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11章 ノワール王国

第175話 ノワール王国を守れ!

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 ジュンは、大きな決断をした。

今まで人を信じてこなかったが、セルティスたちは信じてみようと思った。

 そして、セルティスたちと一緒に同行することにして、もっと、セルティスたちのことを知ろうと決めたのだった。

 といっても、すぐにコミュニケーションがとれない。

 なんとか話したほうが良いのかと考えていると、セルティスが笑顔を向けた。

「無理に話そうとしなくてもいいよ。あたしたちもそうだし」

 ジュンはセルティスの言葉にホッとした様子だった。

 ホッとした瞬間に力が抜けたような感覚を覚えた。

「大丈夫か?」

 セルティスが優しく声をかけてくれる。

「なんだか、ホッとしたら力が抜けちゃって」

 ジュンは苦笑いする。

「わかるよ。不思議だけど、この仲間といると安心感があるんだよね」

 セルティスは仲間たちに視線を向ける。

「こんな感覚、初めてだった。こんなに心がホッとすることってあるんだって」

 ジュンがセルティスに打ち解けている様子を見て、嬉しくなったのは、ヴィンセントだった。

「やっぱり、ジュンのこと気になるんだな」

 キーファーはヴィンセントをツンツンする。

「からかってるのか?」

 ヴィンセントは、横目でキーファーをじっと見ている。

「久しぶりだろ、嬉しそうな顔するのは」

キーファーは、ニヤニヤしている。

「大切にしてやれ。あの子のこと理解できるのは、似た境遇にあるお前だけだぞ」

「……」

 ヴィンセントは、キーファーに言われて、目を丸くした。

「放っておけないからな、守るよ」

 数秒、呆然としていたが、キーファーに聞こえるか、聞こえないかの声で、ボソッと呟いた。

 穏やかな時間が流れていたが、突然、ノワール王国は、慌ただしくなった。

 何事かと、セルティスたちも駆けつけると、モンスターが大量にいた。

 猪の姿をしたものや狼の姿、鳥の姿と様々なモンスターが人々を襲っている。

「城を守れ! 城の中には……」

 兵士たちが血を流しながら、モンスターと必死で戦っている。

「女剣士さん、応援頼む」

 兵士がセルティスに声をかける。

 セルティスは頷くと、ラグナロクを構えた。

 それを合図にホーク、ヴィンセント、キーファー、ジュンも戦う姿勢を示した。

 ジュンは、ブレードソードを振って、モンスターを斬ると同時に光を放った。

 その光でモンスターは、一瞬、目が見えなくなり、その隙に再び、ブレードソードを振り下ろした。

 それから、次々とジュンはモンスターをブレードソートで斬り倒していく。

 ヴィンセントは、ジュンのことを気にしつつ、モンスターに、淡々とブラッドソードを叩きつけている。

 雷を落としながら、一瞬にして何十匹と攻撃する。

 キーファーも、ラプターソードで水を起こし、まとめて数十匹のモンスターを落とす。

 ホークは、1匹ずつ、ダガーで氷の短剣を作って刺していく。

 氷が凍るほど冷たく、モンスターは硬直する。

 セルティスは、ラグナロクで炎を起こして、モンスターを燃やしていく。

 駆け抜けながら、モンスターを倒す。

 兵士たちも、セルティスたちに負けず、モンスターを次々と撃破した。

 すると、ひとりの兵士が叫ぶ。

「シャロルが危ない!! シャロルは城の中だ!! ひとりで王子と王妃を守ろうと入ってしまった!!」

 ジュンがすぐに反応する。

「シャロルが中にいるのか!?」

「あぁ、助けに行きたいが、これだけのモンスターがいると、城の中に行けない」

「なら、あたしが行く!!」

 ジュンはモンスターを素早く押しのけて、城へと向かう。

 それを見たヴィンセントは、ジュンに声をかけた。

「バカッ! ひとりで行くな!!」

 ヴィンセントの声を無視して、ジュンは城の中へと入っていく。

 セルティスは、状況を素早く判断した。

「ヴィンセント! こっちはどうにかするから、キーファーと一緒に、ジュンとシャロルを頼む!!」

「おう!」

「わかった」

 キーファーとヴィンセントは、セルティスの言うように、ジュンとシャロルを助けにお城の中へと入っていく。

