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一、わたしの婚姻
晴江と「礎さん」 第八話
しおりを挟む次に晴江が意識を取り戻した時、そこに夫の姿はなかった。
晴江の身体はきちんと清拭されており、パジャマを着せられて布団の中にあった。
身を起こし、パソコンのモニタを見る。すでに文字が打ち込まれていた。
<<不手際があったらすみませんでした。できるだけ丁寧におこなったつもりですが、身体は大丈夫ですか>>
行為を行う最中、彼は文字を入力する余裕がなかったのだろう。結局終始礎さんが無言だったことを思い出し、しかしそれでも相当に優しく事に及んだらしいことが解り、晴江は少し笑った。
「……大丈夫です。その……」
どこにいるか判らない礎さんを探すように天井を見上げ、晴江はやや恥じらいながらも言った。
「わたしたち、これで夫婦でしょうか」
間を置いて、モニタに文字が打ち込まれた。
<<晴江さん。あなたがそれでいいというのなら、私はとても嬉しい>>
合成音声が読み上げる。
晴江は微笑んだ。
布団に潜り込み、明かりを消そうとして、晴江はふと顔を上げる。
「あの、礎さん」
<<なんでしょう>>
「新婚初夜に独りで眠るのも寂しいので、よかったら手を貸してもらえますか」
返答の代わりに、岩肌がむき出しの壁から触手が一本にょろりと生えてきた。
晴江はそれを手に取り、布団の中に引っ張りこんでその先にくちづけた。
心なしか、触手が体温を上げたような気がした。
祠の中はひんやりと冷たい。
晴江は布団を耳まで引っ張り上げた。
好いた相手との結婚ではなかったかもしれないが、夫となる生き物は案外悪くなさそうだ。
この期に及んで少々負け惜しみを考えながら、晴江は眠りについた。
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