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5章 夜の街、ブラックタウンに潜む闇

第80話 手に入れたい

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 セルティスは吹き飛ばされる。

 瞬時に受け身の体勢をとったものの、威力は凄まじかった。

「あんた、何? 私は男しか興味ないの」

 女性はそう言うと、ホークに近づいていった。

「へぇー、いい男ね」

 女性はニヤリと笑って、マスカレードを、ホークに突きつけた。

「あなたもこっちに来なさい」

 ホークは、女性の言い方に、眉をピクリとさせた。

 ホークは、ダガーを素早く後ろから突きつける。

「嫌だと言ったら?」

「嫌でもこうする」

 女性は、不気味な笑みを浮かべながら、指差す。

 指差した方向へ目を向けると、男性が皆、氷で閉じ込められていた。

 閉じ込められた人たちは死んでいるのか。

「これは……」

 ホークは、女性を睨みつけた。

「美しいでしょう? こうやって、氷で固めておけば、永久に若いまま、いられるのよ」

 女性は、ホークにマスカレードを振り下ろした。

 ホークは、ダガーでマスカレードを受け止めて、女性の鳩尾にパンチをくらわせた。

 女性は、前転してパンチをかわして、ホークの首に蹴りを入れる。

 その蹴りは、ホークを床へと叩きつけた。

「ホーク!」

 セルティスは、ホークのほうへ歩み寄ってくる。

 無意識に、ホークを抱き起した。

 抱き起したとき、かなり強く抱きしめられていたようで、ホークは身動きがとれなかった。

「セルティス……苦しいって……」


ホークはセルティスの腰あたりで、手をトントンと叩いて、参ったという合図をした。

 ホークに合図されて、ハッとなったセルティスは、慌ててホークから離れた。

「ごめん……無意識だった……」

 謝るセルティスは、4歳くらいの子供に戻ったかのように小さくなっていた。

 こういうセルティスを見ると、ホークは笑顔になる。

 フッと笑って、セルティスの額を、コンっと叩いた。

「でも、ありがとうな」

 ホークは感謝した。

 こんなに、心配してくれるセルティスのためにも、しっかり守ってやらないとと改めて決意する。

「ちょっと、何? あなたは、その女のこと気になってるの?」

 女性は、ふてくされたような顔をしている。

 ホークが、セルティスのことを愛していると理解すると、腹立たしくなってきた。

 女性は明らかに嫉妬している。

「悪いけど、おまえみたいな女に興味ない。俺が好きな女は、ひとりだけだからな」

 話ながら、ホークは女性の背後から、ダガーを突き刺した。

 ダガーは氷となって鋭い刃となる。

「っの!!」

女性は、一瞬で振り返り、身体を捻って方向転換した。

「なんなの、あんた。私があんたを美しく、永久に若くしてあげるって言ってるのに、拒否するの?」

 女性は、ホークを睨み付けている。

 女性の目は、獲物を捕らえるときの目だ。

「永久に若いままでいられるのは、誰もが欲しい。でも、老いても愛する人と、死ぬまで一緒にいろんなことを乗り越えたり、幸せを感じているほうがいい」

 ホークは女性を押し倒して、ダガーでかすり傷を作った。

「なるほど」

 女性の動きを見て、ホークは感心する。

 押し倒して、ダガーを刺そうとしたとき、ほんの僅かな間で、女性は、体を捻って受身をとった。

「そうそう、私の名前、教えてあげる。私はアミ。あなた、気に入ったわ。なんとしてでもあなたを手に入れる」

 アミと名乗った女性は、マスカレードを手に、ホークに飛びかかる。

 ホークはアミよりも低い態勢になって、マスカレードを避ける。

 アミはマスカレードで空を斬った。

「っ!?」

 その隙にホークは、アミの脇腹を、ダガーで斬り裂く。

 アミは、無意識に身体を反らした。ダガーはアミの服を破る。

「案外、速い動きするじゃない」

 アミは破れた服を見ながら、息を吐いた。

「物騒なもの、持ってるな。その剣以外にも武器を持っているとは」

 ホークは、いつの間にかアミから盗んだものを、クルクル回しながら、笑う。

 その手には銃が握られていた。

「あんた、盗人ね」

 アミは、舌打ちすると、マスカレードでホークを叩きつける。

 ホークは、足でマスカレードを持つ手を止める。

 そして、ダガーでアミの腹に横に直線を描いた。

 アミは横に転がって、ダガーをかわしたつもりだったが、ピッと斬られた感覚があった。

(なんなの? こんな情報なかった。そんなに動きは速くないと思ってた。強くなったってこと? それとも、あの女を守ろうとしている?)

 アミは、滲む血を見ながら、セルティスのほうを見た。
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