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夏の出会い
君が教えてくれるの?
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あ、やべっ。目が合ってしまった。
僕はあわてて自分の机に向き直る。
(いささか凝視しすぎたかな?)
見慣れない子だったから、おそらく他のクラスなんだろう。補習というお互いに不運な境遇に親近感が湧きつつも、今は女子への接し方が厳しい時代。アンドレの小言が追加されても堪らないので、あまり関わらない方がよさそうだ。
(……)
しかし静かだなぁ。シーンとする教室内に、遠くから吹奏楽部の演奏が聞こえる。こうも静かだとかえって集中ができず、ふと窓から眺める青空に、自由が恋しくなる。
英語のプリントも進まないし……これじゃあ今日はマジで帰れそうにない。
「あの」
諦めの境地に立たされる僕に、背後からあの女子が声をかけてくる。
「おわ! ど、どうかした?」
咄嗟のことに驚き、つい、のけぞってしまう。
「もしかしたらお困りかと思いまして」
敬語? 高校生にしてはずいぶんと丁寧な口調だな。
「ま、まぁ……困ってるといえば、困ってるけど」
「プリント、わからないところがあるんですか?」
「まぁ、そんなところかな」
「よければ教えて差し上げましょうか?」
「えっ? 君が?」
「ええ。おそらく、あなたよりは理解できてると思います」
「そうなの……」
そう言うと、その女子は僕の前の席へと座り、向かい合うように机のプリントを眺める。どういう風の吹き回しかは謎だが、せっかく教えてくれるって言うんなら特に断る理由もない。
「根本的に、この英文は何を言ってると思いますか?」
「う、う~ん……なんだろう」
「一語一語を訳して考えるとイメージが付きやすいと思います。翻訳はできますか?」
「あ、電子辞書があるよ。でも、助動詞とか接続詞とか、訳しにくいのはどうすればいいの?」
「訳せる単語の上に日本語のルビを振っていくのはいかがでしょう? そうすれば全体の英文の意味が見えてくるはずです」
「な、なるほど」
「文法等については一概には解説できませんが、繰り返し解くことで理解を深めていくといいと思います」
僕は彼女の丁寧な解説を聞きながら、指示されるがままに問題へと取り組んでいく。
すぐに理解ができるほどうまくはいかなかったが、彼女のアシストのおかげで昨日の分の英語プリントを片付けることができた。
「いやぁ、助かっちゃった」
「まだ感謝されるのは早いです。それよりも次はどのプリントですか?」
「え、でも僕なんかに構ってると自分の課題ができないんじゃ」
「私は自分のペースでできますので」
「なんか迷惑かけちゃって、ごめんね」
「気にしないでください。人に教えると自分の理解も深まるので」
「はは、なんだか先生みたい」
「よく言われます。堅苦しい性格って」
「いや……褒めたつもりだったんだけどな」
「す、すいません。褒められたことがあまりないので」
そんな雑談をしてると、お昼を知らせるチャイムが鳴った。
「お昼になってしまいましたね。続きは午後からにしましょう」
「そうだね」
12時のチャイムが鳴ったら休憩に入っていいと安藤から説明は受けていたため、僕はお弁当を買いにでかける。夏休みは校内の売店がお休みなので、弁当の調達も一苦労だ。
近くのコンビニでおにぎりを3つほど買い、教室へと戻る。さっきの女子は僕の前の席から移動せず、そこでお弁当箱を広げて食べていた。
「夏休みは購買休みだからお昼買うのも面倒だね」
そんな感じで声をかけつつ、僕も席へと戻る。
「そうだ、名前聞いてもいいかな?」
「石嶺です。石嶺鏡花」
「石嶺さんかぁ。僕は……」
「伊勢くん……ですよね。伊勢勇之介君」
僕はあわてて自分の机に向き直る。
(いささか凝視しすぎたかな?)
見慣れない子だったから、おそらく他のクラスなんだろう。補習というお互いに不運な境遇に親近感が湧きつつも、今は女子への接し方が厳しい時代。アンドレの小言が追加されても堪らないので、あまり関わらない方がよさそうだ。
(……)
しかし静かだなぁ。シーンとする教室内に、遠くから吹奏楽部の演奏が聞こえる。こうも静かだとかえって集中ができず、ふと窓から眺める青空に、自由が恋しくなる。
英語のプリントも進まないし……これじゃあ今日はマジで帰れそうにない。
「あの」
諦めの境地に立たされる僕に、背後からあの女子が声をかけてくる。
「おわ! ど、どうかした?」
咄嗟のことに驚き、つい、のけぞってしまう。
「もしかしたらお困りかと思いまして」
敬語? 高校生にしてはずいぶんと丁寧な口調だな。
「ま、まぁ……困ってるといえば、困ってるけど」
「プリント、わからないところがあるんですか?」
「まぁ、そんなところかな」
「よければ教えて差し上げましょうか?」
「えっ? 君が?」
「ええ。おそらく、あなたよりは理解できてると思います」
「そうなの……」
そう言うと、その女子は僕の前の席へと座り、向かい合うように机のプリントを眺める。どういう風の吹き回しかは謎だが、せっかく教えてくれるって言うんなら特に断る理由もない。
「根本的に、この英文は何を言ってると思いますか?」
「う、う~ん……なんだろう」
「一語一語を訳して考えるとイメージが付きやすいと思います。翻訳はできますか?」
「あ、電子辞書があるよ。でも、助動詞とか接続詞とか、訳しにくいのはどうすればいいの?」
「訳せる単語の上に日本語のルビを振っていくのはいかがでしょう? そうすれば全体の英文の意味が見えてくるはずです」
「な、なるほど」
「文法等については一概には解説できませんが、繰り返し解くことで理解を深めていくといいと思います」
僕は彼女の丁寧な解説を聞きながら、指示されるがままに問題へと取り組んでいく。
すぐに理解ができるほどうまくはいかなかったが、彼女のアシストのおかげで昨日の分の英語プリントを片付けることができた。
「いやぁ、助かっちゃった」
「まだ感謝されるのは早いです。それよりも次はどのプリントですか?」
「え、でも僕なんかに構ってると自分の課題ができないんじゃ」
「私は自分のペースでできますので」
「なんか迷惑かけちゃって、ごめんね」
「気にしないでください。人に教えると自分の理解も深まるので」
「はは、なんだか先生みたい」
「よく言われます。堅苦しい性格って」
「いや……褒めたつもりだったんだけどな」
「す、すいません。褒められたことがあまりないので」
そんな雑談をしてると、お昼を知らせるチャイムが鳴った。
「お昼になってしまいましたね。続きは午後からにしましょう」
「そうだね」
12時のチャイムが鳴ったら休憩に入っていいと安藤から説明は受けていたため、僕はお弁当を買いにでかける。夏休みは校内の売店がお休みなので、弁当の調達も一苦労だ。
近くのコンビニでおにぎりを3つほど買い、教室へと戻る。さっきの女子は僕の前の席から移動せず、そこでお弁当箱を広げて食べていた。
「夏休みは購買休みだからお昼買うのも面倒だね」
そんな感じで声をかけつつ、僕も席へと戻る。
「そうだ、名前聞いてもいいかな?」
「石嶺です。石嶺鏡花」
「石嶺さんかぁ。僕は……」
「伊勢くん……ですよね。伊勢勇之介君」
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