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8章 刑務所のような倉庫
第120話 強さの定義
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セルティスたちは、たまに出てくるモンスターを倒しながら、4時間くらい歩いていると、ようやく倉庫らしき建物を見つけた。
「この倉庫、使ってなさそうな倉庫だな」
ホークが周囲を見回して、何もないことを確認する。
セルティスは深呼吸をして、気を引き締める。
「行こう」
セルティスは緊張しつつ、ゆっくりと倉庫の中に入っていく。
もう使われていないため、電気も通ってないようだ。
倉庫は音もなく静かだ。
不気味で恐怖を覚えたセルティスは、大きく息を吐いた。
ホークにもセルティスの恐怖が伝わってきて、そっとセルティスの手を握った。
セルティスは黙って、ホークの手を握り返す。
これが感謝の合図。
手を握ってくれるだけで恐怖が和らぐのを感じる。
この倉庫の1階には何もない。
だが、この何もないと言うことに違和感があって、周りを見ながら慎重に進んだ。
背後も気にしつつ歩を進めていくと、どこかで音がする。
カランッ
金属が落ちる音だ。
セルティスたちは、金属の落ちた音のほうに、視線を向けた。
落ちたのは、パイプだ。同時にドラキュラのような姿をしたモンスターが一斉に出てきた。
咄嗟にセルティスたちは武器を構える。
モンスターは、ざっと数えても1000はいるだろう。
誰よりも早くラプターソード2本を振り回し、水を起こして斬ったのは、キーファーだ。
キーファーの一撃で、 モンスター数十匹を一気に倒す。
「凄い数だな」
キーファーは次から次へとラプターソード2本を器用に使用し、モンスターを倒していく。
ヴィンセントもブラッドソードで雷を作ってモンスターを切り裂く。
それでも、数十匹しか倒せない。
ホークは駆け抜けていき、ダガーでモンスターを刺していく。
刺す度に氷がモンスターを固めていく。
セルティスはラグナロクでモンスターを炎で燃やす。モンスターは焼かれて倒れる。
セルティスたちが数十匹ずつ倒しても、まだ、半分もモンスターは残っている。
「少しずつ、倒していくしかないな」
ヴィンセントはため息をついた。
本来なら、さっさと雑魚のモンスターを倒したい。
しかし、これだけ数が多いと、時間がかかってしまう。
面倒だ。
少しずつだが、確実にモンスターを倒していき、何時間かかったか、ようやく、モンスターは全部消えた。
セルティスはフーッと息を吐く。ゆっくりと呼吸をして落ち着きを取り戻そうとした。
久々の強い恐怖感。
いつまでも強くなれないのかと落胆する。
そんなセルティスの思いを察したか、ホークは優しく声をかけた。
「恐怖は誰にもあるからな。恐怖感に打ち勝つから強くなれるってわけでもないぞ」
「えっ?」
セルティスは心を読まれ、驚愕して目を丸くした。
「強さってなんだと思う?」
ホークは驚くセルティスに質問を投げかけた。
「強さって、改めて考えるとわからない」
セルティスは首を傾げた。
まさか、ホークから質問されるとは思わなかった。
「だよな、強さってなんだろうな。だけど、俺が考えている強い人って、自分の弱いところもちゃんと受け入れることができて、時には自分や他人を許せる人。今の世の中、間違ったやり方で人の命を奪うことが多い。大切な人の命を奪われたら、許せないし、殺したくなるとも思う。それでも、グッと堪えて、命を奪った人のことを許して、幸せを願うことのできる人が強いんじゃないかって、俺は最近思うようになった」
セルティスは、ホークの言葉に目をぱちくりさせた。
ホークが言うとは考えもしなかったが、妙に納得する。
「それができたら、凄いな。命を奪った人の幸せを願うなんて普通できない」
セルティスは呟くと、ホークは笑顔を向けた。
