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6章 リックの過去と友人

第103話  苛立ち

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 カースはリックの言葉に目を細めた。

「ふざけんな! ミアの気持ちを無視してただろ!」

 カースは長剣をリックの胸をめがけて振る。

 リックは大剣、アルテマで長剣を受け止めて、長剣を振り払った。

「ミアは死ぬ間際、おまえのことも言ってたんだぞ!!」

 リックの言うことを信じられなかったカースは、再び長剣を振って、リックの胸を横に斬っていく。

 雷鳴が響き、リックに直撃する。

「うわぁぁぁぁ!!!!」

 リックは思ったより、痛みが強くて耐えきれずに叫ぶ。

 カースは長剣でリックの顎を持ち上げた。

「何を言っていた?」

 カースの瞳は、死んでいるかのようだ。

 リックは長剣を手で押さえると、ゆっくりと下ろす。

「ミアは、知っていた。おまえがミアのことを大切にしていること。思いを寄せていること」

「何?」

 カースは眉をピクリとさせた。

 ミアが知っていたということに、心の中では、衝撃を受けていたが、表には見せないようにした。

「だから、死ぬ間際、俺に言った。『本当はカースが私のこと想ってくれていること、知ってる。カースには感謝している。でも、私が好きなのは……』と」

「なんだと!? だったら、何故、正直に俺に言ってくれなかったんだ!! ずっと、振り向いてくれないくらいなら、正直に言ってフラれたかった!!」

 カースは声を震わせながら、でも、ミアに対する怒りも出てきた。

 ミアのその態度は誤解させる。たとえ、振り向いてくれなかったとしてもいい。

 ただ、他に好きな人がいるならいるって言って欲しかった。

 そのことも言わずに、振り向いてくれなかったのは、あまりにショックだ。

「おまえ、傷つきやすいから、ミアは言えなかったんだ。言おうとしたけれど、傷つけないように伝えるにはどうしたらいいか、ずっと考えていた」

 リックは少し息も整ってきて、ゆっくりと構え直す。

 カースは長剣で斜めに、リックを斬りつける。

 リックは瞬時にアルテマを振って、長剣を止めた。

「もういい!! ミアもおまえも裏切ったようなもんだ!!」

 カースの怒りが爆発した。

 強引にリックを押し倒すと、長剣を振り上げた。

 雷がリックを襲う。

 リックは倒れたまま、息を整える。ダメージが大きすぎて、すぐには息が整わない。

 ゆっくりとした深呼吸を何度か繰り返す。

 横隔膜を使った腹式呼吸を意識しながら、息が整うのを待つ。

 その間がチャンスとカースは、リックを本気で殺そうとした。

 長剣で腹を少しずつ深く抉っていく。

「うぁっっ」

 血がポタポタと地面に落ちていく。

「もっと、苦しめ!」

 カースは、更に深く抉っていく。

 でも、一気には刺さない。

 奥深くを長剣で探るように、グイグイと徐々に刺す。

 その様子を見ていたレビーは静かに、カースの背後に忍び寄った。

 気配を消してカースの背後に回ったレビーは、背中に飛びながら蹴りを入れて、よろめいたことを確認し、鳩尾にパンチをする。

 光がバチバチと音を立てて、強力なパンチがさく裂した。

 カースはレビーの気配には全く気がついていなかったため、全く反応ができなかった。

「まだ、生きてたか」

 カースは唾を吐きながら、レビーに長剣を向けた。

 レビーは指をボキボキ鳴らしながら、舌打ちした。

「さっきから聞いてりゃ、おまえは、ただ、嫉妬してるだけじゃねぇか!! 本当はリックのほうが何でもできて、モテて羨ましいんだろ? それが許せないんだよな」

 レビーの言葉に、カースはムッとする。

 それは、図星をつかれた証拠だ。

「おまえは関係ないだろ! おまえに何がわかるんだ!?」

 長剣でレビーの肩を貫こうとする。

 レビーは、その長剣をロイター版のように使って踏み込み、高くジャンプした。

 その勢いで、飛び膝蹴りをした。

 カースはレビーの肩を貫くことはできなかった。

 レビーの動きが全く想像できない。

 まさか、自分の長剣をバネにしてジャンプするとは、考えもしない。

「貴様……」

 カースはレビーを睨み付けた。

 レビーは、そんなカースを冷静に見ている。

「俺は、おまえのことなんか知らないし、わかる気もない。でも、おまえの嫉妬だけで、リックを傷つけるなら、俺は許さない。仲間だからな」

 レビーは、カースの顎を狙ってアッパーパンチをする。

 カースは、顎が下から突き上げられる感覚を覚えた。

 そのパンチも強力で、バランスを崩して耐えられず、ダウンした。
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