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9章 騎士の村
第132話 幸せな時間
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ホークとアンディが頭に疑問符を浮かべていることを気にせずに、セルティスは紙風船を両手で持って、肩幅に足を開いて、ウェストを捻っていく。
「?」
ホークとアンディは、セルティスが紙風船を持って、ウェストを捻るというトレーニングを見ても、全く意味がわからなかった。
「なぁ、それってどういうトレーニングなんだ?」
ホークが尋ねると、セルティスはトレーニングをやめて、説明する。
「体幹の使い方、身体の使い方を確認するトレーニング。紙風船を持っているのは、手の無駄な力を抜くため。無駄に力が入れば、紙風船は潰れるってこと。脱力トレーニングともいえる。基本的に力を入れていいのは、お腹だけ。紙風船を持っていると目安になる」
「へぇ……」
ホークは、呆然と見つめている。
グシャッ
「あぁ、やっちゃった。無駄な力が入っちゃったかな」
セルティスは、ひとりでブツブツ言いながら、紙風船でトレーニングしている。
ホークは、セルティスに倣ってやってみることにした。
紙風船が潰れないようにする。
簡単だろうと思っていたが、意外にもできなくて、紙風船を潰してしまった。
「難しい」
ホークのトレーニングを見ていた、セルティスはクスッと笑う。
「ほらな、なかなか難しいんだよ。脱力するって」
「確かに」
ホークは再度やってみる。
グシャッ
「あれ? そんなに力んでるもんなのか」
ホークは、紙風船をまたしても潰してしまう。
「あたしも、きちんと脱力できていない。コツは、手指と膝に力を入れないこと。これがマスターできると、動きが軽くなって、スムーズになる」
セルティスも再度、紙風船を使ってトレーニングする。
しばらく、紙風船のトレーニングをして、慣れてきたのか、ホークは紙風船を潰さずに、ウェストを左右に捻ることができるようになった。
「あっ、なるほど。感覚がわかってきた」
ホークは感覚もわかるようになって感動した。
「脱力できるようになると、相手の力を利用することもできるようになるんだ」
セルティスはそう言って、トレーニングを続ける。
脱力トレーニングとプラスアルファで体幹を鍛えられるのが、紙風船を使ったトレーニング。
意外とトレーニングをする上で、1番大事なのがこの2つだということ。
セルティスがこんなことを知っているとは、ホークは驚いた。
トレーニングを終えて、休憩をしている時に、ホークは訊いてみた。
「セルティス、あのトレーニング、どこで知ったんだ?」
セルティスは優しく答える。
「私が剣士になった頃から、ずっと言われていたんだ。昔の仲間に。脱力しろって。その時は意味がわからなかったから、自己流で脱力っていう感覚を確かめてた。でも、さっぱりわからなくて、本で調べた」
「そうなんだ。脱力か」
ホークはニヤッと笑う。
「1番、脱力できる方法あるぜ。とろけてしまうくらい脱力できるぞ」
「えっ?」
セルティスは、目をぱちくりさせている。
ホークは突然、後ろからセルティスを抱きしめた。
「あう?!」
セルティスは言葉にならない声をあげている。
ホークは、セルティスの顎を自分の方に向けて、唇を重ねた。
「ンンッ」
セルティスは素直に受け入れる。
「なっ、これなら脱力できるだろ?」
ホークはニヤリとしている。
「もう、何言ってんだよ、バカ」
セルティスは顔を真っ赤にして、ポンポンとホークの胸を叩いた。
「本当のことじゃん」
「ったくー!」
セルティスは、そう言いながらも、笑っている。
ほんの一瞬の時間かもしれないが、幸せだった。
セルティスとホークは、昼過ぎまで寝ていたため、あっという間に1日が過ぎてしまい、既に真っ暗になっていた。
たまには、何もない日もあったほうがいい。
ずっと、戦いばかりだと気も沈んでしまう。
今日、止まるところを確保し、夕食をしに飲食店を探す。
ふと、ホークは気がついた。セルティスは、プレゼントしたネックレスチェーンをずっと身につけている。
嬉しい気分だ。
セルティスは、ホークの手を握った。
「セルティス?」
ホークはセルティスに目を向ける。
「いつもありがとう。あたし、いつも助けられてる。それに、大切なことを教えてもらった」
「俺もセルティスから大事なこと教えてもらったよ。ありがとう」
「えっ?」
セルティスは、目を見開いた。
「そんな驚かなくても」
ホークは、驚いたセルティスに思わず、笑ってしまった。
「セルティスがいなかったら、きっと、俺は、ずっと、大切なものを奪った奴らを憎んで、何も考えずに殺そうとしていたかもしれない」
ホークは、真剣な顔をしている。
「だけど、セルティスに出会って、考え方が変わった。どんなに大切なものを奪った奴らでも許そうと思えるようになった」
セルティスは、ホークの言葉に涙が出てきた。
「よかった。ホークの弱い面も見せてくれて、嬉しい。もっと見せてくれていいんだよ。ホークが受け止めてくれたように、あたしも受け止めるから」
「何、泣いてるんだよ。泣き虫だなぁ」
ホークは笑いながら、セルティスの背中を撫でる。
「ありがとな」
ホークは、耳元で感謝した。
ホークの温もりが、セルティスには心地よかった。
「セルティス、笑顔もたくさんは増えて、俺は嬉しいよ」
ホークは、セルティスを胸に引き寄せた。
「えへへっ」
