上 下
92 / 239
6章 リックの過去と友人

第92話 リックの故郷、ディノール

しおりを挟む
 セルティスたちは、ゆっくり休んで、体力も回復して、また、四天王の情報を得るために、歩き回る。


 四天王の話は聞くが、どこで何をしているのかなど、セルティスたちには、全くわからない。

 セルティスたちの知らないところで、四天王は人間を操り、また、モンスター化させるために、血液や細胞を手に入れようとしているのだろう。

 そのためには、きっと、人を殺めることにも躊躇はない。


 セルティスは、そう考えただけで、ゾッとした。

 なんと残酷なのか。

 もちろん、そう思っているのは、セルティスだけではない。


 しばらく、ひたすら歩いた。

 モンスターがいる気配もない。

 逆に静かだと怖い気がする。

 歩き続けていると、街が賑やかになってきた。

 繁華街とまではいかないけれど、それに近いくらい大繁盛の街だ。

 この街はディノールというらしい。


 ディノールの街に着いて、リックは驚いていた。

 ディノールは、リックの故郷だ。

 久しぶりに帰ってきて、なんとなく恥ずかしいのか、照れ隠しをしているようにも見える。

「リック、なんか変だけど」

 ミラトが不思議そうにリックを見ている。

 それはそうだ。

 明らかに動揺しているというか。

「おっ、リック、久しぶりじゃないか」

 と、声をかける青年がいる。

 リックと同い年くらいだろうか。

 青年は、リックの同級生だ。

「あぁ……」

 リックは、はっきりしない返事をした。

「ん?」

レビーは、リックのはっきりしない返事に頭に疑問符を浮かべている。

 何故、はっきりしていないのか。


 青年は忙しそうに、リックに挨拶だけして去っていく。

 青年が去っていくのを見届けてから、ミラトは、リックに声をかける。

「あの男性と知り合い? この街の人、リックのこと知っているみたいだったけど、この街、知っているの?」

 リックはフーッとため息をついた。

 あまり乗り気ではなさそうだが、簡潔に答える。

「ここは、俺の故郷」

「故郷……?」

 ミラトは、首を傾げた。

 故郷ならば、そんなに動揺しなくてもいいはずだ。

「なら、なんで、動揺してるの?」

 ミラトは更に追求する。

 リックは困ったような顔をしている。

 自分でも、何故、ディノールがここにあるのか、わからないからだ。

 確かに、この場所は、ディノールがあった場所だ。

 ただ、ディノールは、昔、メチャクチャにされた。

 それは、幼い頃の記憶だが、よく覚えている。

 家族が全員、四天王に殺されたとき、街の人々も、街も失った。

 その後、復興することはなかったはず。

 昔のままの街があるわけがない。

「……いや、故郷は故郷なんだが、昔、四天王にメチャクチャにされた。俺の家族と、この街の人々も殺されて、故郷も失った。それから、ここは、何もなくなって、復興もしていない。だから、昔のまま、故郷が残っているってことがおかしいんだ」

 リックは、周囲を見回す。

 一度は、動揺していたリックだが、明らかに記憶をたどってもおかしいと感じて、冷静さを取り戻した。

「この人たちは誰なんだ……?」

 リックは、何か嫌な予感がして構える。


 ギュルルルルルル


 急に変な音がしたと思ったら、街の人がモンスターへと化した。

「モンスター!」

 レビーは、モンスターに拳を振り上げた。

 ビリビリとグローブから光を放ち、その光はモンスターの身体を痺れさせる。

 さらには、モンスターに回し蹴りをしてモンスターを倒していく。


 リックもレビーの攻撃を合図に、大剣、アルテマを振り下ろして、モンスターを次から次へと斬っていた。

「昔のままの街や人を再現してるとは……」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

Ruin Curse【期間限定全公開】

まつのこ
ファンタジー
「……オレは、エルだ」 魔法が存在する世界、男勝りな少女エルは魔法を毛嫌いし、己の力だけで生きていた。 そんなエルが旅をする中で出会うものは、様々なものがあった。 恋愛要素一切なしのファンタジー

