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11章 ノワール王国

第171話 ジュン・アール

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 モンスターを全て倒し、落ち着いたところで、女性がセルティスたちに尋ねる。

「あなたたちは、どうしてここへ?」

 女性の問いにセルティスが答える。

「あたしたちは、四天王を止めるために情報を集めている」

「四天王か……」

 女性は四天王という言葉を聞いた瞬間、表情が曇った。

「……何があったんだ……?」

 表情を曇らせた女性を見て、キーファーが問う。

 息を整えてから、女性は小声で言った。

「四天王のことで、困らせてしまって、本当にごめんなさい」

 ホークの眉がピクリと動く。

「四天王の元を造ったのは、あたしの両親なんだ。だから……」

 女性は言いかけて、黙り込んでしまった。

 セルティスは、女性が何か覚悟を決めているように感じた。

「あたしは許されると思っていない。恨まれても仕方ないと思っている。殺すなら殺してもいい」

 女性が思いがけないことを言い出して、セルティスたちは驚愕した。

「おまえは関係ないだろ」

 ヴィンセントがボソッと呟いた。

「あるよ。あたしの両親が四天王を造るのに関わってたんだ。その責任はとらないといけない」

 女性は強い口調で、興奮した様子だった。

「とりあえず、落ち着こうか。あなた、名前は?」

 セルティスは、女性を落ち着かせて、簡単に自分と仲間の紹介をした。

「あたしはジュン・アール」

 ジュンと名乗った女性は大きく息を吐いた。

 落ち着いたのを待ってから、セルティスは改めて訊いた。

「ジュンは、何故、ここに?」

「あたしは……罪滅ぼしのためだよ」

 ジュンは拳を震わせた。

「両親が四天王を造ったことに関わったことをジュンが背負っているのか?」

 ホークは目を丸くして聞く。ジュンは頷く。

「自分の両親が迷惑かけてきたんだ。許されることではない。だから、四天王を止めて、人々を救って罪を償うしかないんだよ、あたしには」

 セルティスは、それだけではなく、他に何かがあると感じた。

「正直、四天王が復活するとは思わなかったよ。でも、それは、一度、両親が四天王を造り、その創り方を残してしまったから、また、嫌気がさした心のない人たちが復活させることができてしまったんだ。罪は重いよ」

 ジュンは頭を抱えて、大きなため息をついた。

「……なんか、無理してないか?」

 キーファーは、ジュンの様子を見て違和感があった。

「無理なんかしてないよ」

 ジュンはそう言ったが、明らかに無理をしているというか、もっと辛いものを背負っている。

「もっと重いもの背負っているんじゃないのか?」

 ヴィンセントは淡々と言った。

 口調は淡々としているけれど、ヴィンセントなりにジュンのことを心配しているようだ。

「……もういいだろ。四天王を造った両親の娘だ。どんなに人を救っても、あたしは悪者扱いだ。殺すなら殺せよ!」

 ジュンは叫ぶ。

 何があったのかわからないが、鋭い形相で、セルティスたちを睨みつけた。

 セルティスが、ジュンに優しく声をかけようとしたときだった。

 ヴィンセントは、拳を震わせているジュンの腕を掴んだ。

 ヴィンセントのその行動に、キーファーは驚いた。

 ずっと見てきたが、こんな行動を起こすヴィンセントを見たことがなかった。

 ヴィンセントは、ジュンの腕を離すと静かに口を開く。

「本当は、ずっと孤独感があったんじゃないのか? 人を救って罪を償うだけじゃ、埋まらない大きなものをひとりで抱えられなくなってる」

 ヴィンセントの言っていることは、ごもっともで、セルティスたちも感じていたことだ。

 ジュンは沈黙した。

 図星だ。

 何故、セルティスたちに見抜かれたのか、考え込んだ。

 でも、セルティスたちに優しくされて、気持ちがモヤモヤしている。

「なんで、セルティスたちは、あたしに構う?」

 ホークは一息をついてから、笑顔を見せる。

「困っている人がいたら、助ける。それだけだよ」

 ジュンは目を丸くした。

「四天王を造り出した両親の娘と聞いても、あんたたちは、何とも思わないのか?」

 セルティスはジュンに聞かれて、逆に聞き返した。

「なんで? ジュンは悪いことしてないよね? だったら、あたしたちは、何とも思わないよ」

ジュンの言葉が重く感じる。何を抱えているのだろうか。

 そうならば、助けたいとセルティスは強く思った。

 ジュンは、急に溜まっていたものが溢れてくるのを感じる。

(どういうことだろう……急に胸が……)

 涙が出てきて、力も抜けてしまって、身体がよろめいた。

 ヴィンセントが咄嗟にジュンの身体を受け止めた。

「えっ?」

 ジュンは受け止められた感覚があった。

 でも、意識を失ってしまった。
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