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16.面倒事は向こうからやってくるみたいよ。
しおりを挟む私のグリフ様の家での一日は、
朝起きてグリフ様と一緒に朝食。
グリフ様が学園へ出勤されるのを見送り。
グリフ様が選んだ家庭教師とお勉強、お昼ごはん、お散歩、お勉強。
その日によってはグリフ様のお帰りを待って夕食、就寝と言う流れよ。
休日の一日目は、お勉強の時間をグリフ様に見ていただいて、他は一緒。
休日の二日目は、朝と夜の食事以外は、自由時間。
時々、グリフ様に連れられて、ピクニックやお買いものをするくらい。
私なんかに、大切な時間を割いてくださる。
そして、気を使ってくれて、まるで、お兄様よりお兄様のようなの。
本当のお兄様とは、お兄様が学校に入っていたからと言うのもあるけど、遊ぶことなんて一度も無かった。
遊ぼうと思って追いかけて振り切られたくらいだし。
その時は何も感じなかったけど、あししげく帰って来ては妹を構ってるところを見ると、やっぱり私は嫌われていたんだなって思う。
だからお兄様、と呼ぶことはあっても肉親のような気持ちを持てないって言うか、近所のお兄さんたちより他人な感じなのよね。
まぁ、ゲームの中のお兄様は私のことを死ねばいいって思うほど嫌っていたから、それよりはマシなのかも。
とにかく、グリフ様は、お兄様が妹にするように、私を構ってくれるの。
きっと、私の境遇を知っているから、可哀そうだからとかそういった理由でそうしてくれているんだと思う。それはすごくありがたいんだけど、ちょっと心をざわつかせる。
ずっと一人でいるのが当たり前だったから、って言うのもあるのかもしれないけれど、なんとなくモヤモヤするのよ。
勉強を教えてくれるだけなら、私生活はほっといてもいいはずなのに……。
なんて考えていると、足音が聞こえてきた。
「どうした?」
ほら、また。
一人でぼんやりしていると、すぐに声をかけてくる。
家ではこんなことなかったから変に緊張するのよね。
この邸のルールは、夜寝る時と着替え以外で自室にいるのは禁止なの。
私が家で引きこもり―――と思われていたから、ここでは社会性を身につけるためにって、部屋に戻れない。
でも、勉強がなければやることなんてほぼ無い生活で、ここは下宿とは言え人様のお家。
ウロウロするにも限度ってものがあるのよ。
認識疎外も考えたけど、見つからないって問題になるのも困るでしょ。
結果、庭や図書館でぼーっと座ってると必ず声をかけられるのよね。
今は温室の薔薇を見ている風で、休んでいたんだけれど。
「薔薇が綺麗なので見ていました」
「そうか」
「何か御用ですか?」
「君に会いたいと言う人が来ているんだが……」
言いにくそうに、困ったような笑顔に、否をいえるはずもありません。
かくして、私はグリフ様と応接室へと向かいましたわ。
お父様たちとこの邸に来て以来の応接室には、やっぱり会いたくない人がいたわ。
攻略対象者ではないけれど、重要人物。
王太子殿下と、お兄様……よ。
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