上 下
213 / 239
14章 召喚魔法の習得

第213話 心の成長

しおりを挟む
 セルティスたちは、ミラトにシュルブルという街に行こうと勧められた。

 そこで、シュルブルという街へ向かっている。

 そのシュルブルという街には、8人の英雄が眠っているという。

 また、その8人の英雄は魔石に魂を閉じ込めたとのこと。

 死ぬ前に、魔石に魂だけは残しておき、再び、争いがおきたときに役立てて欲しいと願いを込めたらしい。

 実際、争いは終わりが見えていない。

 繰り返し、昔から行われてきた。

 1万年前にいたとされるモンスターの痕跡を元に、今の人間たちは研究を重ね、モンスターを再現させて、街を襲っている。

 また、召喚魔法を何としても手に入れたいと探していたが、情報を得られず、自分たちで造ろうとしている。

 四天王に関しても、魔石に関しても、全て、1万年前に生存していたモンスターを蘇らせるために造ったもの。

 8人の英雄は、生前、遠い未来にも争いごとは起こると予測していたのだろうか。

 8人の英雄もモンスターだ。

 平和にするために戦ったりすることから、人間に近い脳を持っていた、人間のような知能があるモンスターだったと推測もできなくはない。

 人間に近い知能を持ったモンスターが、1万年前にいたというのも不思議な話だ。

 でも、実際にいたことには間違いない。

 いろいろと頭の中が整理できていないセルティスは、あれこれと考えながら、歩いている。

 シュルブルの街も意外と遠い。

 何時間歩いているのかわからない。

「セルティス、あまり考え事しながら歩いていると……」

 ホークが言いかけたとき、まさに、言おうとしていたことが起こった。

 ドカッ

「あっ……」

 セルティスは周囲を見ていなくて気づいていなかった。

 目の前に木があったことを。

 おもいっきり、根っこにつまずいた。

「おっと……」

 大胆に転びそうになるセルティスを、咄嗟にホークは受け止める。

 セルティスは恥ずかしくなって、顔を真っ赤にする。

「あ、ありがとう……」

 恥ずかしかったのは、ホークに抱きとめられたことではない。

 根っこに躓いて派手に転びそうになったことだった。

 ミラトはその光景に呆然としている。

「そんなにドジっ子だったっけ? セルティスって」

 ホークはニヤリと意地の悪い笑みを浮かべた。

「ミラト、知らなかったか? かなりドジっ子だぜ。セルティスは」

 セルティスはホークに抗議する。

「余計なこと言わなくていいだろっ! それに、あたし、そこまで、ドジっ子じゃない!!」

 ジュンがくすくすと笑っている。

 セルティスは、ジュンにも目を向けた。少し、ムッとしている。

「ジュン、何かおかしいか?」

 ジュンは、セルティスの態度を面白がっている。

 クスクス笑っていたが、豪快に笑い出した。

「かなりのドジっ子だよ、セルティスは。自分では自覚ないんだねぇ」

「そんなことないっ!! あたしは……」

 ドカッ

 今度は、木にぶつかって、チューしてしまった。

「きゃーっ! 変な味がするー---!!!!」

 セルティスは、明らかに全体を見ていなかった。

 ちゃんと見ていれば、躓くこともぶつかることも避けられたはずだ。

 キーファーは呆れて、セルティスを見ている。

 あまり関わりたくない、冷めた目だ。

「犬も歩けば、棒に当たるじゃなくて、セルティスも歩けば木に当たる……か」

 シャロルは、ことわざで例えたキーファーに感心していた。

「凄い例え……」

 戦いの面に対しては、セルティスも凄く頼れる。

 しかし、戦い以外では、セルティスが動こうとすると、何かしらドジっ子が発動する。

 普段、クールなヴィンセントも、セルティスのドジっ子ぶりには、ツッコミを入れてしまう。

「それをドジっ子って言うんだよ」

 仲間に突っ込まれて、セルティスは口を尖らせた。

 ホークはため息をついた。

「何、口を尖らせてるんだよ。子供か、おまえは」

 セルティスはホークに言われて、頬まで膨らませている。

 ホークは、膨らんでいるセルティスの頬を指で、プニーッとつつく。

「可愛い」

 セルティスは、ホークの指を払うも、可愛いと言われて嬉しかった。

「相変わらず、ラブラブなのね」

 ミラトはセルティスとホークのやりとりを見て、幸せそうだった。

 平和で幸せなひと時。

 戦いが激しくなり、辛いことも苦しいことも増えるばかり。

 そんな中でもこういう時間は大切だ。

 シャロルは仲間たちとの時間を大切にしたいと心から思った。

 苦しい中にも幸せで楽しい時間を作って、苦しさを和らげることも必要だ。

 キーファーは、セルティスとホークの関係を見ていると、恋人同士なのか、子供のじゃれ合いなのか疑問に思う。

「あの2人、精神年齢は低そうだなぁ」

 頭の後ろに手を組みながら、ぼやいている。