「セルティスは、それ、できてるよな」
「えっ?」
今日のホークには、驚かされてばかりいるセルティス。
再び目を丸くした。
「ホークの考え方の強さで言うとそうかもな」
キーファーが話に入ってくる。
「セルティスは、いつも倒したとき、優しく話しかける。本来なら、殺しなくなるような奴でも。それはさ、今度、生まれ変わったときは、幸せになれよって言っているようなものだよ」
「そうなのか?」
ホークに言われても、全くセルティス自身はわからなかった。
「まぁ、本人は自覚ないと思うけどな」
ホークはセルティスの額をコンッと叩いた。
「何、それ」
セルティスはまるで子供のように、頬を膨らませていた。
談笑をしつつ、辺りを警戒しながら、進んでいくと、突然、セルティスの声がする。
「うわっ!」
そこには、監禁されていると思われる老若男女が、大きな牢屋に何百人と入れられている。
セルティスは、牢屋に入っている1人の男がセルティスの足を掴んだのだ。
「セルティス!」
ホークがセルティスの手を掴んで、引っ張った。
なんとか、逃れたセルティスだったが、突然、足を掴まれて怖くなった。
「ありがとう」
セルティスは、ホークの身体に密着させる。
ホークには、わかっていたから、セルティスに何も言わない。
ただ、怖さを和らげるために傍にいてやる。
キーファーは牢屋に入る人間たちを見て、呆然としている。
「これは一体……」
人間にしては異様だ。
助けて欲しいというより、セルティスたちに襲い掛かってきそうな勢い。
暴れたくて仕方がないようだ。
「いや……もう、人間じゃない。もしかしたら、モンスターになりかけている。モンスターになる寸前……」
ヴィンセントは牢屋に入る人間たちを見ながら、呟く。
「だとしたら、牢屋が開いたら……」
セルティスが言いかけたとき、完全にモンスターと化した人間が、牢屋を力ずくで開けて飛び出してしまった。
モンスター化してパワーも増していて、軽々と牢屋の柵を壊したのである。
「マジか……」
キーファーは素早く2本のラプターソードを取り出し、構えた。
「この倉庫、使ってなさそうな倉庫だな」
ホークが周囲を見回して、何もないことを確認する。
セルティスは深呼吸をして、気を引き締める。
「行こう」
セルティスは緊張しつつ、ゆっくりと倉庫の中に入っていく。
もう使われていないため、電気も通ってないようだ。
倉庫は音もなく静かだ。
不気味で恐怖を覚えたセルティスは、大きく息を吐いた。
ホークにもセルティスの恐怖が伝わってきて、そっとセルティスの手を握った。
セルティスは黙って、ホークの手を握り返す。
これが感謝の合図。
手を握ってくれるだけで恐怖が和らぐのを感じる。
この倉庫の1階には何もない。
だが、この何もないと言うことに違和感があって、周りを見ながら慎重に進んだ。
背後も気にしつつ歩を進めていくと、どこかで音がする。
カランッ
金属が落ちる音だ。
セルティスたちは、金属の落ちた音のほうに、視線を向けた。
落ちたのは、パイプだ。同時にドラキュラのような姿をしたモンスターが一斉に出てきた。
咄嗟にセルティスたちは武器を構える。
モンスターは、ざっと数えても1000はいるだろう。
誰よりも早くラプターソード2本を振り回し、水を起こして斬ったのは、キーファーだ。
キーファーの一撃で、 モンスター数十匹を一気に倒す。
「凄い数だな」
キーファーは次から次へとラプターソード2本を器用に使用し、モンスターを倒していく。
ヴィンセントもブラッドソードで雷を作ってモンスターを切り裂く。
それでも、数十匹しか倒せない。
ホークは駆け抜けていき、ダガーでモンスターを刺していく。
刺す度に氷がモンスターを固めていく。
セルティスはラグナロクでモンスターを炎で燃やす。モンスターは焼かれて倒れる。
セルティスたちが数十匹ずつ倒しても、まだ、半分もモンスターは残っている。
「少しずつ、倒していくしかないな」
ヴィンセントはため息をついた。
本来なら、さっさと雑魚のモンスターを倒したい。
しかし、これだけ数が多いと、時間がかかってしまう。
面倒だ。
少しずつだが、確実にモンスターを倒していき、何時間かかったか、ようやく、モンスターは全部消えた。
セルティスはフーッと息を吐く。ゆっくりと呼吸をして落ち着きを取り戻そうとした。
久々の強い恐怖感。
いつまでも強くなれないのかと落胆する。
そんなセルティスの思いを察したか、ホークは優しく声をかけた。
「恐怖は誰にもあるからな。恐怖感に打ち勝つから強くなれるってわけでもないぞ」
「えっ?」
セルティスは心を読まれ、驚愕して目を丸くした。
「強さってなんだと思う?」
ホークは驚くセルティスに質問を投げかけた。
「強さって、改めて考えるとわからない」
セルティスは首を傾げた。
まさか、ホークから質問されるとは思わなかった。
「だよな、強さってなんだろうな。だけど、俺が考えている強い人って、自分の弱いところもちゃんと受け入れることができて、時には自分や他人を許せる人。今の世の中、間違ったやり方で人の命を奪うことが多い。大切な人の命を奪われたら、許せないし、殺したくなるとも思う。それでも、グッと堪えて、命を奪った人のことを許して、幸せを願うことのできる人が強いんじゃないかって、俺は最近思うようになった」
セルティスは、ホークの言葉に目をぱちくりさせた。
ホークが言うとは考えもしなかったが、妙に納得する。
「それができたら、凄いな。命を奪った人の幸せを願うなんて普通できない」
セルティスは呟くと、ホークは笑顔を向けた。
「セルティスは、それ、できてるよな」
「えっ?」
今日のホークには、驚かされてばかりいるセルティス。
再び目を丸くした。
「ホークの考え方の強さで言うとそうかもな」
キーファーが話に入ってくる。
「セルティスは、いつも倒したとき、優しく話しかける。本来なら、殺しなくなるような奴でも。それはさ、今度、生まれ変わったときは、幸せになれよって言っているようなものだよ」
「そうなのか?」
ホークに言われても、全くセルティス自身はわからなかった。
「まぁ、本人は自覚ないと思うけどな」
ホークはセルティスの額をコンッと叩いた。
「何、それ」
セルティスはまるで子供のように、頬を膨らませていた。
談笑をしつつ、辺りを警戒しながら、進んでいくと、突然、セルティスの声がする。
「うわっ!」
そこには、監禁されていると思われる老若男女が、大きな牢屋に何百人と入れられている。
セルティスは、牢屋に入っている1人の男がセルティスの足を掴んだのだ。
「セルティス!」
ホークがセルティスの手を掴んで、引っ張った。
なんとか、逃れたセルティスだったが、突然、足を掴まれて怖くなった。
「ありがとう」
セルティスは、ホークの身体に密着させる。
ホークには、わかっていたから、セルティスに何も言わない。
ただ、怖さを和らげるために傍にいてやる。
キーファーは牢屋に入る人間たちを見て、呆然としている。
「これは一体……」
人間にしては異様だ。
助けて欲しいというより、セルティスたちに襲い掛かってきそうな勢い。
暴れたくて仕方がないようだ。
「いや……もう、人間じゃない。もしかしたら、モンスターになりかけている。モンスターになる寸前……」
ヴィンセントは牢屋に入る人間たちを見ながら、呟く。
「だとしたら、牢屋が開いたら……」
セルティスが言いかけたとき、完全にモンスターと化した人間が、牢屋を力ずくで開けて飛び出してしまった。
モンスター化してパワーも増していて、軽々と牢屋の柵を壊したのである。
「マジか……」
キーファーは素早く2本のラプターソードを取り出し、構えた。
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