上 下
199 / 239
12章 離島 ダリ島

第199話 支え合いと助け合い

しおりを挟む
 シャロルに弱音を吐いてもいいと説くセルティスたち。

 その中で、キーファーは、それぞれが過去を背負っていると自分のことを話す。

「俺だって葛藤してるよ。自分の心の弱さと。四天王に妻と子供を殺されたからな。子供はまだ4歳と2歳の男の子だったんだ。俺は兵士として、国王から命令を受けていたんだ。城を守れと。だから、その任務を果たそうとしていた。だから、妻と子供のそばにいてやることができなかった。それと国王は、四天王とつながっていた。だから、わざと、俺に任務だといって、妻と子供から遠ざけたんだ。国王に言われたよ。今頃、死んでるだろうって。家族のことを嘲笑った」

 キーファーの過去にセルティスたちは呆然とした。

 これまでも、何度も子供たちが四天王やその手下、モンスターたちに殺されたところを何度も見ていて、卑劣だと思っていた。

 まさかキーファーの子供まで……

 キーファーは、セルティスたちの反応を見ながら、ゆっくりと語る。

「俺は、国王を殺して、すぐに妻と子供のところへ向かった。俺が着いたときには、もう、妻と子供は死んでいた。それも、身体はバラバラになっていた。今でも、その時のことを思い出すと、本当に兵士をやっていていいのか、自分の家族すら守れないなら、もう兵士の資格はないと考えた」

 ジュンは、キーファーの話を聞いているうちに、一粒の涙が滴り落ちた。

「キーファーのせいじゃない。キーファーは国王に騙されただけだよ。その隙に家族を殺すなんて四天王も卑怯だ」

 ジュンの涙を見て、ヴィンセントはそっと背中を撫でてやる。

 キーファーは更に続けた。

「兵士をやる資格はないと考えた俺は、兵士を辞めようとした。同時に俺も家族の元へ行きたいと思って、自ら命を絶とうとた。ちょうど、その頃だった。ヴィンセントに会ったのは。ヴィンセントも大切な海賊仲間がモンスター化して戦わざるを得なくなった。海賊仲間を失った後、何故、モンスター化したのか調査するヴィンセントを見て、もう一度、生きてみようと思えた」

 キーファーは、1枚の写真を取り出して、写真をセルティスたちに見せた。

その写真は妻と子供たちの写真だ。

 セルティスもキーファーの話を聞いて、涙を流した。

 こんな悲しいことがあっていいのか。

 キーファーは、長く息を吐いた。

「でもよ、俺はもう過去には捉われない。今は、仲間もいるからな。もちろん、家族は大切だ。四天王を止めることで、きっと、安心して天国でも幸せに暮らせると思うから。それを止めるのは、俺たちしかいないしな」

 シャロルは、キーファーの話を聞いて、前向きになり勇気が湧いてきた。

「キーファー、あなたも、四天王との戦いが終わったら、幸せにならないとね」

 シャロルは、キーファーの手をそっと握った。

 このとき、自分だけではないと思うことができた。

「ありがとう、キーファー」

 キーファーは首を横に振った。

「いや、お礼を言うのは俺のほうだ。ありがとう、シャロル」

 キーファーに言われて、シャロルはキョトンとしていた。
「私は何もしてないわ」

 戸惑っているシャロルに、セルティスが笑顔で答える。

「あたしたち、自分では何もしていないように感じるけど、実は支え合っていて、助け合ってるんだよ。きっと、気持ちに寄り添うだけでいい。ただ、受け止めてくれるだけでいいんだよ。それだけで、支え合って助け合ってるんだよ。あたしたち」

 ジュンはセルティスの言葉を聞いて頷いた。

「そうかもしれない。セルティスの言う通りだよ」

 セルティスたちは話を通じて、仲間の絆を深めていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

浅葱色の桜 ―堀川通花屋町下ル

初音
歴史・時代
新選組内外の諜報活動を行う諸士調役兼監察。その頭をつとめるのは、隊内唯一の女隊士だった。 義弟の近藤勇らと上洛して早2年。主人公・さくらの活躍はまだまだ続く……! 『浅葱色の桜』https://www.alphapolis.co.jp/novel/32482980/787215527 の続編となりますが、前作を読んでいなくても大丈夫な作りにはしています。前作未読の方もぜひ。 ※時代小説の雰囲気を味わっていただくため、縦組みを推奨しています。行間を詰めてありますので横組みだと読みづらいかもしれませんが、ご了承ください。 ※あくまでフィクションです。実際の人物、事件には関係ありません。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

処理中です...