「ホーク、一緒にここを守るよ!!」

 セルティスは、ホークに強い口調で言った。

 呼吸を身につけてから、セルティスはメンタルが安定しているようだ。

 心強い。

 ホークは、セルティスのメンタルに驚いたが、頼りになってかっこよく見えた。

「わかった。この場所だけじゃない。兵士もセルティスも必ず守る」

 ホークは言って、ダガーをモンスターに突き刺した。




 ヴィンセント、キーファー、ジュンは、城の中に入って、モンスターを倒しながら進んでいる。

 ジュンは、シャロルが心配で仕方がなかった。

 心配しつつ、襲ってくるモンスターを打ち破っていきながら、周囲を見回す。

「シャロル……無事ていてくれ……」

 ボソッとジュンは呟く。

 その声は、ヴィンセントとキーファーには聞こえていないはずだが、ヴィンセントの言葉で、ジュンはドキッとした。

「シャロルのこと、心配なんだな」

「えっ……?」

 ジュンは、一瞬、動きが止まってしまった。

 その隙にモンスターがジュンを狙った。

 ヴィンセントは、瞬時にジュンを抱えた。

「ちょ……」

 ジュンを抱えたと同時に、キーファーが、モンスターをラプターソードで斬っていた。

「ボーっとするな」

 ヴィンセントは、すぐに、ジュンを離す。

「あっ……ありがと……」

 ジュンは恥ずかしくなった。

 助けられたときに、頭がヴィンセントの胸に当たり、心臓の音を聞いた。

 温かい。

 そのとき、ジュンの胸はドクン、ドクンとなっていた。

 心臓はジュンとは違って、穏やかに動いている。

 優しいだけではなくて、ヴィンセントの心は温かさもあるのだと感じて、余計に鼓動が早くなる。

 キーファーは、良い感じになっているヴィンセントとジュンを見て、喜んだ。

 ようやく、ヴィンセントにも春が来そうだ。

 今は、そんな暢気のんきなことを言っている場合ではない。

 それでも、ヴィンセントとジュンがお似合いで、このまま、幸せになってくれればと思ってしまうのだった。

 2人とも過酷な過去を背負ってきた。

 もう、辛い思いはさせたくない。

 もう、幸せになることを許してほしい。キーファーはそう思うのだった。

 ヴィンセント、キーファー、ジュンが進んでいくと、シャロルの姿があった。

 シャロルは、何百匹といるモンスターと対峙していた。

「シャロル!」

 ジュンの声に、シャロルは、長剣、クレイモアを振り下ろして、風を起こし、モンスターを吹き飛ばした。

「ジュン!」

 ジュンは、シャロルのほうに駆け寄った。

「ダメよ! ジュン!! 危ない!!」

 シャロルの声に、ジュンは振り返った。

 ジュンに、男が拳で地面を突くと、大きく揺れる。

 竜巻がジュンに向かってくる。

「ジュン!」

 シャロルは、ジュンを助けようとして飛び出そうとするが、ジュンが来る前に、既にケガを負っていた。

 そのため、思うように動けなかった。

 シャロルが動けずにいたとき、雷が男に落ちた。

 ヴィンセントがブラッドソードで、男に攻撃していたのだ。

「大丈夫だ。ジュンは俺が守ってやる」

 シャロルが心配しないように、はっきりと答える。

「あなたは、ヴィンセントだったわね。ありがとう、ジュンのことを面倒見てくれて」

 シャロルがヴィンセントに感謝の気持ちを述べる。

「チッ……邪魔が入ったか」

 男は舌打ちをする。

「誰だ?」

 ヴィンセントは男を睨みつける。

「あぁ、あんたが、ヴィンセントか。四天王から話は聞いてる。俺は、レン。で、あんたのことも聞いた。キーファーだったな」

 レンと名乗った男は、ヴィンセントに拳を突きつけた。

 ヴィンセントは、手で拳を受け止めると、背後へと回り込み、ブラッドソードを叩きつけた。

 同時にもうひとり、男の影があった。その男は、動けないシャロルを狙っている。

「シャロル!!」

 ジュンが叫んだ。

 助けに行こうと走り出すが、間に合わない。

 ダメだと思ったとき、水が男を流し込んだ。

 キーファーがシャロルを助けたのだ。

「何やってるんだよ、ライド」

 もうひとりの影は、ライドという男らしい。

 レンが呆れながら嫌みのように言った。

「おまえこそ、しくじっただろ」

 ライドはレンに言い返した。
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