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3章 修行

第64話 強い想い

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 ミサは、ロングソードから風を起こし、アレフを吹き飛ばした。

 アレフの息は少し荒い。

 しかし、ケガなど全くないかのようにスッと立ち上がった。

「はっ…」

 ミサはこれ以上開かないというくらいに目を大きく開く。

「全く効いてない……」

 呆然としたミサに、アレフはニヤリとした。

 アレフの笑顔が恐ろしく見える。

 ミサは急に身体が震え出した。

 アレフの笑みが不気味で怖い。

 近づいてくるのがわかる。

 近づいてくる度にミサの身体の震えは増していく。

「へぇ、ガキのわりには豊富だな」

 アレフは、いやらしい目でミサの胸を見てくる。

「なに、ジロジロと見てんだよ! エロ男!!」

 アランは手裏剣を投げて、ミサをアレフから遠ざける。

「ありがとう……」

 ミサはアランに助けられて、ホッとして目が潤んだ。

 アレフは手裏剣を受け止めて、アランを睨み付ける。

「邪魔するなよ。せっかくセルティスちゃんと遊んでたのに。それとも、そっちのガキからあそんでやろうか?」

アレフはシュッと音を立てて、ミサの近くまでやってくる。

(動きが速い……全く気配がしなかった)

 ミサはアレフの動きの速さに怯えた。

 アランはミサの怯えている姿を、身体で感じる。

 身体の震えがアランにまで伝わってきている。

 アランはミサを強く抱きしめた。

「俺が守ってやる」

 アランは言って、素早くアレフに接近する。

 手裏剣を剣のように扱い、斬っていく。

 手裏剣は光を放ち、アレフの目を一時的に見えないようにした。

 アレフは目が見えなくなっているうちに、手裏剣で斬られてイライラした。

(こいつ……俺の動きについてきている)

 アレフは天に手をかざす。静かに氷が、出現してアランを凍らせる。

「ぐあぁ!!」

「アラン!!」

 ミサはアランに近づこうとした。



 グサッ

 アレフの作った氷がミサの心臓を突き破った。

「……えっ……?」

 ミサは大きく目を開けたまま、地面に崩れ落ちていく。

 アランのことで精一杯でアレフの攻撃をかわす余裕などなかった。

「ミサ! しっかりしろ!!」

 ホークが咄嗟に脈を調べて心臓マッサージをする。

「無駄だよ。心臓を抉ったからね」

 アレフの言葉にホークはダガーで首を狙って斬った。

 ダガーにはめている魔石が氷を作りだし、鋭くアレフの首を突き刺す。

 セルティスはアランの様子を見に行こうとゆっくりと歩く。

「セルティス、動くな! お前も重傷なんだぞ!!」

 ホークは無理に動こうとするセルティスを止める。

「でも、アランもあのままじゃ死んでしまう」

 セルティスはフラフラの身体で、アランのほうへと向かう。

「アラン、しっかりしろ! アラン!!」

 セルティスは頬を叩いて、アランの意識を取り戻そうとした。

 アレフはホークの背後からゆっくりと忍び寄ってきて、氷魔法でホークの背中を刺そうとしていた。

「ホーク、後ろ!!」

 セルティスは、アレフがホークを狙っていることに気がついた。

(ホークを守りたい!!)

 ホークはアレフの氷をかわすには、間に合わなそうだ。

 そう感じたセルティスは、強く願った瞬間、ラグナロクを振り回していた。

 魔石が真っ赤な炎を生み出した。

 その炎はまるで竜のように動き回り、アレフに噛みついた。

「ホーク!!」

 セルティスはホークを巻き込まないように瞬時に抱いてアレフから離れた。

 セルティスはホークを守りたい一心で、強く抱きしめていた。

「……セルティス……助けてくれてありがとう。だけどさ……」

 ホークはギブアップと手で合図した。

 セルティスは気がついてなかったようだった。

 首を絞められるくらい強く抱きしめられて、ホークは苦しい。

「苦しい……」

 セルティスはホークに言われてハッとした。

「ご……ごめん……ホークを守りたくて……それで……」

 ホークは優しい笑みを浮かべた。

「ありがとう、守ってくれて」

 穏やかな声は、セルティスを安心させてくれる。

 アレフは拳を握り、呟いた。

「せっかく遊んでやろうと持ったのに。セルティスちゃん、思ったよりもしぶといんだね」

 セルティスを狙って、アレフは氷を発動させようとした。

「なれなれしくセルティスの名前を呼ぶな!」

 ホークがダガーでアレフの肩を突き刺す。

同時に氷が肩を固める。

「セルティスはお前のものじゃない!」

 ホークはアレフにダガーを突きつけた。
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