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6章 リックの過去と友人

第102話 嫉妬

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 リックとレビーは、カースがどのように動くか、様子を見ていた。

 カースは、なかなか動かないことから、カースもまた、リックとレビーがどうするか、見極めようとしているのだろう。


 リックとレビーは目で合図する。

 先にレビーが動く。レビーは、ジャブを繰り返す。

 カースの様子を見ながら。

 カースは軽い身のこなしで、左右上下に首を振って、ジャブを避ける。

 レビーはジャブの動きから、フックに切り替えた。

「!?」

 カースは、急にパンチが切り替わったことで、反応できず、勢いよく地面に叩きつけられた。

 そこにリックの大剣、アルテマがカースの脇腹を斬る。

「……チッ」

 カースは舌打ちをして、唾を吐き出す。

「こんなもんだったか? お前の力は!」

 カースは、リックに長剣を向ける。

 そして、そのまま、グサッと肩を貫いた。

「うっっ!」

 リックは躱す間もなかった。

 肩を押さえながら、カースを睨みつける。

「なぜ、モンスター化してまで、人を襲う?」

 リックはゆっくりと立ち上がった。


 カースは、リックの質問にフッと笑う。

「人間なんてどうでもいい。どうせ、裏切るのがオチだろ」

 カースはそう言うと、リックの背中を長剣で斬ろうとしていた。

 そのとき、レビーの拳がカースに飛んでくる。

 レビーの手にはめているグローブから、光がビリビリ鳴っている。

「裏切るやつばかりじゃねぇぜ」

 レビーは、もう1発、パンチをして、カースの身体をよろめかせる。

「たまたま、おまえにはいなかった。いや、ちゃんと話してなかったから、誤解してんじゃないのか?」

 レビーは、さらに蹴りを入れようと、足を振り上げた。

ちょうどそのとき、カースの長剣が、レビーの腿を斬った。

 雷がレビーに落ちる。

「うぐっ!!」

 レビーは、避けるための準備ができていなくて、膝をつき、血を吐き出した。

「レビー!」

 リックは、アルテマでカースの背中を斬る。

 ところが、そのアルテマは、カースの長剣で薙ぎ払われ、アルテマが手から離れる。

「っっ!」

 カースは、さらに長剣を横なぎにして、リックの腹を狙った。

 リックは身体を捻っていたが、間に合わず、深く抉られる。

 腹を抑え、手をつきながら、立ち上がろうとする。

「人間なんて、所詮、その程度しか強くなれないんだよ」

 カースは、長剣を振り回し、リックとレビーを同時に斬る。

 雷鳴が響き、リックとレビーは大量の血を噴き出しながら、その場に倒れる。

「おまえは、無関心だったかもしれないけどな、俺は、ミアが愛しかった」

 カースが口にした、ミアという名前。

 リックも知っている。

 かつて、傭兵として共に行動した女性だ。

 ミアは、傭兵の仕事をしているときに犠牲になってしまった。

 死ぬ間際に告白されたことを、リックは思い出した。

「おまえは、全然、気が付かなかったんだな。ミアは、何故、リックだったんだろうな。俺は振り向いてもらえなかった」

 カースは、長剣をリックに向けて問う。

「おまえは、ミアがずっと、想いを寄せていたのに、何故、もっと大事にしてやらなかった!」

 リックは息を整えながら、静かに答える。

「違う。俺は、おまえに気があると思っていた。だから、諦めた。でも、あのとき、死ぬ間際になって言われて、初めて知ったんだ。ミアの想いを」

 リックは、苦しそうな顔をした。

 ミアはずっと、カースのことが好きだと思っていた。

 リックもミアのことは、気になっていたが、カースのこともあり、諦めていた。

 あのとき、いつものように傭兵の仕事をしていた。

 カースは、命を落としそうなほど危険な状態だった。

 そんな瀕死のときに、さらにカースは襲われた。

 リックはカースを助けにいこうとした。

 だが、リックの目の前にミアが現れた。

 ミアは、カースを助けに行こうとしたリックを庇って死んだ。

 ミアに想いを寄せていたカースは、死ぬ間際、ミアに、リックのことが好きだと聞かされた。

 カースは、ミアがリックに想いを寄せていると気がついていた。

 でも、リックは気づいていなかった。

 ミアに対してそっけない態度が気に入らなかったのだろう。

 カースのことを、ミアが恋愛対象になっていないことも知っていた。

 だから、リックにはもっとミアを大切にしてほしかったのだ。

 ただの嫉妬から始まったといっても過言ではない。

「ミアは、おまえのことが好きだと思っていた」

 リックはボソッと答えた。
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