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11章 ノワール王国

第184話 強さと優しさ

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 サンは、セルティスの首を絞め、身動きがとれない状況を作った。

 セルティスは、かすかな声を出しながら、苦しそうにしている。

 どうにか、サンから逃れようと模索している。

 そんなセルティスを見て、サンはフーッと首筋に息を吹きかけた。

 セルティスは首をサンから遠ざけようとした。

 サンがセルティスを誘おうとしていることは明らかだ。

 その度に、セルティスは逃げようとするが、その度に首を強く絞められて、苦しさに耐えていた。

 ホークは、苦しんで、嫌がっているセルティスを黙って見ているわけにはいかないと、拳を握りしめた。

「セルティスから……離れろぉぉぉぉ!!」

 光のように速く、ビューッと音を立てながら、サンの懐へと入り込んで、ダガーで腹を刺す。

 同時に氷がサンの身体を一時的に凍らせた。

 サンは、あまりの速さに、ホークの動きについていけず、セルティスを離す。

 身体はよろめいて、耐えることができず、顔面を地面に打ちつけた。

 サンから離れられたセルティスは、咳き込みながら、肩で呼吸をしていた。

「あ、ありがと……」

 ホークを見つめて、引きつった顔で口角を上げた。

 ホークは、セルティスの背中を撫でて、落ち着かせると、サンの方に向き直った。

 サンを睨みつけて長い息を吐く。

 その瞬間、サンは高く跳躍した。

 ホークの背中にサンの足が直撃しようとしていた。

 飛び膝蹴りだ。

「ホーク、後ろ!!」

 セルティスは、サンの動きに気が付いて、急いでホークを抱いて、転がりながら、サンの足から逃れた。

「大丈夫か?」

 セルティスは、ホークを離しながら、心配そうに見つめた。

 ホークは、躊躇なく、少々乱暴に抱きしめられ、転がりながらも庇ってくれたセルティスに驚いた。

「あぁ……」

 セルティスは、戸惑っているホークの顔を覗き込んだ。

「どうしたんだ?」

「おわっ」

 ホークは、顔が熱くなるのを感じた。

 急にセルティスの顔が近くにあって、動揺してしまった。

「セルティス……本当に強くなったんだなぁ」

 ホークはボソッと呟いた。

 サンは舌打ちをして、セルティスの顎を狙って拳を突き出した。

「死ねぇぇぇぇぇ!!!!」

 セルティスは、ラグナロクを振り下ろした。

 炎がサンを燃やし尽くす。

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 サンはその場に崩れ落ちた。

 セルティスは、サンのほうにゆっくりと歩み寄った。

「もう、終わりだ」

 静かに呟くと、サンが、セルティスの足を掴もうとした。

 だが、力尽きて掴むことはできなかった。

 その様子を見たセルティスは、そっと頭に触れる。

「もっと、人間らしい感情があれば、良かったな」

 その声は優しかった。

 大量にいたモンスターも、全て消えていった。

 同時に背後から声がする。

「無事だったか」

 キーファーが声をかけた。

 キーファーだけでなく、ヴィンセント、ジュンも無事だったことに、セルティスは安堵する。

「よかった、皆、無事だったんだな」

 ジュンは、セルティスにお辞儀をした。

「ありがとう、セルティス」

 セルティスは、ジュンの肩をポンッと叩いた。

「ジュンは大切な仲間だから。困っていたら助けるよ」

 穏やかな声でゆっくりとした口調だった。

 ジュンは、笑顔を見せたが、すぐに真剣な顔をして、今までの経過を報告する。

「シャロルは、王子と王妃を病院に連れて行っている。だから、シャロルも無事だよ」

 セルティスは、笑顔で頷いた。
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