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12章 離島 ダリ島
第191話 ダリ島
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自分の気持ちがよくわからないままジュンは、船を動かしているヴィンセントを見つめている。
「なんだ……?」
ヴィンセントは、ジュンの視線に気がついて声をかける。
とはいえ、運転しているので気配で視線を感じた。
ジュンは、ヴィンセントに声をかけられて、ギョッとしてしまった。
「へっ……? あぁ、その……」
よくわからないけれど、ヴィンセントから目をそらしてしまう。
何故、こんなことをしたのか、わからない。
ドキドキも止まっていなかった。
ヴィンセントは、ジュンの胸がドキドキしていることには気づかなかった。
だが、何か変だということはわかっていたようで、淡々と、でも、どこか優しさもある声で訊いた。
「体調が悪いのか?」
ジュンは慌てて言葉を返す。
「体調は大丈夫だよ。心配してくれるんだ」
その言葉にヴィンセントは、冷静に答える。
「仲間なら、心配するのは当たり前だろ」
何十時間乗っていたのだろうか、ようやくダリ島に辿り着いた。
「ここがダリ島……?」
キーファーは周囲を見回した。
シャロルがキーファーの呟きに頷く。
「ピピが言うにはここね。それに地図も、この辺りを指してるわ」
船酔いから、いつの間にか復活したセルティスは、あまりの静けさに嫌な予感がする。
「静かだな」
一斉にセルティスに注目した。
セルティス以外の全員が突然のセルティスの声に驚く。
つい、さっきまでホークの膝でダウンしていたはずのセルティスがケロッとしている。
「大丈夫なのか?」
ヴィンセントは呆れている。
セルティスは何事もなかったかのように、笑顔を見せた。
その笑顔を見て、ホークは目を細くしてセルティスを見る。
「おまえなぁ……」
セルティスは、ごめんと、ホークにとびっきりの笑顔をして誤魔化した。
「でも、ホークがいてくれたから、落ち着いた」
ホークは、セルティスに言われてしまい、言葉が出なかった。
一緒にいてくれたから落ち着いたと言われたら、誰だって嬉しい。
シャロルは、軽くセルティスの頭を叩いた。
「なに、ケロッとしちゃって。ホークが面倒見てくれてたんだから感謝しなさいよ」
一度、間を置いてからニヤリと笑う。
「ホークも嬉しそうにしてたしね」
セルティスは、眉をピクリとさせる。
「えっ?」
急に恥ずかしくなったセルティスは、ホークから目を逸らす。
顔が熱くなっているのを感じる。
キーファーは、セルティスとホーク、そして、シャロルとのやりとりを見つつ、警戒していた。
「何があるか、わからねぇから、気をつけろ」
キーファーの言葉で、全員が気を引き締める。
セルティスたちは、ダリ島をゆっくりと歩き始めた。
まだ、四天王の手下がいるかもしれないし、もう、ダリ島を全滅させていない可能性もある。
人間以外の動物はいないのだろうか。鳥の声やウサギなどの小動物の声も聞こえない。
それはそれで異様な島だ。人間がいなくても、島には人間以外の生物はいてもおかしくない。
セルティスに緊張感が走った。ゆっくりと警戒しながら、歩いていく。
「いなければいいけど……」
誰にも聞こえない声で呟く。
セルティスの緊張は、もちろん、どこからか襲ってくるかもしれないという緊張ともうひとつあった。
どちらかというと、もうひとつのほうが緊張している。
それは、今はまだ出てきていないし、これだけ静かなので、生物がいるかどうかもわからない。
ただ、出てきたらどうしようとも思う。
そのもうひとつの緊張は、セルティスの苦手な昆虫類だ。
ホークは、セルティスの態度で察したのか、苦笑いしている。
「セルティス、昆虫類がいたらどうしようと思ってんだろ?」
ズバリ、当てられたセルティスはドキッとした。
「う、うるさいよ」
と、誤魔化すが、もう、全員、セルティスの昆虫類が苦手ということは知っている。
