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14章 召喚魔法の習得

第214話 四天王の怒り

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 バゴーンと大きな音。

 その音で壁に穴が開く。

 壁に穴を開けたのは、四天王のひとり、アッシュだ。

「ミラトっていう女は召喚魔法の魔石を手に入れただと!? その魔石は、その女に相応しいと判断したのか!! 俺たちには相応しくないということか!!」

 アッシュはイライラしていた。

召喚魔法の魔石がアッシュを相応しくないと判断したことに腹を立てていたのだ。

 四天王、ベアトリクスは、アッシュの背中を撫でて宥める。

「まぁ、まぁ、落ち着きなよ。だから、自分たちで造ろうとしているんでしょ? 召喚魔法を。ゲイルもあの女剣士たちを追い詰めたじゃない。まさか、ミラトという女が召喚魔法を持っているとは驚いたけれど」

「ゲイルの召喚魔法より、もっと強力な召喚魔法ができればそれでいい。最強の召喚魔法作ろうぜ」

 四天王、ゼビルは笑顔で軽い口調だ。

 四天王、エバンは軽い口調のゼビルに睨みを利かせている。

「なんで、そんなに気楽なんだよ。あの女剣士たちだって召喚魔法習得するかもしれないぜ。きっと、召喚魔法の魔石は、女剣士たちを相応しいと思っているかもしれないからな」

 ベアトリクスは指をくるくる回しながら、これまた、気楽に考えている。

「あら、それはそれで面白いじゃない。こっちだって、強力な召喚魔法造れるんだから」

 エバンは横目でベアトリクスを見た。

「おまえも随分と気楽だなぁ」

 アッシュは、まだ、イライラを抑えられていないようで、再び、壁に穴を開けた。

「チッ、本物の召喚魔法を手に入れているんだぞ! 奴は!! 俺らが造った召喚魔法で本物の召喚魔法に勝てると思うか!?」

 今度はゼビルがアッシュを宥める。

「まぁまぁ、落ち着けって。なら、無理やり奪うことはできないのか……?」

 エバンはゼビルの意見に首を横に振る。

「俺たちを相応しくないと思っているからな。召喚魔法を発動しない。でも、召喚魔法の魔石は、8人の英雄の魂そのものだ。なら、8人の英雄のように、見込みのある奴の魂を石に閉じ込めれば、発動するはず」

 ベアトリクスが目を細めた。

「石がないでしょ。石が。だから、ゲイルのように、魂を直接、身体に組み込んで、プログラミングするのよ」

「ゲイルは今、何している?」

 エバンがふと疑問に思って、ゲイルのことを聞いた。

 アッシュは壁にまたしても、拳を突きつけて穴を開ける。

 ただ単に、八つ当たりしているだけではないか。

「結局、られたんじゃないのか?」

 ゼビルがため息をついた。

「把握してないんか? ミラトとかいう女の召喚魔法で、女剣士たちを連れて逃げられた。だから、今、追っているところだぜ。今度こそ殺すってさ」

 ベアトリクスは、興味なさそうで、長い髪を人差し指に巻き付けている。

「さぁ、どうだかねぇ。本当に殺すことができたら、ゲイルの実験は成功よね」

 ベアトリクスにエバンが笑う。

「そうだな、殺せなかったら、ゲイルは失敗作ってことだな」

 四天王はゲラゲラと笑った。

 その声は大きく響き渡る。

 もはや、ゲイルを人間だとは思っていない。

四天王からしてみれば、ゲイルは、ただの実験体だ。

元は、優しい心のある人間だったかもしれないのに、勝手に改造した。

 アッシュは、イライラから楽しいという感情に変わったようだ。

目をキラキラさせて、ワクワクしている。

「奴らと戦いてぇなぁ!!」

 ニヤッとしながら、指をポキポキ鳴らしている。

 エバンは、アッシュの短気さに呆れた。

「ケンカッ早いな、相変わらず」

 アッシュはシャドウボクシングをしている。

「だってよぉ、のに、俺らが送り出した者たちが全部、殺られているんだぜ。一度、確かめてみたくないか?」

 エバンがアッシュを落ち着かせようと、肩をポンと叩く。

「まぁ、慌てるなって。もう少し、人間を使って研究しようぜ。きっと、騎士や戦士の魂なら、強力な召喚魔法が造れるかもしれないぜ」

 ベアトリクスは、にっこりしている。

 その笑みは怖さを含んでいるようにも見える。

「そうねぇ、ゲイルよりも、もっと強力な召喚魔法を造ることができるかもしれないわね」

 ゼビルはベアトリクスの言葉に乗ったようで、心を躍らせていた。

「そうだなぁ、それも面白いかもしれない。もっと強力な召喚魔法を造れるかもしれないんだからな。でも、確かに女剣士たちと戦ってみたいという気もあるなぁ」

 アッシュはゼビルに同意する。

「だろ? 奴らは決して、強くはない。強くはないはずなのに何故か、負けないんだよな。それをその目で確かめたいんだよ」

 アッシュは指をポキポキ鳴らして、ゼビルは拳を握って見つめる。

 エバンは、アッシュとゼビルの肩をポンッと叩く。

「でも、召喚魔法を造ることも気になるんだよなぁ。だから、召喚魔法を造って、それを使いこなして女剣士たちと戦いたいんじゃねぇのか?」

 アッシュとゼビルは、図星だったようで声をそろえて、口角を上げる。

「まぁな」

 ベアトリクスは話がまとまったところで、手を振った。

「じゃあ、そういうことで。召喚魔法に使える、強い魂を持つ人間を探してくるわ」

そう言うなり、あっという間に消えていった。

 アッシュは、フーとため息をついてから研究室のほうへ向かう。

「なら、俺は、ここに眠っている奴らで、ちょっとが造れるか、もっと研究してみるわ」

 ゼビルも、面白そうな人間がいるか探してくるといって、その場を後にした。

 エバンは、やれやれといった顔で、去っていくアッシュとゼビルを見送った。

 アッシュとゼビルは、短気でケンカッ早い。

 宥めることが大変だなぁと、エバンは思った。

「さて、俺も研究するかな」

 不敵な笑みを浮かべて、研究室へと歩を進めた。
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