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11章 ノワール王国

第185話 決意表明

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 王子と王妃、シャロルも病院から無事にノワール王国に戻ってきて、セルティスたちは宿屋で休んでいた。

 セルティスは、お風呂に入って疲れを癒している。

「はぁー、気持ちいい」

 湯船でのんびりとした時間を過ごす。

 何故か、久しぶりにお風呂に入った気がした。

 心地よい気分になって、眠たくなってきた。

 お風呂から上がって、眠気が最高潮に達した。

 おぼつかない歩き方で、部屋に戻ろうとしたとき、声をかけられる。

「セルティス」

 この声はホークだ。

「あっ……ホーク……」

 バタッ

「えっ?」

 ホークは慌てて、セルティスを抱きとめた。

 スースー

 セルティスから寝息が聞こえてきた。

「……すぐ寝るなぁ……何十時間寝ればいいんだ……」

 ホークは呆れて部屋まで連れて行き、セルティスをベッドに寝かせる。

 ふんわりとシャンプーの香りが漂ってきた。

 ホークはなんだか、ドキッとしてしまった。

 普段は、男っぽいところもあるけれど、意外と女子力があるのだ。

 数時間後、セルティスが目を覚ますと……

「ん? わっ……なんで……??」

 セルティスは慌てて、ベッドから出ようとして……

 ドサッー

 セルティスは、派手にベッドから転げ落ちた。

「いっててて……」

 ホークは呆れた顔で、セルティスに手を差し伸べた。

 セルティスは、素直にホークの手を握って起こしてもらった。

「えっと……ありがとう、あたし、どうしてこうなったんだっけ?」

 状況を思い出そうとした。

「お風呂入って、心地よくなって眠くなりながら、部屋に戻ろうとしたら、ホークの声がして……」

 ホークが、セルティスの話の続きを口にした。

「そのまま寝ちゃったから、部屋まで運んだ」

 そう言われて、セルティスは頭を抱えた。

「また、やっちゃった……ごめん」

 ホークは、ニヤニヤした。

「いいよ、謝らなくても。俺は、可愛いセルティスが見られて嬉しいし」

 セルティスは、ホークの言葉に固まってしまった。

「何、言ってんだ、バカ」

 胸が熱くなることを感じる。

 ホークは優しく頭をポンポンとする。

 突然、背後から声がする。

「仲がいいんだな、本当に」

 声の主はジュンだ。

 ジュンは、セルティスとホークのやりとりを聞いて、思わず笑ってしまった。

「ジュン」

「ジュン」

 セルティスとホークは同時に名前を呼んだ。

 ジュンは同時に名前を言われて、ぎょっとした。

「凄い気が合うね」

 セルティスとホークは、顔を見合わせた。

 顔を見合わせることも気が合う証拠だ。

「あぁ、王子と王妃が感謝してたよ。よろしくって。それで、シャロルがみんなに話したいことがあるって。それにあたしも話があるから、セルティスたちにも聞いてほしい」

 ジュンは複雑な顔をして言った。

 でも、決意表明をしたような、そんな感じもした。






 シャロルの家に集まった、セルティスたちは緊張な面持ちだった。

 でも、シャロルとジュンの顔は穏やかだった。

「呼び出してごめんなさい。でも、改めて承諾してもらいたくて」

 シャロルが口を開く。

「私は、騎士としてこのノワール王国を守らないといけない。ただ、ノワール王国を守るためには、四天王と戦うことだと思ってる。だから、ノワール王国は他の騎士に任せて、セルティスたちと一緒に行きたいの。王子と王妃にも認めてもらったわ」


 ジュンも続いた。

「あたしも、セルティスたちと一緒に行って、四天王と戦う。だから、改めて一緒に行ってもいいかな?」

 セルティスは笑顔を見せた。

「いいよ、一緒に行こう。仲間が増えるのは嬉しい」

「俺はセルティスに賛成するよ」

 ホークも承諾する。

キーファーやヴィンセントも承諾した。

「ありがとう」

「ありがとう」

 ジュンとシャロルは同時に答えた。

 そして、真剣な顔で、シャロルがヴィンセントを見る。

「お願いがあるの」

 シャロルは、ヴィンセントをじっと見つめる。

「なんだ……?」

 ヴィンセントは、真剣な眼差しで見られて戸惑っていたが、冷静を装って聞く。

 シャロルは、ゆっくりとした口調でジュンを見る。

「ジュンを守ってやって欲しいの。ヴィンセントに少しずつ心を開いていっているみたいだし、ジュンも表情が穏やかになってきたというか、笑顔も見せるようになっていっているから、ヴィンセントのおかげだと思うの。だから、これからも守ってくれたら……」

 ヴィンセントは頷いた。

 言葉はなくても、必ず守るという意志が感じられる。

 ただ、不器用だから、言葉足らずのところもあるかもしれないが、きっと、言葉は足りなくても通じ合うことはできる。

 シャロルは笑顔を向けて、ヴィンセントに感謝した。

 ジュンは、シャロルとヴィンセントが話しているところを不思議そうに見ていた。

 シャロルはジュンのほうに駆け寄ってきて、背中をポンっと叩く。

「ジュン、ジュンは誰にも甘えずに頑張ってきたから、おもいっきりヴィンセントに甘えなさい」

 ジュンは、ヴィンセントの名前が出て、動揺してしまった。

「な……何言ってるんだよっ……あたしは……」

 シャロルはクスッと笑った。

「何、動揺してるの? ヴィンセントが気になっている証拠ね」

 ジュンはドキッとした。

 ヴィンセントの名前が出ただけで、動揺して、ドキドキしてしまうとは、自分の心に何があったのだろう。

 今はまだ、ヴィンセントに対する想いにも気がつくことはできなかった。
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