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10章 極寒の町 コールドクール

第158話 忍び寄る影

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 冷たい風が頬を撫でていく。

「まだ、生きてたんだね」

 そう言って、落胆したのはイネスだ。

 死んだと思っていただけに、悔しそうな表情を見せた。

「意外としぶといよね」

 背後から、ハリーが声をかける。

 イネスは風を感じながら、心を落ち着かせる。

「まぁ、そのほうが私も面白いけどね」

 イネスがじっと見つめる先には、セルティスの姿がある。

「今度こそ、ちゃんと仕留めないとね」

 イネスは、セルティスを指さして、不敵に笑った。

「そうだなぁ、今度は完全に殺す」

 ハリーはにっこりと笑顔を向けている。

 その笑顔は、かえって恐ろしさを感じさせる。

「あんた、残酷だねぇ」

 ハリーの言葉に、イネスは心をワクワクさせている。

「イネスも残酷でしょ」

 ハリーが言い返すと、イネスは両手を広げて、わからないという合図をした。

「さぁ、どうかしらね」

 イネスとハリーは甲高い声で笑いながら、楽しそうにしている。

 イネスとハリーは人を殺すだけに造られた人間。

 人を殺すことにしか興味がなく、人を殺すことに楽しみと喜びとワクワク感を見出している。

 普通では、考えられないことだ。

「まぁ、もっと遊ばせてもらおう」

 ハリーは一瞬で姿を消す。

「ハリー、どこに行くの?」

 イネスはハリーの後を追った。

 ハリーは村の様子を見ている。

 この村を襲うことを考えたが、強力な魔石の力でバリアされている。

 なかなか打ち破れそうにない。

「せっかく、殺せるチャンスなのに。入れないじゃん」

 舌打ちするハリーに、イネスはポンポンと肩を叩いた。

「この魔石の力、壊すことできるわよ。ほら、あれ見て」

 イネスが指した方向を見ると、そこには魔石が浮かび上がっている。

「あの魔石を破壊すれば、バリアを破ることができると思うわ」

「なるほど。あの魔石は簡単に破壊できるのかな。強い力を感じる」

 ハリーは考え込んだ。

「やれるわよ」

 イネスは軽く言うと、雷を起こした。

 その雷は、魔石に直撃する。

 魔石にヒビが入る。

「ほらね、もう、この魔石は意志を持たないからね。持ち主がいないし」

 イネスはもう一度、雷を起こすと、魔石はあっという間に壊れる。

「バリアが崩れた」

 イネスはにっこりと笑う。

「脆いね、魔石も」

 ハリーは本当に壊せるのかと考えていたことが、馬鹿みたいに思えた。

「じゃあ、全員殺す」

 ハリーはニヤッとして、村へと侵入する。

「まずは誰を狙おうかなぁ」

 人々を指でなぞりながら、楽しそうに眺めている。

「片っ端からやっていくのも良いかな」

 ハリーは地面に拳を叩きつけると、氷が人々を凍らせる。

 あっという間に人々は動けなくなってしまう。

「バリアが崩されたー!」

「逃げろ!!」

 村の人々の悲痛な声が響いてくる。

 その声を聞いて、平然としているのは、イネスだ。

「逃げようたって、逃げられないわよ」

 イネスは、短剣を軽く振り、雷を人々に落としていく。

「きゃぁぁぁ!!!!」

「うわぁぁぁぁ!!!!」

 村の人たちは叫びながら、大慌てで逃げようとしていた。

 しかし、イネスとハリーがやりたい放題して、人々に恐怖を覚えさせ、不安にさせた。

「なんで!? バリアが効かないの?」

「バリアがなんで壊れたの?」

 そんなことを口々に言いながら、人々は助けを求めた。

「誰か助けて!!」
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