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5章 夜の街、ブラックタウンに潜む闇

第82話 戦え

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 アミは、マスカレードで乱暴に空を斬り、猛吹雪をセルティスたちに浴びせる。

 次から次へとセルティスの仲間たちがやってきて、邪魔されたことに腹が立つ。

 ただ、ホークという男を手に入れたいだけだ。

 それなのに、ホークを奪おうとすると、セルティスの仲間たちが阻む。

 セルティスたちは、しっかりと床に足の裏をつけて、猛吹雪に耐える。

 耐えるためには、かなりの体幹が必要だ。

 しばらくはグッと堪えていたが、かなりの威力で、セルティスは吹き飛ばされそうになる。

 ホークやレビーの体幹は、しっかりしていて、猛吹雪に耐えられた。

 ミラトは、膝と手をついて、なんとか最小限に抑える。

 ところが、セルティスだけは、踏ん張れなくなっていた。

「きゃっ……」

 セルティスは、完全に堪えることができなくなって、飛ばされてしまう。

「セルティス!」

 ホークは、素早くセルティスを抱き上げて、床に強打されることを避けた。

セルティスは、悔しくなってしまった。

 また、助けられた。

 何故、こんなにも弱いのだろう。

 力もない。

 そんなことを考えて、拳を握りしめる。


「おまえ、セルティスだけ、集中して狙ったな」

ホークは、猛吹雪を受けたときに気がついていた。

 アミは全員を狙ったことは間違いない。

 しかし、セルティスだけに攻撃を強めていたのだ。

 ホークは、ダガーでアミを突き刺そうと、アミの肩を掴んだ。

「そんなに、その女が大切なの?」

 アミは、サッとホークの腕を振り払うと、マスカレードで首元を横薙ぎに斬る。ホークは瞬時に身を反らし、バック転した。

「大切だよ。セルティスは仲間なんだから。お前は仲間が死んでも、なんとも思わないだろうけどな」

 ホークは、手刀でアミの首を後ろから叩く。

 バランスを崩したアミに、ダガーを突きつけ、身体を凍らせる。

 アミは、床に手をついた。

「おまえ……」

 アミは、ホークの腿を的にして、マスカレードで真上から突き刺す。

 ホークは、横に飛んで前転し、マスカレードから離れる。

 そのとき、アミの背中を、大剣、アルテマが斬った。

 土が沸き出し、アミの態勢を崩していく。

「今度は、誰なの?!」

 アミは振り返える。そこにいたのは、リックだ。

 リックは無言で、アルテマをアミに向けた。

「へぇ、女剣士さんは、大人気ねぇ。男たちに囲まれて」

 アミは、羨ましそうにしている。

「やっばり、男の死に顔は美しい」

 アミはそう言うと、リックにマスカレードを振る。

 リックは咄嗟にアルテマで受け止めると、アミに足払いをした。

 アミがよろめいた隙を逃さず、光の如く、素早く斬っていく。

「きゃっ」

 アミは顔を床に打ちつけた。

 ゆっくりと立ち上がったアミは、指をパチンと鳴らす。

 すると、人間型モンスターが姿を現す。

 2体いる。

「リィ、ダウト、あいつらを殺せ」

 アミの合図で、リィとダウトと呼ばれた人間型モンスターは、ホーク、レビー、リック、ミラトに襲いかかってきた。

「チッ……」

 ホークは、舌打ちすると高く飛んで、リィに真上からダガーを突き刺す。

 リィは、ホークの気配に気がつき、見上げた。

 すると、拳で、ホークの胸を突いた。

「うおっ!」

 ホークは、血を吐き出す。

「ホーク!」

 セルティスが、ホークに近づこうとした瞬間、アミが、ホークの前に立ちはだかった。

セルティスにマスカレードを向けると、不敵な笑みを浮かべた。

「あんたの相手は、私よ」

アミは、勢いよくマスカレードを振って、セルティスの頬を斬った。

セルティスは、首を斜めにむけて、マスカレードをよけたつもりだったが、掠めてしまった。

 頬から、血が滲む。

「私は、弱い人と戦いたくないんだけどね。あの男を手に入れるためには、どうしても邪魔だから、まずはあんたを殺す」

 アミはマスカレードを、セルティスに振り下ろして、マスカレードから放つ吹雪で、×の字を描いた。

「うぁぁぁっ!!!!」

 セルティスは、受身を取ろうとしたものの、うまく機能せず、血を撒き散らす。

 息が荒くなったセルティスは、アミを睨み付ける。

「なんで、そんなにホークを手に入れたいの? ただ、殺して、若いまま凍らせてるだけだろ。それのどこが美しいんだ」

 セルティスは、ホークのことが心配だったが、今は、ホークを信じるしかないと思って、アミとの戦いに集中することにした。

「なんで? あの男は、私好みの顔だからよ」

「そんなの、理由にならないだろ」

 セルティスは、ラグナロクで、アミの肩を貫いた。

 それは、一瞬の出来事で、アミにかわす余裕を与えなかった。

「なっ、なに!?」

 アミは、肩を押さえながら、驚愕した。

(今の動きが、全然見えなかった)

 セルティスは、間髪入れずに、ラグナロクを構えて、飛びかかった。

「えっ?」


 アミは、少し、焦ったものの、低い態勢になって、ラグナロクを避けると、セルティスに詰め寄り、強烈なパンチを鳩尾に叩きつけた。

「うわっ!!」

 セルティスは、跪いて身体を丸めた。

 かなり痛みを感じる。骨が砕けたかと思うほどだった。

「所詮、その程度のものなのよ。あんたは」

 アミは、マスカレードを鎖骨に突きつけた。

 セルティスが無理に動けば、間違いなくセルティスの鎖骨は、抉られる。

 アミは、ゆっくりとセルティスの鎖骨に、マスカレードを刺していく。

 セルティスは、じわりじわりと痛みが強くなってくる。

「うぅぅぅぅぁぁぁ!!!!」

 セルティスは、だんだんと込み上げていく痛みに、叫ばずにはいられなかった。

 少しずつ、抉られて、痛みも強くなっていくが、なによりも苦しい。

顔が歪んでいく。

「くっ……」

 セルティスは、本当はもっと叫びたいほど、痛くて苦しくて辛かった。

 一層のこと、一気に刺されたほうが、痛みも苦しみも少ないだろうと思う。

 それでも、セルティスが堪えているのは、ホークたちも苦しくても戦っていると考えたからだ。

「苦しいでしょ? もっと苦しみなさい。そして、その声をあの男が聞いたら、どう感じるのかな?」

 アミはニヤニヤしながら、また、少し、セルティスの鎖骨を抉っていく。

 セルティスは、苦しみながら、ホークのほうに目を向けた。

(ホークも戦っている)

 セルティスは、苦しみにもがきながら、息をゆっくり吐いた。

(大丈夫だ。ホークもレビーもリックもミラトもいる。私には仲間がいる。だから、こんなことで、あたしが苦しんでいる場合じゃない。戦え。自分に負けるな! 自分に負けたら、目の前のモンスターにも勝てない!!)

 セルティスは、自分に言い聞かせた。

「あたしは強くなりたいんだろ? だったら、自分の力を信じて戦ってみろ! いつも、そこで、ダメなんだって思うからできないんだ!」

 セルティスは、自分で気合を入れ直すために、拳で床を叩いた。

 そして、目を大きく見開くと、アミのマスカレードを一瞬で抜いて、胸と腕を掴むと、そのまま背負って投げ飛ばした。

 さらに、ラグナロクでアミの腹を斬りつけた。炎がアミの服を焼く。

「何っ!?」

アミは、咄嗟の判断で横に転がって、受身をとった。

 だが、衝撃は大きかったらしく、完全に避けることはできなかったようだ。

「戦え!」

 セルティスは、アミに向かってラグナロクを振る。
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