 ジュンが、キーファーのぼやきを聞いていて、すぐ反応した。

「15歳くらい……?」

 ヴィンセントは、吹き出しそうになっていた。

 食べ物か飲み物を口に含んでなくてよかった。

「それは……さすがに、精神年齢、低すぎないか……」

 ミラトは目を丸くしている。

「いや、それじゃ……私より年下になっちゃうから……」

 ホークが聞きながら、じっと仲間を横目で見ている。

「悪かったなぁ、精神年齢低くて」

 セルティスは開き直ったのか、わからないが、度肝を抜かれるようなことを発する。

「まだ15歳だよ。あたしは」

 再び、ツッコミを入れるヴィンセント。

「サバ読みすぎだろ……」

 と、言ってみたものの、性格を考えると15歳でもおかしくはないと思ったのだった。

 ヴィンセントにジュンが鋭くツッコむ。

「今さ、性格は15歳だなって思ったでしょ?」

「うっ……」

 ジュンを目の前に、ヴィンセントは何も言えなくなってしまった。

「あれ? へぇ……ジュンの前では、何も言えなくなるのかぁ」

 セルティスは、ヴィンセントを小突きながら、ニヤッとした。

 さっきのお返しだと言わんばかりの表情だ。

 ホークは目を見開いて、セルティスを見る。

「セルティス、意地悪だなぁ。そんな奴だったか……?」

 こういうセルティスを見ていると、随分と仲間に心を開くようになったなと思った。

 最初は誰にも心を開かなかったセルティスが、仲間に笑みをたくさん見せるようになり、冗談も言えるようになったのだから。

「成長したな」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

願いの守護獣 チートなもふもふに転生したからには全力でペットになりたい

戌葉
ファンタジー
気付くと、もふもふに生まれ変わって、誰もいない森の雪の上に寝ていた。 人恋しさに森を出て、途中で魔物に間違われたりもしたけど、馬に助けられ騎士に保護してもらえた。正体はオレ自身でも分からないし、チートな魔法もまだ上手く使いこなせないけど、全力で可愛く頑張るのでペットとして飼ってください! チートな魔法のせいで狙われたり、自分でも分かっていなかった正体のおかげでとんでもないことに巻き込まれちゃったりするけど、オレが目指すのはぐーたらペット生活だ!! ※「1-7」で正体が判明します。「精霊の愛し子編」や番外編、「美食の守護獣」ではすでに正体が分かっていますので、お気を付けください。 番外編「美食の守護獣 ~チートなもふもふに転生したからには全力で食い倒れたい」 「冒険者編」と「精霊の愛し子編」の間の食い倒れツアーのお話です。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/2227451/394680824

私のバラ色ではない人生

野村にれ
恋愛
ララシャ・ロアンスラー公爵令嬢は、クロンデール王国の王太子殿下の婚約者だった。 だが、隣国であるピデム王国の第二王子に見初められて、婚約が解消になってしまった。 そして、後任にされたのが妹であるソアリス・ロアンスラーである。 ソアリスは王太子妃になりたくもなければ、王太子妃にも相応しくないと自負していた。 だが、ロアンスラー公爵家としても責任を取らなければならず、 既に高位貴族の令嬢たちは婚約者がいたり、結婚している。 ソアリスは不本意ながらも嫁ぐことになってしまう。

普段は地味子。でも本当は凄腕の聖女さん〜地味だから、という理由で聖女ギルドを追い出されてしまいました。私がいなくても大丈夫でしょうか?〜

神伊 咲児
ファンタジー
主人公、イルエマ・ジミィーナは16歳。 聖女ギルド【女神の光輝】に属している聖女だった。 イルエマは眼鏡をかけており、黒髪の冴えない見た目。 いわゆる地味子だ。 彼女の能力も地味だった。 使える魔法といえば、聖女なら誰でも使えるものばかり。回復と素材進化と解呪魔法の3つだけ。 唯一のユニークスキルは、ペンが無くても文字を書ける光魔字。 そんな能力も地味な彼女は、ギルド内では裏方作業の雑務をしていた。 ある日、ギルドマスターのキアーラより、地味だからという理由で解雇される。 しかし、彼女は目立たない実力者だった。 素材進化の魔法は独自で改良してパワーアップしており、通常の3倍の威力。 司祭でも見落とすような小さな呪いも見つけてしまう鋭い感覚。 難しい相談でも難なくこなす知識と教養。 全てにおいてハイクオリティ。最強の聖女だったのだ。 彼女は新しいギルドに参加して順風満帆。 彼女をクビにした聖女ギルドは落ちぶれていく。 地味な聖女が大活躍! 痛快ファンタジーストーリー。 全部で5万字。 カクヨムにも投稿しておりますが、アルファポリス用にタイトルも含めて改稿いたしました。 HOTランキング女性向け1位。 日間ファンタジーランキング1位。 日間完結ランキング1位。 応援してくれた、みなさんのおかげです。 ありがとうございます。とても嬉しいです!

