】大地と【聖女】リリア。そこに女神成分をひとつまみが合わさった異世界騒動物語である。
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜
犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。
馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。
大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。
精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。
人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。
次は幸せな結婚が出来るかな?
キルア犬
ファンタジー
バレンド王国の第2王女に転生していた相川絵美は5歳の時に毒を盛られ、死にかけたことで前世を思い出した。
だが、、今度は良い男をついでに魔法の世界だから魔法もと考えたのだが、、、解放の日に鑑定した結果は使い勝手が良くない威力だった。
全能で楽しく公爵家!!
山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。
未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう!
転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。
スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。
※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。
※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。
システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
【完結】ガラクタゴミしか召喚出来ないへっぽこ聖女、ゴミを糧にする大精霊達とのんびりスローライフを送る〜追放した王族なんて知らんぷりです!〜
櫛田こころ
ファンタジー
お前なんか、ガラクタ当然だ。
はじめの頃は……依頼者の望み通りのものを召喚出来た、召喚魔法を得意とする聖女・ミラジェーンは……ついに王族から追放を命じられた。
役立たずの聖女の代わりなど、いくらでもいると。
ミラジェーンの召喚魔法では、いつからか依頼の品どころか本当にガラクタもだが『ゴミ』しか召喚出来なくなってしまった。
なので、大人しく城から立ち去る時に……一匹の精霊と出会った。餌を与えようにも、相変わらずゴミしか召喚出来ずに泣いてしまうと……その精霊は、なんとゴミを『食べて』しまった。
美味しい美味しいと絶賛してくれた精霊は……ただの精霊ではなく、精霊王に次ぐ強力な大精霊だとわかり。ミラジェーンを精霊の里に来て欲しいと頼んできたのだ。
追放された聖女の召喚魔法は、実は精霊達には美味しい美味しいご飯だとわかり、のんびり楽しく過ごしていくスローライフストーリーを目指します!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる