173 / 239
11章 ノワール王国
第173話 過去を乗り越えよ!
しおりを挟む
セルティスたちは、シャロルの家で、ジュンの悲惨な過去を聞いて、何も言えなくなっていた。
シャロルは、一息ついてから話題を変えた。
「今日は、ここ、好きに使っていいから泊まっていって。私は、普段、お城を守らないといけないから、滅多にこの家使っていないのよ。これから、また、任務をしないといけないから」
シャロルはそう言うと、仕事へと出かけて行った。
セルティスは、シャロルを呼び止めようとしたが、その前に、シャロルは家を出てしまった。
「……ジュンのこともあるし、お言葉に甘えよう」
ホークはセルティスの肩をポンッと叩いて言った。
「そうだな……」
セルティスは嫌な予感がする。
そんなセルティスの様子に、キーファーも心配そうに声をかけた。
「どうした?」
「なんか、胸騒ぎがする。ノワール王国には、何かあるかもしれない」
セルティスが打ち明けると、ヴィンセントも頷いた。
「シャロルっていったか、何もなければいいが……俺も嫌な予感がする」
ヴィンセントも不安そうな表情をしている。
ホークは、不安そうにしているセルティスの肩をポンっと叩く。
「大丈夫だ。俺がついている。今日は休もう」
「ありがとう」
セルティスは、ホークの温もりにホッとした。
キーファーも、ヴィンセントに声をかける。
「俺は、もう休むぞ」
「あぁ……」
ヴィンセントは一言だけ答える。
「おまえ、その子のこと心配なんだな」
キーファーは、ジュンのことを見つめていることから、ヴィンセントの心に何かが芽生えたのだと感じた。
仲間がモンスター化して、殺してしまったヴィンセントにとって、状況は違うと思うが、両親を殺した罪を背負っている、ジュンの気持ちが痛いほど理解できた。
だからこそ、ジュンのことが心配になるのだ。
しばらくして、ジュンが目を覚ます。
「んっ……」
ジュンは、ゆっくりと起き上がる。
「シャロルの家……」
ジュンは周囲を見回す。
「えっ? あっ……」
ジュンは、ヴィンセントの存在に気がついて、ドタバタしてしまった。
(なんで、シャロルの家に……? 確か、名前は……ヴィンセントって……)
整理しようと心を落ち着かせた。
ヴィンセントは、壁に寄りかかって眠っていたが、ジュンの気配に目を覚ました。
「目が覚めたか」
ジュンに声をかける。
「あたしは、なんでここに……」
ジュンは、ヴィンセントに訊く。
ヴィンセントは、ここまでのことを説明する。
「あ……ありがとう、2度も助けてくれたんだ」
ジュンは呟いた。
ヴィンセントは一息ついた。
「シャロルから聞いた。辛かったな、今まで」
「えっ?」
ジュンは、急に涙が出てきた。
「なんで、そんなこと……ずっと、我慢してたのに……そうやって優しい言葉をかけられたら、我慢できなくなる」
「……罪を背負うって辛いよな。俺は大切な仲間を殺した。その罪は重い」
ヴィンセントは淡々と答えているが、重みのある言葉だった。
「ジュンと同じように、殺さなきゃ、命の危険が迫ってたし、他人に迷惑をかけて、罪のない命を奪っていくと思ったから、仲間を殺した。その罪を背負っていくのも嫌になる。でも、乗り越えていかないといけないと思う。まだ、俺も乗り越えられないけどな」
ヴィンセントは一度、深呼吸をしてから再び語った。
「あんなことがあったら、人を信じることもできない。俺も正直、人を信じられるかと言ったら、まだ、完全に人を信じられていないかもしれない。でも、俺だけじゃなくて、セルティス、ホーク、キーファーも、罪を背負っている。辛くて、しんどくて、ひとりでは抱えきれなくなることもある」
「もう……これ以上、言われたら、本当に……」
ジュンは拳を握って、泣くことを我慢していた。
「ひとりで抱えきれなくなったら、我慢しなくていい。俺たちは、ひとりで抱えきれなくなったものを仲間に受け止めてもらって、過去を乗り越えようとしている。だから、ジュンも我慢しなくていい。俺が受け止める」
