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11章 ノワール王国

第168話 山小屋での休息

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 セルティス、ホーク、キーファー、ヴィンセントは、山道を歩いていた。

かなり険しい道だ。

 鍛えているとはいえ、さすがにきつい。

「もう、暗くなってきたな。もう、今日は休むか?」

 ホークが声をかける。

「そうだな、これ以上、暗くなると山道は危険だしな」

 ホークの意見に賛成したのは、キーファーだった。

「じゃあ、休むところ探……うわっ」

 と、言いかけて、セルティスは足を滑らせて、身体がよろめく。

「おっとと……」

 ホークは、すかさず、セルティスの身体を支えた。

「あ…ありがとう……」

 セルティスは、恥ずかしくなって、顔を伏せた。

 たまにドジるところも、また、セルティスだ。

 ホークからすれば、セルティスがドジることは、慣れっこになっているので、何とも思わないが。

「疲れてるな……セルティス」

 ホークに言われて、セルティスはムスッとした顔をした。

 その顔は幼い子供のような顔だ。

「……お子様だな。その顔」

 ホークは、セルティスの顔に吹き出してしまった。

 その様子を黙って見ていたヴィンセントは、キョトンとしている。

 やりとりが、あまりに子供っぽい。

 セルティスもホークも子供っぽいところが似ている。

 それでも、セルティスとホークの仲の良さを見ていると、幸せな気分になった。

 キーファーは珍しく穏やかな顔をしているヴィンセントを見て、驚いている。

「ん? 珍しいな、ヴィンセントがそんな顔するのは」

 キーファーに言われて、ヴィンセントは、少しムッとしていたが、ため息をついた。

「あの2人、見てると楽しそうでさ。あの頃を思い出す」

「そうか」

 キーファーから聞くことはなかったが、海賊達と一緒に暮らしていた時のことだと理解した。

「前を向かないとな、俺も」

 ヴィンセントはボソッと呟く。

「きっと、おまえにも幸せがやってくる」

 キーファーはヴィンセントの背を見ながら言った。

 その声はヴィンセントに届いているかはわからない。

 数分後、休めそうなところを見つけた。

 ここには、小屋がある。

 山を登ってくる人たちの休む場として設置している。

 季節は暖かくなっているが、山の気温は、まだまだ低い。

「寒いか?」

 身体が震えているセルティスに、ホークが優しく声をかけた。

「少し寒い」

 セルティスはそう言うと、ストーブをつけようとしたとき、ホークがどこからか毛布を取り出してきて、セルティスにかけた。

「ありがとう、ホーク」

 その優しさに、セルティスは心もほっこりした。

 それから、ホークがストーブをつけて、セルティス達は暖をとった。

 セルティス達はしばらく黙っていた。

 疲労もあったのだろう。

 ストーブの音だけが響いている。

 そのうち、寝息が聞こえてきた。

「ん?」

 ホーク、キーファー、ヴィンセントが一斉にセルティスに注目した。

「寝るの早いな」

 キーファーは、あっという間に眠ってしまったセルティスを見て、呆気にとられていた。

「相当、疲れているのか……」

 これにはヴィンセントも呆れていた。

 まるで、赤ちゃんのように寝るのが早い。

「それにしても、寝顔が子供だな……」

 キーファーは、寝顔を見ていると、普段のセルティスとは思えなかった。

 普段と寝顔のギャップがありすぎる。

 バサッ

 セルティスは倒れた。

「ちょっと待て……セルティス……!」

 ホークの膝に倒れて眠っている。

 ホークもさすがに困り果てている。

「風邪ひくって」

 ホークはセルティスを起こさないように、風邪をひかないように、きちんと寝かせた。

 すると、セルティスは怖い夢でも見ているのか、ホークの手を強く握った。

「……?」

「一緒に寝るしかないな」

 キーファーが笑いながら、からかった。

「キーファー、からかってるだろ?」

 ホークはキーファーを睨みつけた。

「いいじゃねぇか、愛されてるんだからさ」

 キーファーはニヤリとした。

「……」

 ホークは何も言えなくなってしまった。

(まぁ、いつものことか)

 ホークはセルティスの寝顔を見ながら、頭を撫でる。

 こうして、その日の夜は山小屋で過ごした。
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