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9章 騎士の村
第137話 頼れる男
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ホークは、ボールドに向かっていった。
向かってくるホークに対して、ボールドは、長刀で水を起こし、ホークを斬ろうとした。
ホークは、ボールドの長刀をダガーで止める。
剣と剣の重なり合う音が響く。
しばらく、剣と剣がぶつかり合う音だけがして、ホークとボールドの姿が見えないほどの速さで攻防戦を繰り広げている。
セルティスは呆然として見ている。
(こんなに速かったか……)
ホークの動きを目で追えなかった。
ホークが自分の知らないところで、相当なトレーニングを積んでいたことに、何故だか感動してしまい、涙が出てしまった。
「あれ……? なんで……??」
セルティスは涙を拭いながら、ホークを見つめる。
ホークは、ボールドの長刀をダガーで受け止めながら、肘で鳩尾をパンチする。
体勢を崩したボールドを押し倒して、ダガーで斜めに肩から胸にかけて、斬った。
氷がボールドの身体を冷やしていく。
まるで冷凍庫の中に入っているかのように冷たい。
ボールドは、ホークの攻撃を読むことができずに、躱すための準備もできなかった。
「何故なんだ! たいして強くもない奴がっ!!」
ボールドは叫びながら、長刀を振り下ろした。
長刀は水の剣となって、ホークを飲み込もうとした。
ホークは、身を捻って長刀から逃れるが、完全ではなかった。
頬を掠める。
ピッと紙で指を切ったような痛みが頬に走る。
「おまえは、大切なことを忘れている」
ダガーをボールドの腿の付け根に突き刺すと、冷たく言い放った。
「大切なこと?」
ボールドは跪きながら、ホークを睨みつけている。
「おまえは自信過剰になりすぎている。だからこそ、油断して隙が見えた。それに、おまえには人を敬う気持ちがない。人を敬う気持ちがなければ、お前についていこうとする者も慕う者も出てこない。ひとり、疎外されて、誰からも相手にされない。そうなれば、おまえは辛い思いをする」
ホークは更にダガーで、ボールドの脇腹を斬っていく。
「結局、おまえは自己満足で、罪のない人たちの命を奪っているだけなんだよ。おかしいよな。簡単に人の命を奪っておいて、自分が命の危機にさらされると、命を助けてくれってさ。命を奪われた人たちだって、死にたくなかったはずだ。もっと、生きて楽しい未来を期待していたかもしれない。どんな思いで死んでいったのか、気づくのが遅いんだよ!! 自分が命の危機に直面したときだけ助けてくれだなんてふざけた話だよなぁ!!!!!」
ホークは、とどめをさそうとダガーを振り上げた。
ボールドは振り上げられたダガーを避ける余裕はない。
かなりの衝撃によって、身体中が故障していて動くこともままならない状態だ。覚悟を決めたときだった。
腹を刺す寸前で、ホークはダガーを止めた。
ホークはダガーを引っこめると、呼吸を整える。
これには、ボールドも覚悟を決めていただけに驚愕した。
「とどめをささないのか?」
ボールドが聴くと、ホークは静かに答える。
「本当なら、俺はお前を殺したいほど許せない。だけどな、許せないといって、人の命を奪ったりはしない。許せないからって人の命を奪って、自分だけ命の危機に陥った時、命を助けてほしいなんて、心の弱い奴がやることだよ」
「なんだと……?」
ボールドは、ホークの言葉にムカッとして、反抗する。
弱いという言葉に強く反応している。
「だって、そうだろ。心が弱いから、人を弱らせて自分が優位に立って、強さを見せようとするんだろ。人を傷つけることで、自分が強いって思いこんでさ。本当に強い人ってのは、人のせいにしない。自分の弱さもきちんと受け止められる。自分より劣っていようが、自分より上だろうが、敬うことができる。弱き者を助けることができる。セルティスのようにな」
