女剣士セルティス

綴玲央（つづりれお）

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5章　夜の街、ブラックタウンに潜む闇

第84話　セルティスの心の成長

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　セルティスは、アミの動きをじっくり見た。全て丹田に下ろして、丹田に集中させる。

　その隙を狙って、アミは、マスカレードを振ろうとしている。

　だが、そのマスカレードの動きは読まれた。

　セルティスは、マスカレードの動きが、光の筋のように見えている。

　その光の筋を絶つように、ラグナロクで斬った。

　ラグナロクが赤く燃え上がっている。

　ラグナロクが炎と化したのだ。

「うわあぁっ！」

　アミは、床に背中を打ちつけて、仰向けで大の字に倒れる。

　しばらく、大の字のまま、呼吸を整えた。

　息が激しく、なかなか呼吸が整わなかった。

　アミは、簡単に倒せると思っていた。

　ところが、セルティスの攻撃を躱すことができない。

　何故なのだろうか。

　どうして、躱せないのか。

セルティスの実力は、剣士とは思えないくらい弱い。

　本当に精神力だけで、こんなにも変わるものなのか、アミには信じられなかった。

　アミはフッと笑うと、起き上がった。

　マスカレードを手にして、駆け抜けていく。

「死ねぇ！！！！！」

　マスカレードは、セルティスからは見えていない。

アミは、チャンスだと、勢いよくマスカレードを振り下ろす。

　セルティスは、マスカレードが見えなくても、不思議と躱せる気がしていた。

　振り下ろす、その瞬間の軌道が教えてくれている。

　キーン

　マスカレードとラグナロクの重なり合う音が聞こえる。

　セルティスは、ラグナロクで、マスカレードを受けただけでなく、マスカレードを吹き飛ばす。

　不思議だ。アミの動きが見える。

　スローモーションに見えたり、今は、軌道が見えた。

　軌道が動きを誘導しているかのようだった。

　自分でもわからない感覚だった。

　セルティスが、ゾーン状態とはどのようなものか、わかっていれば、気がついたかもしれない。

　だが、残念ながら、セルティス自身、ゾーン状態がどういうものなのか、理解できていない。

　だから、何故、このようなことが起こっているのか、知ることもできなかった。

　セルティスは、マスカレードを吹き飛ばした後、アミの脇腹を狙って、ラグナロクで斬りつける。

　また、アミに隙を与えずに、飛び膝蹴りをしてアミの鳩尾を狙う。

　アミは、反応ができずに膝をついた。

「なんで、あたしが、反応できない！　あんな弱いやつに！！」

　アミは拳を握りしめて、床を強く叩きつけた。

「私が、弱いあんたに負けるわけないでしょ！！」

　アミは、一瞬、姿を消して、セルティスの目の前に現れると、拳を振り上げて、顔を殴る。

　そして、マスカレードで肩をひと突きした。

　セルティスは、目を丸くする。

　殴られた衝撃でバランスを崩し、躱す態勢が作れなかったため、深く抉られてしまった。

「……うっ……」

　セルティスは膝をついて、肩を抑える。

「所詮、あんたはこんなものなのよ。私はあの男を手に入れる。それと、あの2人も手に入れる」

　アミは、マスカレードをセルティスに向けて、言い放った。アミのその先にある視線は、レビーとリックだった。

「男好きめ……」

　セルティスは、ホークだけでなく、レビーやリックも狙っていることを知って、毒づいた。

　数分、息を整えて安静にする。

　アミは、セルティスの言葉に、眉をピクッとさせた。

「男好きねぇ。私、イケメンにしか興味ないのよ。イケメンを見て栄養をもらっているのよ」

　アミは人間型モンスターだ。

　だが、モンスターといえども、男女の関係はあるようで、密接な関係になれば子供もできる。

　人間が創りだしたモンスターでも男女が結ばれて、繁殖させることもできるだ。

　セルティスは、フーッと息を吐いて、ラグナロクを振るう。

「何が、イケメンを見て栄養をもらっているだ！！　ただ、命を奪っているだけじゃないか！！」

　ラグナロクを振るだけでなく、炎を発生させて、弧を描くように炎でアミを包む。

アミは躱しきれず、身体中から血が噴き出す。

「なっ……」

　アミは、うつ伏せに倒れ、目を見開いたまま、動くことができなくなった。

（何故……？　私、この女に負けたの……？　たいして戦闘能力もないのに？　普通だった。力もなければ、これだ！　という決定的な攻撃力もない。それなのに……どうして……）

　アミは、そう思いながら、だんだん意識が遠のいてくるのを感じる。

「これじゃ……四天王様に殺される……いや、もう死ぬのか……」

　アミの呟く声も、小さくなっていく。

やがて、アミは目を開けたまま、意識を失い、完全に心臓が止まった。

　セルティスは、アミが動かなくなったことを確認して、ゾーン状態が解けたのか、急に力なく座り込んだ。

　極度の緊張もあったか、それとも、初めて経験したゾーンで疲れが、どっと出たか、ほとんど力が入らなくなっていた。

　それでも、セルティスは、丹田……臍下丹田に意識を持っていく。

　臍下丹田とは、下腹部にあるもので、お臍から指4本下あたりにある。

　ここに意識を持っていったり、力を入れたりすると、元気がや勇気が出て、健康にも良いとされている人間が持つ、未知の力を発揮する場所だ。

　現在の武道では、臍下丹田を大事にしており、臍下丹田から体を動かす、臍下丹田に意識を落とすことで、強い心身を作ることができると言われている。

　セルティスは、しばらく臍下丹田を感じて、傷を癒す。

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