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11章 ノワール王国

第177話 戦いの開幕

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 ジュンは、ヴィンセントを立たせると、ライドを睨みつけた。

「あたしにできることは、今、ヴィンセントをサポートすること!」

 ジュンはブレードソードを振り下ろす。

 ライドは腕で、ブレードソードを受け止めると、お腹にキックをする。

 そのキックは強く、ジュンは簡単に吹き飛んだ。

「うっ……」

 ジュンは背中を地面に叩きつけられる。

「ジュン!」

 ヴィンセントは、素早くジュンのほうへと駆け寄ろうとした。

 そのときだった。

「王子! 王妃! ダメです!! 戻って!!!!」

 シャロルが叫んだ。

「何があったのだ?」

 王子が様子を見にやってきた。

 その瞬間、レンが王子に襲い掛かろうと、大地を揺るがせた。

 シャロルは、無意識のうちに飛び出して、王子を押し倒して庇った。

「シャロル……!?」

「きゃぁぁぁ!!!!!」

 シャロルはそのまま倒れてしまう。

 キーファーは、シャロルの脈を調べる。

 脈がない。

 急いで、心臓マッサージをする。

「まさか……」

 ジュンはキーファーの行動に、シャロルの死がよぎった。

「きゃぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 王妃の叫び声がする。

 ジュンが、王妃を助けようとしたときは、もう遅かった。

 王妃は血をまき散らしながら、意識を失う。

「王妃……!!!!!!」

 ジュンと王子の声が重なる。

 王子は王妃を殺されたことで、怒りが爆発して、レンとライドに向かって、飛び出した。

「やめろ!!」

 ヴィンセントが叫んで、ブラッドソードを振る。

 同時にジュンが動いた。

 光がレンとライドの胸を鋭く貫いた。

 だが、ライドは、ただ、ジュンに攻撃されるだけではなかった。

 ジュンの目の前で、王子が倒れている。

「王子!!」

 悲しむ間もなく、ライドが、ジュンの首元を狙って蹴りを入れる。

 ヴィンセントがブラッドソードで雷を起こして、ライドを感電させた。

「ジュン、大丈夫か? 逃げてもいいんだぞ」

 ヴィンセントは、ジュンのことを心配して言ってくれたことだが、ジュンは首を横に振った。

「あたし、決めたんだ。あたしに今できることをするって。だから逃げないよ」

 ジュンの目を見て、強い意志が感じられ、ヴィンセントは頷いた。

「ただし、危なくなったら、心が不安になったら、すぐに逃げろ。逃げることは悪いことではない」

「うん。ありがとう」

 ジュンはライドに向けて、ブレードソードを構えた。

 キーファーは、シャロルの脈をもう一度、確認する。

 シャロルの脈が動いていない。

 その様子を見て、ジュンは迷いがなくなったかのように、ライドにブレードソードを振り下ろした。

「許さない!!!!!」

 ブレードソードから光を放つ。

 一瞬、ライドの目は見えなくなる。その隙にライドを斬る。

「な……」

 ライドは膝をついた。

「なに、やってんだよ、ライド」

 レンは、いとも簡単にダメージを食らったライドに呆れていた。

 ライドを助けることもなく、興味なさそうに、キーファーに視線を向けた。

「1対1の勝負だな!」

 キーファーは眉をピクリと動かした。

 最初から、レンは1対1がしたかったのだろうか。

 レンは速い動きで、何発もパンチを打ってくる。

 キーファーは、サッと躱していくが、大地が揺れて、バランスを崩した。

 大地が、キーファーを飲み込んだ。

「ぐっ……」

 キーファーは片膝をついて、胸を押さえた。

「1対1じゃ難しいかなぁ」

 レンは、キーファーを見下している。

「ふざけんなよ」

 キーファーは、ラプターソードを勢いよく振って、水流を作り出した。

 レンの横腹を斬ると、水流はレンを流し込んだ。

「おっと……!」

 レンは躱そうと、身を捻ったが、水の勢いは凄まじく、完全に逃れることはできなかったようだ。

 呼吸が早くなっている。また、血が滴り落ちた。

 キーファーは、ラプターソードをレンに向けた。

「自分に危機が迫ると、急に余裕がなくなるんだよな。知ってたか? そういう奴ほど、弱いんだぜ」

 キーファーに言われて、レンはカチンときて、拳を地面に突きつけた。

 地割れを起こして、キーファーを大地に沈める。

「うわっ」

 キーファーは、体を丸めて呼吸を整えた。

 結構なダメージですぐには動けない。

 レンは、キーファーの様子を見て、勝ったと確信したか、更にとどめを刺そうと、キーファーに拳を振り上げた。

 そのときだった。

 強風がレンを吹き飛ばした。

「……シャロル……!?」

 ジュンの目の前には、命を落としたと思われたシャロルが立っている。

「なによ、そんなに簡単にやられないわよ。どれだけ、訓練受けていると思っているのよ。私は騎士よ」

 シャロルは、そう言って、クレイモアを構えた。
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