ボールドは、動くこともできないのにも関わらず、ホークの言ったことに納得ができず、攻撃を仕掛けようとした。
「やめなよ、もう。人の命を奪おうと考えている時点で、おまえは弱いんだよ」
ホークはボールドを睨みつける。
その時だった。
銃声が響き渡る。
その銃声と同時に、ボールドの倒れる気配がする。
「おいっ!」
ホークは、ボールドに声をかける。
しかし、ボールドの意識はなく、心臓の音も聞こえない。
「誰だ!?」
ホークは周囲を見回す。
微かな気配がして、ダガーを投げつける。
ダガーは、壁を突き刺しただけだった。
ゴォォォォォォォォ
急に大きな音がする。
洞窟が大きく揺れた。
「えっ? 何?」
セルティスが周囲を見回す。
「崩れる!」
ホークがセルティスのほうに歩み寄り、セルティスの手を取って走る。
何が起こったのか、考えている暇はなかった。
早く洞窟から脱出しないと。
崩れる洞窟を見ながら、クスクスと笑っている者がいる。
その者は四天王のひとり、ベアトリクスだ。
「さて、無事に脱出できるかな」
綺麗な顔立ちをしているが、その顔は冷ややかだった。
「ったく、ボールドも役立たずね」
ベアトリクスは銃を放り投げた。
この銃はボールドを撃った銃だ。
最後、ボールドのとどめをさしたのは、ベアトリクスだ。
ただ、セルティスたちは、ベアトリクスがここで見ていたことを知らない。
セルティスとホークはひたすら、走った。
「ここから出られる!」
セルティスが出口を見つけて、ホークと一緒に出口に向かおうとしたとき、崩れた土砂のせいで出口が塞がれてしまう。
「塞がれた……」
セルティスが唖然としていると、ホークはすぐに別の出口を探す。ホークは出口を見つけたが、外は海だ。
「セルティス、ここから出るしかない。濡れるけど、我慢してな」
ホークはそう言うと、セルティスを抱きしめながら、海へと飛び込んだ。
ホークの有無を言わせない大胆な行動にセルティスは、驚愕した。
「ぷはっ」
セルティスとホークは、海から顔を出す。
「セルティス、大丈夫か?」
「えっ、あぁ、あたしは大丈夫だよ」
セルティスは、ホークを見るなり目をぱちくりさせている。
こんなにホークって頼れる男だったのか。
かっこいい。惚れ直してしまった。
いや、今まで以上に惚れてしまった。
セルティスの視線を感じて、今度はホークが目をぱちくりさせる。
「どうした……? どこか痛むのか?」
「かっこいいよ、ホーク。強くなったんだね。また惚れた」
セルティスは顔を真っ赤に染めている。
「バカだな、大事な女を守るためなら、男は強くなるんだよ」
ホークは、ギュッとセルティスを抱きしめながら、岸へと向かって泳ぐ。
何時間くらい泳いだのかは、わからないが、ようやく岸へとたどり着いたセルティスとホークは、びしょ濡れのまま、休めるところを探す。
このままだと、身体が冷えてしまう。
服がびしょ濡れのため、セルティスの身体のラインがくっきりと見えてしまう。
相変わらず、セルティスは細身だ。
トレーニングをしているから、筋肉はあるのだが、そうは思えないほどの細さだ。
ホークはセルティスの身体を見て、このまま襲いたくなるほど、魅了されてしまう。
「……ホーク、あまりジロジロ見ないでよ」
セルティスは、じっと見られて恥ずかしくなった。
「悪い。えっと……まず、休めるところを……」
ホークは苦笑いしながら、話を逸らす。
1時間くらい歩いて、ようやく休めるところを見つけた。
ホテルで受付を済ますと、すぐに部屋に向かう。
いくら、今は暑い季節だからとはいえ、びしょ濡れの状態なら、身体は冷えていく。
まずは、部屋に備えてあった浴衣に着替えて、服を乾かす。
ホークはセルティスの浴衣姿を見て、女性らしさを感じた。
「きれいだな、浴衣姿も似合ってる」
自然と声に出た。
「ありがと」
セルティスは嬉しくて、とびっきりのスマイルを見せた。
「おう……」
ホークは、笑顔を見せられてドキッとした。
これは反則だ。
綺麗でかわいくて、笑顔が素敵なのだから。
向かってくるホークに対して、ボールドは、長刀で水を起こし、ホークを斬ろうとした。
ホークは、ボールドの長刀をダガーで止める。
剣と剣の重なり合う音が響く。
しばらく、剣と剣がぶつかり合う音だけがして、ホークとボールドの姿が見えないほどの速さで攻防戦を繰り広げている。
セルティスは呆然として見ている。
(こんなに速かったか……)
ホークの動きを目で追えなかった。
ホークが自分の知らないところで、相当なトレーニングを積んでいたことに、何故だか感動してしまい、涙が出てしまった。
「あれ……? なんで……??」
セルティスは涙を拭いながら、ホークを見つめる。
ホークは、ボールドの長刀をダガーで受け止めながら、肘で鳩尾をパンチする。
体勢を崩したボールドを押し倒して、ダガーで斜めに肩から胸にかけて、斬った。
氷がボールドの身体を冷やしていく。
まるで冷凍庫の中に入っているかのように冷たい。
ボールドは、ホークの攻撃を読むことができずに、躱すための準備もできなかった。
「何故なんだ! たいして強くもない奴がっ!!」
ボールドは叫びながら、長刀を振り下ろした。
長刀は水の剣となって、ホークを飲み込もうとした。
ホークは、身を捻って長刀から逃れるが、完全ではなかった。
頬を掠める。
ピッと紙で指を切ったような痛みが頬に走る。
「おまえは、大切なことを忘れている」
ダガーをボールドの腿の付け根に突き刺すと、冷たく言い放った。
「大切なこと?」
ボールドは跪きながら、ホークを睨みつけている。
「おまえは自信過剰になりすぎている。だからこそ、油断して隙が見えた。それに、おまえには人を敬う気持ちがない。人を敬う気持ちがなければ、お前についていこうとする者も慕う者も出てこない。ひとり、疎外されて、誰からも相手にされない。そうなれば、おまえは辛い思いをする」
ホークは更にダガーで、ボールドの脇腹を斬っていく。
「結局、おまえは自己満足で、罪のない人たちの命を奪っているだけなんだよ。おかしいよな。簡単に人の命を奪っておいて、自分が命の危機にさらされると、命を助けてくれってさ。命を奪われた人たちだって、死にたくなかったはずだ。もっと、生きて楽しい未来を期待していたかもしれない。どんな思いで死んでいったのか、気づくのが遅いんだよ!! 自分が命の危機に直面したときだけ助けてくれだなんてふざけた話だよなぁ!!!!!」
ホークは、とどめをさそうとダガーを振り上げた。
ボールドは振り上げられたダガーを避ける余裕はない。
かなりの衝撃によって、身体中が故障していて動くこともままならない状態だ。覚悟を決めたときだった。
腹を刺す寸前で、ホークはダガーを止めた。
ホークはダガーを引っこめると、呼吸を整える。
これには、ボールドも覚悟を決めていただけに驚愕した。
「とどめをささないのか?」
ボールドが聴くと、ホークは静かに答える。
「本当なら、俺はお前を殺したいほど許せない。だけどな、許せないといって、人の命を奪ったりはしない。許せないからって人の命を奪って、自分だけ命の危機に陥った時、命を助けてほしいなんて、心の弱い奴がやることだよ」
「なんだと……?」
ボールドは、ホークの言葉にムカッとして、反抗する。
弱いという言葉に強く反応している。
「だって、そうだろ。心が弱いから、人を弱らせて自分が優位に立って、強さを見せようとするんだろ。人を傷つけることで、自分が強いって思いこんでさ。本当に強い人ってのは、人のせいにしない。自分の弱さもきちんと受け止められる。自分より劣っていようが、自分より上だろうが、敬うことができる。弱き者を助けることができる。セルティスのようにな」
ボールドは、動くこともできないのにも関わらず、ホークの言ったことに納得ができず、攻撃を仕掛けようとした。
「やめなよ、もう。人の命を奪おうと考えている時点で、おまえは弱いんだよ」
