女剣士セルティス

12章 離島 ダリ島

第188話 荒れた港

　ガイナー港に到着したセルティスたちは、船を借りたいのだが、人がいなくて借りることができない状態だった。

　黙って船を借りていくわけにもいかないので、人を探していた。

「どこにも人がいないな」

　セルティスは困り果てた。

　人がいないのは何故なのか。

　漁に出ているのであれば、船は動くはずだ。

　だが、船が出ている様子もない。

　セルティスが人を探しているとき、ホークは船に乗って様子を見ていた。

　すると、足に何かが当たる。

「ん？」

　ホークは足元を見てみると、そこには人骨があった。

「うわっ……」

　ホークが人骨を発見した頃、ヴィンセントが目の当たりにしたのは、地面に散らばっていた骨だ。バラバラになっている。

「骨……」

　ヴィンセントの見た骨は、人の骨かもわからない。

　近くでは、キーファーも周辺を探っていたら、骨を見つけた。

　この骨は人間の形を残したままだ。

「既にこの港は襲われていたってことか」

　キーファーは、さらに周りの様子を探る。

「きゃあっ！」

　男性陣が骨を発見して、周辺を警戒していると、シャロルの声がする。

　すぐ近くにいたキーファーが駆け寄ると、骨がシャロルに向かって歩いてくる。

「骨が動いた！？」

　キーファーは、シャロルを背中で隠し、骨から近づかないようにした。

　だが、その骨はすぐに崩れ落ちてバラバラになる。

「キーファー、ありがとう」

　シャロルの声がしたかと思うと、キーファーは背中に温かさを感じた。

「どうした？」

　シャロルがキーファの背中に頭を預けていた。

「ごめん、怖かったんだけど、崩れたら安心しちゃって」

　キーファーは、振り返って背中をポンポンと軽く叩いた。

「そうか。確かに怖いわな。でも、俺らがいるから大丈夫だ」

　シャロルに優しく声をかけてやる。

　キーファーとシャロルがやりとりしていると、今度はジュンが悲鳴を上げた。

「うわっ！」

　ジュンが見たものは首だ。

　男性の首だろうか。

　胴体や足、手の骨はない。

「うっ……」

　首はひとつではない。

　ジュンはいくつもの首を目の当たりにして、気分が悪くなる。

「大丈夫か？」

　ヴィンセントが優しくジュンの背中を撫でる。

「大丈夫。ありがと」

　ジュンはヴィンセントの腕に触れると、感謝する。

　大丈夫だという合図だ。

　骨に人の首。

　ガイナー港は襲われ、人の命が奪われたと予測できる。

　そして、それは今も続いている。

　首が証拠だ。

　まだ、人の顔のまま残っている。

　全員が警戒をしながら、ガイナー港の様子を探っていると、セルティスが倒れている少年を発見する。

「大丈夫か？」

　小さな声で声をかける。

　反応がない。2回目は少し、声を大きくして話しかけた。

　やはり無反応だ。

　3回目は強めの口調で呼ぶ。

　応答がない。

　セルティスは少年の顔に耳を近づける。

　微かに音が漏れている。

　ということは、まだ、間に合うかもしれない。

　セルティスは咄嗟に心臓マッサージを試みた。

「1、2、3、4……」

　口に出しながら、心臓マッサージの回数を数えていく。

「15」

　15回行って、一度、心臓マッサージを止める。

　すると、少年は息を吹き返した。

「……！？」

　少年は目を開いて、辺りを見回した。

　セルティスたちを見て、身体を震わせていた。

　とてつもない恐怖を味わったことがセルティスにも伝わってきた。

　少年の身に一体何があったのだろうか。