女剣士セルティス

最終章 打倒！ 四天王

第232話 男として

　ゼビルは、キーファーのラプターソードを、ヒョイッと躱して小馬鹿にしている。

　そんなゼビルに、キーファーは舌打ちした。

「まさか、生身の人間を石の中に収めて、戦うときに呼び出す。そんな召喚魔法を作るとは思わなかったわ」

　シャロルも、ゼビルの言葉には呆然とするしかなかった。

　生身の人間を石に収めるように改造しただけでなく、その石に収まっている人間は男の子。

　まだ、これからという男の子の未来を奪ってしまったのだ。

　それがシャロルにとっては許せなかった。

「こうやって、石に収まってくれれば、永遠に生きられるんだ。良いと思わないか？」

　ゼビルはニヤリと笑っている。

「人間は道具じゃないのよ！！」

　シャロルは叫ぶと、クレイモアを振り下ろす。

　ゼビルは、シャロルのクレイモアの刃先に乗ると、男の子を呼び出す。

「な……」

　ゼビルが呼び出した男の子は、シャロルに向けて風を起こす。

　その風は強力で、シャロルの華奢な身体は耐えることができなくて、吹き飛ばされた。

「きゃっ！！」

「シャロル！！」

　キーファーは、吹き飛ばされたシャロルの身体をしっかりと受け止める。

　シャロルは、キーファーに抱かれる形となった。

「ありがとう」

　シャロルは、お礼を言って、キーファーから離れる。

「ちゃっちゃっと始末しよう」

　ゼビルは、大剣で、シャロルを斬ろうと向かってくる。

　シャロルは素早くクレイモアを構え、大剣を受け止めようとしたときだった。

　シャロルがクレイモアで大剣を受け止めようするよりも先に、キーファーのラプターソードが大剣を受け止めていた。

　キーファーのラプターソードと、ゼビルの大剣が十字に重なる。

　しばらく、そのままの形で押し合いが続く。

　シャロルは、押し合っている、今がチャンスだと思って、クレイモアで、ゼビルの背中を叩きつけた。そして、鷹を呼び出す。

「ハヤテ！！」

　ハヤテという鷹だ。ハヤテが強風を起こして、ゼビルを飛ばした。

「なに！？」

　ゼビルは飛ばされた勢いで、壁に激突してうつ伏せに倒れる。

「……おまえ……」

　ゆっくりと立ち上がったゼビルは、シャロルの目の前にやってくると、大剣を首に突きつける。

「……どうする気？」

　シャロルは、一歩でも動けば、大剣が首に食い込む状況でも、冷静な口調だった。

　その冷静な態度に腹を立てたゼビルは、大剣でシャロルの首を勢いよく斬った。

　シャロルの首から血液が飛び散る。

　ただ、シャロルも完全ではなかったが、胴体を左に動かして、身体を反らしたため、首に深い傷はつかなかった。

　シャロルが素早く身体を反らしたことが気に入らなかったゼビルは、男の子を呼び出した。

　男の子は風を起こした。

　シャロルの身体はあっという間によろめいた。

「うっ……！！」

　シャロルは膝をつき、ハァハァと息を切らしている。

　ゼビルの召喚した男の子の風は、ボクシングのボディーフローのように、じわじわとダメージがくる。

「……シャロル……！」

　キーファーは、シャロルの身体を支える。

「悪い、俺がちゃんと守ってやれなくて」

　キーファーは、女性ひとりも守れない自分に、不甲斐なさを感じた。

（もっと、俺がしっかりしなきゃいけねぇ。男なら女性を守れよ！！）

　キーファーは、心の中で気合を入れ直す。

「さっさと死んでくれないかなぁ」

　ゼビルは、男の子を呼び出して風を起こす。

　その風は竜巻のように吹き荒れ、キーファーとシャロルの身体が宙を舞う。