ヴィンセントの言葉は、ジュンの涙腺を崩壊させた。
「なんで……? あたしを助けてくれるんだ? もういいよ……」
ジュンの目から大粒の涙が溢れていた。
「バカッ、我慢できなくな……ううぅぅぅぅぅ!!!」
ジュンは、ヴィンセントの胸を掴んで、文句を言おうとしたが、いつの間にか頭を預けて泣いていた。
ヴィンセントはどうしていいか、わからず、ただ、ひたすら、ジュンが泣き止むのを待った。
シャロルは、一息ついてから話題を変えた。
「今日は、ここ、好きに使っていいから泊まっていって。私は、普段、お城を守らないといけないから、滅多にこの家使っていないのよ。これから、また、任務をしないといけないから」
シャロルはそう言うと、仕事へと出かけて行った。
セルティスは、シャロルを呼び止めようとしたが、その前に、シャロルは家を出てしまった。
「……ジュンのこともあるし、お言葉に甘えよう」
ホークはセルティスの肩をポンッと叩いて言った。
「そうだな……」
セルティスは嫌な予感がする。
そんなセルティスの様子に、キーファーも心配そうに声をかけた。
「どうした?」
「なんか、胸騒ぎがする。ノワール王国には、何かあるかもしれない」
セルティスが打ち明けると、ヴィンセントも頷いた。
「シャロルっていったか、何もなければいいが……俺も嫌な予感がする」
ヴィンセントも不安そうな表情をしている。
ホークは、不安そうにしているセルティスの肩をポンっと叩く。
「大丈夫だ。俺がついている。今日は休もう」
「ありがとう」
セルティスは、ホークの温もりにホッとした。
キーファーも、ヴィンセントに声をかける。
「俺は、もう休むぞ」
「あぁ……」
ヴィンセントは一言だけ答える。
「おまえ、その子のこと心配なんだな」
キーファーは、ジュンのことを見つめていることから、ヴィンセントの心に何かが芽生えたのだと感じた。
仲間がモンスター化して、殺してしまったヴィンセントにとって、状況は違うと思うが、両親を殺した罪を背負っている、ジュンの気持ちが痛いほど理解できた。
だからこそ、ジュンのことが心配になるのだ。
しばらくして、ジュンが目を覚ます。
「んっ……」
ジュンは、ゆっくりと起き上がる。
「シャロルの家……」
ジュンは周囲を見回す。
「えっ? あっ……」
ジュンは、ヴィンセントの存在に気がついて、ドタバタしてしまった。
(なんで、シャロルの家に……? 確か、名前は……ヴィンセントって……)
整理しようと心を落ち着かせた。
ヴィンセントは、壁に寄りかかって眠っていたが、ジュンの気配に目を覚ました。
「目が覚めたか」
ジュンに声をかける。
「あたしは、なんでここに……」
ジュンは、ヴィンセントに訊く。
ヴィンセントは、ここまでのことを説明する。
「あ……ありがとう、2度も助けてくれたんだ」
ジュンは呟いた。
ヴィンセントは一息ついた。
「シャロルから聞いた。辛かったな、今まで」
「えっ?」
ジュンは、急に涙が出てきた。
「なんで、そんなこと……ずっと、我慢してたのに……そうやって優しい言葉をかけられたら、我慢できなくなる」
「……罪を背負うって辛いよな。俺は大切な仲間を殺した。その罪は重い」
ヴィンセントは淡々と答えているが、重みのある言葉だった。
「ジュンと同じように、殺さなきゃ、命の危険が迫ってたし、他人に迷惑をかけて、罪のない命を奪っていくと思ったから、仲間を殺した。その罪を背負っていくのも嫌になる。でも、乗り越えていかないといけないと思う。まだ、俺も乗り越えられないけどな」
ヴィンセントは一度、深呼吸をしてから再び語った。
「あんなことがあったら、人を信じることもできない。俺も正直、人を信じられるかと言ったら、まだ、完全に人を信じられていないかもしれない。でも、俺だけじゃなくて、セルティス、ホーク、キーファーも、罪を背負っている。辛くて、しんどくて、ひとりでは抱えきれなくなることもある」
「もう……これ以上、言われたら、本当に……」
ジュンは拳を握って、泣くことを我慢していた。
