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12章 離島 ダリ島

第192話 占領

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 ダリ島を探索していると、倒れている人を発見する。

 どこかの騎士か戦士だろうか。

 大量に赤黒い血液が地面を染めている。

 セルティスは静かに近づき、騎士か戦士の生死を確認する。

 息をゆっくりと吐き、仲間のほうに視線を向ける。

 首を横に振って合図をした。

 その合図は死を意味していた。

 一歩遅かった。

 ジュンは顔を伏せた。

 あまりの残酷な現実を受け入れられなかった。

 ヴィンセントは、無意識のうちにジュンを引き寄せていた。

 こんな残酷な光景を見せたくはないと思った。

 つい、先ほど、バラバラの骨や遺体を見たばかりだ。

 また見ることになるとは。

 ジュンは、ヴィンセントの優しさに笑みがこぼれた。

「ヴィンセント、優しいね」

 ヴィンセントに感謝した。

  ヴィンセントは困ったような表情でジュンを見た。

 ただ、この残酷な光景を見せたくなかっただけの話だが、優しいと言われるとどのように返答すればいいのかわからない。

 ヴィンセントが、ジュンを守ろうと優しくしてくれていることに、シャロルは安堵する。

 これで、ジュンの心が開いていけばいいと思う。

 ヴィンセントならジュンを任せられると感じた。

 それにしても、船に乗ってから残酷な場面ばかりを見ている。

 だからなのか、セルティスたちは気が滅入ってしまった。

 キーファーが呟く。

「生きている人はいないのか……」

 周囲を警戒しつつも、生きている人がいないか探している。

 情報が欲しい。

 しかし、生きている人がいなければ、情報も得られない。

 すると、黒猫、ピピが告げる。

「この先に行くと、もっと残酷な光景を見ることになるよ。この先で騎士や戦士が戦っている。だけど、苦戦している」

 シャロルは、ピピの首を、こちょこちょしながら感謝する。

「ありがとう、調べてくれていたのね」

 ピピは気持ちが良かったのか、シャロルに首をくすぐられて、目が閉じそうになった。

 それでも、伝えるときはビシッと目をギラつかせる。

「四天王の手下はダリ島を占領したみたいだよ。住処すみかまで作ってさ。それで怒ったダリ島の騎士や戦士がダリ島を守ろうと戦いに挑んだ。でも、手に負えない状況になっている」

 ピピの推測を聞いて、セルティスはため息をついた。

「どこまで占領すれば気が済むんだ……」

「やるしかないな」

 ホークがセルティスに続いて、小さくため息をつく。

 セルティスもホークも、本当は戦いたくないため、あまり気は乗らなかった。

 しかし、戦わなければ、戦いを終わらせることもできないし、いつまでも平和にならない。

 また、セルティスとホークが一緒に暮らせるという幸せな願いを叶えることもできない。

 もちろん、セルティスとホークだけでなく、戦いたくないのは全員同じだ。

 だが、戦いを終わらせないと、平和や幸せも壊れてしまう。

 だから、全員、覚悟をして戦おうと決めている。

 セルティスたちは、改めて覚悟をして頷き合った。

 そして、前へと進んでいく。
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