女神の代わりに異世界漫遊  ~ほのぼの・まったり。時々、ざまぁ?~

大福にゃここ
ファンタジー
目の前に、女神を名乗る女性が立っていた。 麗しい彼女の願いは「自分の代わりに世界を見て欲しい」それだけ。 使命も何もなく、ただ、その世界で楽しく生きていくだけでいいらしい。 厳しい異世界で生き抜く為のスキルも色々と貰い、食いしん坊だけど優しくて可愛い従魔も一緒! 忙しくて自由のない女神の代わりに、異世界を楽しんでこよう♪ 13話目くらいから話が動きますので、気長にお付き合いください! 最初はとっつきにくいかもしれませんが、どうか続きを読んでみてくださいね^^ ※お気に入り登録や感想がとても励みになっています。 ありがとうございます!  (なかなかお返事書けなくてごめんなさい) ※小説家になろう様にも投稿しています

異世界複利! 【1000万PV突破感謝致します】 ~日利1%で始める追放生活~

蒼き流星ボトムズ
ファンタジー
クラス転移で異世界に飛ばされた遠市厘(といち りん)が入手したスキルは【複利(日利1%)】だった。 中世レベルの文明度しかない異世界ナーロッパ人からはこのスキルの価値が理解されず、また県内屈指の低偏差値校からの転移であることも幸いして級友にもスキルの正体がバレずに済んでしまう。 役立たずとして追放された厘は、この最強スキルを駆使して異世界無双を開始する。

ご期待に沿えず、誠に申し訳ございません

野村にれ
恋愛
人としての限界に達していたヨルレアンは、 婚約者であるエルドール第二王子殿下に理不尽とも思える注意を受け、 話の流れから婚約を解消という話にまでなった。 ヨルレアンは自分の立場のために頑張っていたが、 絶対に婚約を解消しようと拳を上げる。

Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷

くみたろう
ファンタジー
彼女の名前は東堂翠。 怒りに震えながら、両手に持つ固めの箱を歪ませるくらいに力を入れて歩く翠。 最高の一日が、たった数分で最悪な1日へと変わった。 その要因は手に持つ箱。 ゲーム、Anotherfantasia 体感出来る幻想郷とキャッチフレーズが付いた完全ダイブ型VRゲームが、彼女の幸せを壊したのだ。 「このゲームがなんぼのもんよ!!!」 怒り狂う翠は帰宅後ゲームを睨みつけて、興味なんか無いゲームを険しい表情で起動した。 「どれくらい面白いのか、試してやろうじゃない。」 ゲームを一切やらない翠が、初めての体感出来る幻想郷へと体を委ねた。 それは、翠の想像を上回った。 「これが………ゲーム………?」 現実離れした世界観。 でも、確かに感じるのは現実だった。 初めて続きの翠に、少しづつ増える仲間たち。 楽しさを見出した翠は、気付いたらトップランカーのクランで外せない大事な仲間になっていた。 【Anotherfantasia……今となっては、楽しくないなんて絶対言えないや】 翠は、柔らかく笑うのだった。

浅葱色の桜

初音
歴史・時代
新選組の局長、近藤勇がその剣術の腕を磨いた道場・試衛館。 近藤勇は、子宝にめぐまれなかった道場主・周助によって養子に迎えられる…というのが史実ですが、もしその周助に娘がいたら?というIfから始まる物語。 「女のくせに」そんな呪いのような言葉と向き合いながら、剣術の鍛錬に励む主人公・さくらの成長記です。 時代小説の雰囲気を味わっていただくため、縦書読みを推奨しています。縦書きで読みやすいよう、行間を詰めています。 小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも載せてます。

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。

朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。 婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。 だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。 リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。 「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

魔王の娘に花束を~落ちこぼれ剣士と世界を変える小さな約束~

結葉 天樹
ファンタジー
それは、人と魔族が対立する世界の話。 豊富な魔力で行使する破壊の力「魔法」を用いる魔族。 わずかな魔力を効率的に運用する技法「魔術」と剣技を組み合わせて戦う人間。 長い間続いていた戦いは遂に魔族の長、「魔王」との決戦までたどり着いていた。 まもなく始まる魔王討伐戦。それを前にとある女性に騎士団への招集がかかる。 彼女の名はトウカ=フロスファミリア。王国屈指の騎士の家の出身でありながら家を追われた存在。 対して姉のオウカは王国騎士団の実力者。 共に歩んだ道はいつしか分かれ、修復不能なほどに壊れた仲のまま二人は討伐戦へ突入していく。 そこで出会うものが二人と世界を変える存在と知らずに。

処理中です...