「ひとりで抱えきれなくなったら、我慢しなくていい。俺たちは、ひとりで抱えきれなくなったものを仲間に受け止めてもらって、過去を乗り越えようとしている。だから、ジュンも我慢しなくていい。俺が受け止める」
ヴィンセントの言葉は、ジュンの涙腺を崩壊させた。
「なんで……? あたしを助けてくれるんだ? もういいよ……」
ジュンの目から大粒の涙が溢れていた。
「バカッ、我慢できなくな……ううぅぅぅぅぅ!!!」
ジュンは、ヴィンセントの胸を掴んで、文句を言おうとしたが、いつの間にか頭を預けて泣いていた。
ヴィンセントはどうしていいか、わからず、ただ、ひたすら、ジュンが泣き止むのを待った。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
ある日、近所の少年と異世界に飛ばされて保護者になりました。
トロ猫
ファンタジー
仕事をやめ、なんとなく稼ぎながら暮らしていた白川エマ(39)は、買い物帰りに偶然道端で出会った虐待された少年と共に異世界に飛ばされてしまう。
謎の光に囲まれ、目を開けたら周りは銀世界。
「え?ここどこ?」
コスプレ外国人に急に向けられた剣に戸惑うも一緒に飛ばされた少年を守ろうと走り出すと、ズボンが踝まで落ちてしまう。
――え? どうして
カクヨムにて先行しております。
『濁』なる俺は『清』なる幼馴染と決別する
はにわ
ファンタジー
主人公ゴウキは幼馴染である女勇者クレアのパーティーに属する前衛の拳闘士である。
スラムで育ち喧嘩に明け暮れていたゴウキに声をかけ、特待生として学校に通わせてくれたクレアに恩を感じ、ゴウキは苛烈な戦闘塗れの勇者パーティーに加入して日々活躍していた。
だがクレアは人の良い両親に育てられた人間を疑うことを知らずに育った脳内お花畑の女の子。
そんな彼女のパーティーにはエリート神官で腹黒のリフト、クレアと同じくゴウキと幼馴染の聖女ミリアと、剣聖マリスというリーダーと気持ちを同じくするお人よしの聖人ばかりが揃う。
勇者パーティーの聖人達は普段の立ち振る舞いもさることながら、戦いにおいても「美しい」と言わしめるスマートな戦いぶりに周囲は彼らを国の誇りだと称える。
そんなパーティーでゴウキ一人だけ・・・人を疑い、荒っぽい言動、額にある大きな古傷、『拳鬼』と呼ばれるほどの荒々しく泥臭い戦闘スタイル・・・そんな異色な彼が浮いていた。
周囲からも『清』の中の『濁』だと彼のパーティー在籍を疑問視する声も多い。
素直過ぎる勇者パーティーの面々にゴウキは捻くれ者とカテゴライズされ、パーティーと意見を違えることが多く、衝突を繰り返すが常となっていた。
しかしゴウキはゴウキなりに救世の道を歩めることに誇りを持っており、パーティーを離れようとは思っていなかった。
そんなある日、ゴウキは勇者パーティーをいつの間にか追放処分とされていた。失意の底に沈むゴウキだったが、『濁』なる存在と認知されていると思っていたはずの彼には思いの外人望があることに気付く。
『濁』の存在である自分にも『濁』なりの救世の道があることに気付き、ゴウキは勇者パーティーと決別して己の道を歩み始めるが、流れに流れいつの間にか『マフィア』を率いるようになってしまい、立場の違いから勇者と争うように・・・
一方、人を疑うことのないクレア達は防波堤となっていたゴウキがいなくなったことで、悪意ある者達の食い物にされ弱体化しつつあった。
完 独身貴族を謳歌したい男爵令嬢は、女嫌い公爵さまと結婚する。
水鳥楓椛
恋愛
男爵令嬢オードリー・アイリーンはある日父が負った借金により、大好きな宝石だけでは食べていけなくなってしまった。そんな時、オードリーの前に現れたのは女嫌いと有名な公爵エドワード・アーデルハイトだった。愛する家族を借金苦から逃すため、オードリーは悪魔に嫁ぐ。結婚の先に待ち受けるのは不幸か幸せか。少なくとも、オードリーは自己中心的なエドワードが大嫌いだった………。
イラストは友人のしーなさんに描いていただきました!!
テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。
人質から始まった凡庸で優しい王子の英雄譚
咲良喜玖
ファンタジー
アーリア戦記から抜粋。
帝国歴515年。サナリア歴3年。
新国家サナリア王国は、超大国ガルナズン帝国の使者からの宣告により、国家存亡の危機に陥る。
アーリア大陸を二分している超大国との戦いは、全滅覚悟の死の戦争である。
だからこそ、サナリア王アハトは、帝国に従属することを決めるのだが。
当然それだけで交渉が終わるわけがなく、従属した証を示せとの命令が下された。
命令の中身。
それは、二人の王子の内のどちらかを選べとの事だった。
出来たばかりの国を守るために、サナリア王が判断した人物。
それが第一王子である【フュン・メイダルフィア】だった。
フュンは弟に比べて能力が低く、武芸や勉学が出来ない。
彼の良さをあげるとしたら、ただ人に優しいだけ。
そんな人物では、国を背負うことが出来ないだろうと、彼は帝国の人質となってしまったのだ。
しかし、この人質がきっかけとなり、長らく続いているアーリア大陸の戦乱の歴史が変わっていく。
西のイーナミア王国。東のガルナズン帝国。
アーリア大陸の歴史を支える二つの巨大国家を揺るがす英雄が誕生することになるのだ。
偉大なる人質。フュンの物語が今始まる。
他サイトにも書いています。
こちらでは、出来るだけシンプルにしていますので、章分けも簡易にして、解説をしているあとがきもありません。
小説だけを読める形にしています。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
イジメられっ子は悪役令嬢( ; ; )イジメっ子はヒロイン∑(゚Д゚)じゃあ仕方がないっ!性格が悪くても(⌒▽⌒)
音無砂月
ファンタジー
公爵令嬢として生まれたレイラ・カーティスには前世の記憶がある。
それは自分がとある人物を中心にイジメられていた暗黒時代。
加えて生まれ変わった世界は従妹が好きだった乙女ゲームと同じ世界。
しかも自分は悪役令嬢で前世で私をイジメていた女はヒロインとして生まれ変わっていた。
そりゃないよ、神様。・°°・(>_<)・°°・。
*内容の中に顔文字や絵文字が入っているので苦手な方はご遠慮ください。
尚、その件に関する苦情は一切受け付けませんので予めご了承ください。
ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~
にくなまず
ファンタジー
今年から冒険者生活を開始した主人公で【ソロ】と言う適正のノア(15才)。
その適正の為、戦闘・日々の行動を基本的に1人で行わなければなりません。
そこで元上級冒険者の両親と猛特訓を行い、チート級の戦闘力と数々のスキルを持つ事になります。
『悠々自適にぶらり旅』
を目指す″つもり″の彼でしたが、開始早々から波乱に満ちた冒険者生活が待っていました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる