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12章 離島 ダリ島

第202話 証明

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 セルティスは、ジュンの才能に驚いている。

 ジュン自身が気づいているかは、わからない。

 ただ、音を聞いて、良い剣の振りをしているかを見極めることは、なかなか難しい。

 それをジュンは行っている。

 シャロルは驚いているセルティスに、付け加えた。

「五感は心が乱れていたら、鋭く感じ取れない。セルティスたちと出会って、心に迷いやモヤモヤがなくなったのよ」

 ホークは、ジュンの戦いを静かに見守る。

「自分の実力を知るチャンスかもな。これで、ジュンがもっと強くなる。それを証明したいんだな、ジュンは」

 ホークの言うことに、キーファーは納得する。

 だけど、女の子ということもあって、ジュンをこのまま、1人で戦わせていいのかとも思う。

 キーファーが心配していることも、気にせずにジュンはグラバーに向き直る。息をゆっくり吸った。

 グラバーは、ジュンの様子を観察している。

 何処から動くか予測をしようとしていた。

 だが、動く様子がないと見たグラバーは自分から仕掛ける。

 ジュンに長剣を振りながら、飛びかかる。

 その瞬間、ジュンは、グラバーが飛びかかる音を聞いた。

(瞬発力はありそうだな。踏み切り方が良い)

 ブレードソードを横にして振ろうとした。

 ところが斬る寸前でブレードソードは止まった。

 グラバーは低い体勢になり、ジュンの視線を外したことを確認する。

 その隙に長剣で、ジュンの背中を抉る。

 ジュンは、気配を感じることができず、躱すことができなかった。

 膝をついて、肩で息をしている。

 ヴィンセントは助けに入ろうと、ブラッドソードを振り下ろそうとしたときだった。

 光がグラバーを突き刺す。

 グラバーは全く気付くことができなくて、振り返ったときには、仰向けになっていた。

 ジュンは、ブレードソードで光を放った。

 光が突き刺すと同時にグラバーの肩をブレードソードが貫く。

「ヴィンセント、ありがとう。でも、大丈夫だよ。あいつは、あたしにケンカ売ってきた。なら、あたしもちゃんと、勝負するよ!」

 ヴィンセントが心配していることに気がついたジュンは、ニヤリと笑った。

 ヴィンセントから見れば、どこからあの自信が出てくるのか、不思議だ。

 強くなったといえば、強くなったのかもしれないけれど。

 シャロルも、ずっとジュンのことを見てきたが、こんな自信のある、堂々とした姿を見たことがない。

 だから、驚きのあまり言葉すら出ない。

 キーファーとホークは、呆然としている。

 人が変わったのかと思う。

 本当にジュンなのかと疑ってしまう。

 呆然としているキーファーとホークに、セルティスは呆れた様子だった。

「ジュンは、きっと、証明したいんだ。自分にもできるってことを。これが証明できれば、自分を信じられるようになる。強くなれるって思えるから

 ホークは、セルティスの分析も凄いと目を丸くした。

「分析してたのか……?」

 思わず、セルティスに聞く。

 セルティスは首を横に振る。

「誰にでもあることだよ。誰かを愛して、本気で守りたい。でも、今までの過去や経験で、自分を信じられなくなっていたら、守りたくても守れない。だから、証明が欲しいんだよ。自分でも愛する人を守れるという証明が」

 セルティス自身がそうだったから、ジュンの気持ちがよくわかる。

 だが、セルティスはずっと、クヨクヨしていた。

 なんで、こんなに弱いんだとずっと嘆いていた。

 ところが、ジュンは気持ちの切り替えが上手というのか、弱音を吐いたら、スッと前を向ける。

 いつまでも、引きずらない。

 セルティスは、ジュンのそういうところに感心していた。
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