ホークはボールドを睨みつける。
その時だった。
銃声が響き渡る。
その銃声と同時に、ボールドの倒れる気配がする。
「おいっ!」
ホークは、ボールドに声をかける。
しかし、ボールドの意識はなく、心臓の音も聞こえない。
「誰だ!?」
ホークは周囲を見回す。
微かな気配がして、ダガーを投げつける。
ダガーは、壁を突き刺しただけだった。
ゴォォォォォォォォ
急に大きな音がする。
洞窟が大きく揺れた。
「えっ? 何?」
セルティスが周囲を見回す。
「崩れる!」
ホークがセルティスのほうに歩み寄り、セルティスの手を取って走る。
何が起こったのか、考えている暇はなかった。
早く洞窟から脱出しないと。
崩れる洞窟を見ながら、クスクスと笑っている者がいる。
その者は四天王のひとり、ベアトリクスだ。
「さて、無事に脱出できるかな」
綺麗な顔立ちをしているが、その顔は冷ややかだった。
「ったく、ボールドも役立たずね」
ベアトリクスは銃を放り投げた。
この銃はボールドを撃った銃だ。
最後、ボールドのとどめをさしたのは、ベアトリクスだ。
ただ、セルティスたちは、ベアトリクスがここで見ていたことを知らない。
セルティスとホークはひたすら、走った。
「ここから出られる!」
セルティスが出口を見つけて、ホークと一緒に出口に向かおうとしたとき、崩れた土砂のせいで出口が塞がれてしまう。
「塞がれた……」
セルティスが唖然としていると、ホークはすぐに別の出口を探す。ホークは出口を見つけたが、外は海だ。
「セルティス、ここから出るしかない。濡れるけど、我慢してな」
ホークはそう言うと、セルティスを抱きしめながら、海へと飛び込んだ。
ホークの有無を言わせない大胆な行動にセルティスは、驚愕した。
「ぷはっ」
セルティスとホークは、海から顔を出す。
「セルティス、大丈夫か?」
「えっ、あぁ、あたしは大丈夫だよ」
セルティスは、ホークを見るなり目をぱちくりさせている。
こんなにホークって頼れる男だったのか。
かっこいい。惚れ直してしまった。
いや、今まで以上に惚れてしまった。
セルティスの視線を感じて、今度はホークが目をぱちくりさせる。
「どうした……? どこか痛むのか?」
「かっこいいよ、ホーク。強くなったんだね。また惚れた」
セルティスは顔を真っ赤に染めている。
「バカだな、大事な女を守るためなら、男は強くなるんだよ」
ホークは、ギュッとセルティスを抱きしめながら、岸へと向かって泳ぐ。
何時間くらい泳いだのかは、わからないが、ようやく岸へとたどり着いたセルティスとホークは、びしょ濡れのまま、休めるところを探す。
このままだと、身体が冷えてしまう。
服がびしょ濡れのため、セルティスの身体のラインがくっきりと見えてしまう。
相変わらず、セルティスは細身だ。
トレーニングをしているから、筋肉はあるのだが、そうは思えないほどの細さだ。
ホークはセルティスの身体を見て、このまま襲いたくなるほど、魅了されてしまう。
「……ホーク、あまりジロジロ見ないでよ」
セルティスは、じっと見られて恥ずかしくなった。
「悪い。えっと……まず、休めるところを……」
ホークは苦笑いしながら、話を逸らす。
1時間くらい歩いて、ようやく休めるところを見つけた。
ホテルで受付を済ますと、すぐに部屋に向かう。
いくら、今は暑い季節だからとはいえ、びしょ濡れの状態なら、身体は冷えていく。
まずは、部屋に備えてあった浴衣に着替えて、服を乾かす。
ホークはセルティスの浴衣姿を見て、女性らしさを感じた。
「きれいだな、浴衣姿も似合ってる」
自然と声に出た。
「ありがと」
セルティスは嬉しくて、とびっきりのスマイルを見せた。
「おう……」
ホークは、笑顔を見せられてドキッとした。
これは反則だ。
綺麗でかわいくて、笑顔が素敵なのだから。
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