セルティスは笑顔を褒められて、涙を流しながら、とびっきりの笑みを見せた。
「泣いてるのか、笑っているのか、どっちなんだ?」
ホークは冗談混じりに言った。
「?」
ホークとアンディは、セルティスが紙風船を持って、ウェストを捻るというトレーニングを見ても、全く意味がわからなかった。
「なぁ、それってどういうトレーニングなんだ?」
ホークが尋ねると、セルティスはトレーニングをやめて、説明する。
「体幹の使い方、身体の使い方を確認するトレーニング。紙風船を持っているのは、手の無駄な力を抜くため。無駄に力が入れば、紙風船は潰れるってこと。脱力トレーニングともいえる。基本的に力を入れていいのは、お腹だけ。紙風船を持っていると目安になる」
「へぇ……」
ホークは、呆然と見つめている。
グシャッ
「あぁ、やっちゃった。無駄な力が入っちゃったかな」
セルティスは、ひとりでブツブツ言いながら、紙風船でトレーニングしている。
ホークは、セルティスに倣ってやってみることにした。
紙風船が潰れないようにする。
簡単だろうと思っていたが、意外にもできなくて、紙風船を潰してしまった。
「難しい」
ホークのトレーニングを見ていた、セルティスはクスッと笑う。
「ほらな、なかなか難しいんだよ。脱力するって」
「確かに」
ホークは再度やってみる。
グシャッ
「あれ? そんなに力んでるもんなのか」
ホークは、紙風船をまたしても潰してしまう。
「あたしも、きちんと脱力できていない。コツは、手指と膝に力を入れないこと。これがマスターできると、動きが軽くなって、スムーズになる」
セルティスも再度、紙風船を使ってトレーニングする。
しばらく、紙風船のトレーニングをして、慣れてきたのか、ホークは紙風船を潰さずに、ウェストを左右に捻ることができるようになった。
「あっ、なるほど。感覚がわかってきた」
ホークは感覚もわかるようになって感動した。
「脱力できるようになると、相手の力を利用することもできるようになるんだ」
セルティスはそう言って、トレーニングを続ける。
脱力トレーニングとプラスアルファで体幹を鍛えられるのが、紙風船を使ったトレーニング。
意外とトレーニングをする上で、1番大事なのがこの2つだということ。
セルティスがこんなことを知っているとは、ホークは驚いた。
トレーニングを終えて、休憩をしている時に、ホークは訊いてみた。
「セルティス、あのトレーニング、どこで知ったんだ?」
セルティスは優しく答える。
「私が剣士になった頃から、ずっと言われていたんだ。昔の仲間に。脱力しろって。その時は意味がわからなかったから、自己流で脱力っていう感覚を確かめてた。でも、さっぱりわからなくて、本で調べた」
「そうなんだ。脱力か」
ホークはニヤッと笑う。
「1番、脱力できる方法あるぜ。とろけてしまうくらい脱力できるぞ」
「えっ?」
セルティスは、目をぱちくりさせている。
ホークは突然、後ろからセルティスを抱きしめた。
「あう?!」
セルティスは言葉にならない声をあげている。
ホークは、セルティスの顎を自分の方に向けて、唇を重ねた。
「ンンッ」
セルティスは素直に受け入れる。
「なっ、これなら脱力できるだろ?」
ホークはニヤリとしている。
「もう、何言ってんだよ、バカ」
セルティスは顔を真っ赤にして、ポンポンとホークの胸を叩いた。
「本当のことじゃん」
「ったくー!」
セルティスは、そう言いながらも、笑っている。
ほんの一瞬の時間かもしれないが、幸せだった。
セルティスとホークは、昼過ぎまで寝ていたため、あっという間に1日が過ぎてしまい、既に真っ暗になっていた。
たまには、何もない日もあったほうがいい。
ずっと、戦いばかりだと気も沈んでしまう。
今日、止まるところを確保し、夕食をしに飲食店を探す。
ふと、ホークは気がついた。セルティスは、プレゼントしたネックレスチェーンをずっと身につけている。
嬉しい気分だ。
セルティスは、ホークの手を握った。
「セルティス?」
ホークはセルティスに目を向ける。
「いつもありがとう。あたし、いつも助けられてる。それに、大切なことを教えてもらった」
「俺もセルティスから大事なこと教えてもらったよ。ありがとう」
「えっ?」
セルティスは、目を見開いた。
「そんな驚かなくても」
ホークは、驚いたセルティスに思わず、笑ってしまった。
「セルティスがいなかったら、きっと、俺は、ずっと、大切なものを奪った奴らを憎んで、何も考えずに殺そうとしていたかもしれない」
ホークは、真剣な顔をしている。
「だけど、セルティスに出会って、考え方が変わった。どんなに大切なものを奪った奴らでも許そうと思えるようになった」
セルティスは、ホークの言葉に涙が出てきた。
「よかった。ホークの弱い面も見せてくれて、嬉しい。もっと見せてくれていいんだよ。ホークが受け止めてくれたように、あたしも受け止めるから」
「何、泣いてるんだよ。泣き虫だなぁ」
ホークは笑いながら、セルティスの背中を撫でる。
「ありがとな」
ホークは、耳元で感謝した。
ホークの温もりが、セルティスには心地よかった。
「セルティス、笑顔もたくさんは増えて、俺は嬉しいよ」
ホークは、セルティスを胸に引き寄せた。
「えへへっ」
セルティスは笑顔を褒められて、涙を流しながら、とびっきりの笑みを見せた。
「泣いてるのか、笑っているのか、どっちなんだ?」
ホークは冗談混じりに言った。
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