異世界に引っ越しする予定じゃなかったのに

ブラックベリィ
恋愛
主人公は、高校二年生の女の子 名前は、吉原舞花 よしはら まい 母親の再婚の為に、引っ越しすることになったコトから始まる物語り。

神の眼を持つ少年です。

やまぐちこはる
ファンタジー
ゴーナ王国のフォンブランデイル公爵家のみに秘かに伝わる、異世界を覗くことができる特殊スキル【神の眼】が発現した嫡男ドレイファス。  しかしそれは使いたいときにいつでも使える力ではなく、自分が見たい物が見られるわけでもなく、見たからといって見た物がすぐ作れるわけでもない。  食いしん坊で心優しくかわいい少年ドレイファスの、知らない世界が見えるだけの力を、愛する家族と仲間、使用人たちが活かして新たな物を作り上げ、領地を発展させていく。 主人公のまわりの人々が活躍する、ゆるふわじれじれほのぼののお話です。 ゆるい設定でゆっくりと話が進むので、気の長い方向きです。 ※日曜の昼頃に更新することが多いです。 ※キャラクター整理を兼ね、AIイラストつくろっ!というアプリでキャラ画を作ってみました。意外とイメージに近くて驚きまして、インスタグラムID koha-ya252525でこっそり公開しています。(まだ五枚くらいですが) 作者の頭の中で動いている姿が見たい方はどうぞ。自分のイメージが崩れるのはイヤ!という方はスルーでお願いします。 ※グゥザヴィ兄弟の並び(五男〜七男)を修正しました。 ※R15は途中に少しその要素があるので念のため設定しています。 ※小説家になろう様でも投稿していますが、なかなか更新作業ができず・・・アルファポリス様が断然先行しています。

異世界は流されるままに

椎井瑛弥
ファンタジー
 貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。  日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。  しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。  これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。

アルマン伯爵と男装近侍

早瀬黒絵
ファンタジー
警察の手にも負えなくなった難事件。それを解決へ導き、犯人を暴き出すのが伯爵の務め。わたしはそんな伯爵に拾われ、いわゆる助手的な立場にいる。……本音を言うと楽しくない訳ではない。探偵モノや刑事モノの小説やドラマは大好きだった。「――……私の顔に何か付いているのか」「はい、目と鼻と口が丁度良い按配でございます」「それがない人間はいないだろう」「そうですね、ちょっとした冗談ですよ」頭の回転が早く秀麗だけど少しヘタレな伯爵と腹黒くて勘の鋭い現代の元女子高生な男装少女が、王都で起こる難事件に挑むお話。

精霊の加護

Zu-Y
ファンタジー
 精霊を見ることができ、話もできると言う稀有な能力を持つゲオルクは、狩人の父から教わった弓矢の腕を生かして冒険者をしていた。  ソロクエストの帰りに西府の近くで土の特大精霊と出会い、そのまま契約することになる。特大精霊との契約維持には膨大な魔力を必要とするが、ゲオルクの魔力量は桁外れに膨大だった。しかし魔力をまったく放出できないために、魔術師への道を諦めざるを得なかったのだ。  土の特大精霊と契約して、特大精霊に魔力を供給しつつ、特大精霊に魔法を代行してもらう、精霊魔術師となったゲオルクは、西府を後にして、王都、東府経由で、故郷の村へと帰った。  故郷の村の近くの大森林には、子供の頃からの友達の木の特大精霊がいる。故郷の大森林で、木の特大精霊とも契約したゲオルクは、それまで世話になった東府、王都、西府の冒険者ギルドの首席受付嬢3人、北府では元騎士団副長の女騎士、南府では宿屋の看板娘をそれぞれパーティにスカウトして行く。  パーティ仲間とともに、王国中を回って、いろいろな属性の特大精霊を探しつつ、契約を交わして行く。  最初に契約した土の特大精霊、木の特大精霊に続き、火の特大精霊、冷気の特大精霊、水の特大精霊、風の特大精霊、金属の特大精霊と契約して、王国中の特大精霊と契約を交わしたゲオルクは、東の隣国の教国で光の特大精霊、西の隣国の帝国で闇の特大精霊とも契約を交わすための、さらなる旅に出る。 ~~~~ 初投稿です。 2作品同時発表です。 「射手の統領」も、合わせてよろしくお願いします。 カクヨム様、小説家になろう様にも掲載します。

処理中です...