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11章 ノワール王国

第167話 四天王の苛立ち

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 アッシュは拳を壁に叩きつける。

 その衝撃はかなり強く、壁に穴が開いた。

 イライラしていることは明らかだ。

「案外、あの女剣士たちを侮れないな。どいつもこいつもあの女剣士たちにられている!」

 そんなアッシュを宥めようとしているのは、ベアトリクスだ。

「まぁまぁ。落ち着いて。でも、あの女剣士たちは、強くなってきていることは確かね。あの女剣士は、突然、力が増すことがあるみたいだしね」

 それを聞いた、エバンは鋭い目で睨みつけた。

「もし、あの女剣士を殺すなら、心を壊さないとダメだろうな。どうやって心を壊すか」

「とにかく、向こうが強くなっているって言うなら、俺たちだってもっと強くならないとな」

 そう言って、楽しそうに指ボキボキ鳴らしたのはゼビルだ。

「おまえ、やけに楽しそうだな」

 アッシュは、ゼビルを見て呆れている。

「どのくらい強いのか、勝負してみたいからな」

 ゼビルは思いっきり足を振り上げた。

「血の気が多いねぇ、さて、ノワール王国でも侵略するか。ここを侵略すれば、この大陸は全て制覇ね」

 ベアトリクスはニヤリと笑っている。

 「それなら、私が向かいます」

 律儀にお辞儀をして現れたのは男だ。美少年だ。

「サン、頼んだぞ」

 エバンが冷たく言い放つ。

「はい」

 サンと呼ばれた男は、再び深々とお辞儀をする。

 すると、すぐに消えていった。

 サンを見届けたアッシュは、フーッと息を吐く。少しは落ち着いたようだ。

「あの女剣士たちが邪魔しなきゃいいけどな。最近、あの女剣士たちに邪魔されるからな」

 ゼビルは拳を握り締めた。

「そうだな、あの女剣士たちを殺さない限り、どこまでも邪魔されるな」

 エバンも同感した。

 四天王は、女剣士たち、つまり、セルティス、ホーク、キーファー、ヴィンセントの4人に対しては、苛立ちを感じている。

 四天王がどんなに強い刺客を送り出しても倒されてしまうからだ。

 それは同時に四天王自身も弱いと言っているようなものだ。

 それが、四天王にとって悔しいのだ。

 ベアトリクスは苛立っている、ゼビルやエバンを宥める。

「まぁ、いいじゃない。役立たずだったら、殺せばいいだけの話よ。そして、もっと強いモンスターを造ればいい」

 ニヤニヤとしているベアトリクスを、アッシュは目を細めて見ている。

「ベアトリクスが一番、怖いぞ」

「そうかしら。さて、これから、どう進化させていくかな」

 ベアトリクスはそう言うと、視線を別のところに向けた。

 ベアトリクスの向けた視線の先にあるのは、大きなカプセルに入った人間たち。

 この人間たちは、実際に生きていた人間。

 生きていた人間を殺しては、回収して研究材料に使用し、人間型モンスターを造ろうとしているのだ。

 その中には兵士や騎士もいる。

 「もう少し強化しないと、あの女剣士たちに負ける。サンは、ちゃんと、強化できたんだろうな? それでも、勝てなかったら、サンも失敗作になるぞ」

 エバンが聞くと、ベアトリクスは、わからないとジェスチャーで合図した。

「試してみないとわからないってことか」

 ゼビルは、どこか楽しげに言った。

「まぁ、そこはねぇ、実戦で試してみないと」

 アッシュは頭の後ろで手を組んで、つまらなそうに言っている。

 四天王たちは、世界を侵略しようと、頭を悩ませ、イライラしていた。
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