だから、全員が吹き出してしまった。
そんなことがありつつ、セルティスたちは、ダリ島を探索した。
「なんだ……?」
ヴィンセントは、ジュンの視線に気がついて声をかける。
とはいえ、運転しているので気配で視線を感じた。
ジュンは、ヴィンセントに声をかけられて、ギョッとしてしまった。
「へっ……? あぁ、その……」
よくわからないけれど、ヴィンセントから目をそらしてしまう。
何故、こんなことをしたのか、わからない。
ドキドキも止まっていなかった。
ヴィンセントは、ジュンの胸がドキドキしていることには気づかなかった。
だが、何か変だということはわかっていたようで、淡々と、でも、どこか優しさもある声で訊いた。
「体調が悪いのか?」
ジュンは慌てて言葉を返す。
「体調は大丈夫だよ。心配してくれるんだ」
その言葉にヴィンセントは、冷静に答える。
「仲間なら、心配するのは当たり前だろ」
何十時間乗っていたのだろうか、ようやくダリ島に辿り着いた。
「ここがダリ島……?」
キーファーは周囲を見回した。
シャロルがキーファーの呟きに頷く。
「ピピが言うにはここね。それに地図も、この辺りを指してるわ」
船酔いから、いつの間にか復活したセルティスは、あまりの静けさに嫌な予感がする。
「静かだな」
一斉にセルティスに注目した。
セルティス以外の全員が突然のセルティスの声に驚く。
つい、さっきまでホークの膝でダウンしていたはずのセルティスがケロッとしている。
「大丈夫なのか?」
ヴィンセントは呆れている。
セルティスは何事もなかったかのように、笑顔を見せた。
その笑顔を見て、ホークは目を細くしてセルティスを見る。
「おまえなぁ……」
セルティスは、ごめんと、ホークにとびっきりの笑顔をして誤魔化した。
「でも、ホークがいてくれたから、落ち着いた」
ホークは、セルティスに言われてしまい、言葉が出なかった。
一緒にいてくれたから落ち着いたと言われたら、誰だって嬉しい。
シャロルは、軽くセルティスの頭を叩いた。
「なに、ケロッとしちゃって。ホークが面倒見てくれてたんだから感謝しなさいよ」
一度、間を置いてからニヤリと笑う。
「ホークも嬉しそうにしてたしね」
セルティスは、眉をピクリとさせる。
「えっ?」
急に恥ずかしくなったセルティスは、ホークから目を逸らす。
顔が熱くなっているのを感じる。
キーファーは、セルティスとホーク、そして、シャロルとのやりとりを見つつ、警戒していた。
「何があるか、わからねぇから、気をつけろ」
キーファーの言葉で、全員が気を引き締める。
セルティスたちは、ダリ島をゆっくりと歩き始めた。
まだ、四天王の手下がいるかもしれないし、もう、ダリ島を全滅させていない可能性もある。
人間以外の動物はいないのだろうか。鳥の声やウサギなどの小動物の声も聞こえない。
それはそれで異様な島だ。人間がいなくても、島には人間以外の生物はいてもおかしくない。
セルティスに緊張感が走った。ゆっくりと警戒しながら、歩いていく。
「いなければいいけど……」
誰にも聞こえない声で呟く。
セルティスの緊張は、もちろん、どこからか襲ってくるかもしれないという緊張ともうひとつあった。
どちらかというと、もうひとつのほうが緊張している。
それは、今はまだ出てきていないし、これだけ静かなので、生物がいるかどうかもわからない。
ただ、出てきたらどうしようとも思う。
そのもうひとつの緊張は、セルティスの苦手な昆虫類だ。
ホークは、セルティスの態度で察したのか、苦笑いしている。
「セルティス、昆虫類がいたらどうしようと思ってんだろ?」
ズバリ、当てられたセルティスはドキッとした。
「う、うるさいよ」
と、誤魔化すが、もう、全員、セルティスの昆虫類が苦手ということは知っている。
だから、全員が吹き出してしまった。
そんなことがありつつ、セルティスたちは、ダリ島を探索した。
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