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3章 修行

第58話 2人の恋の行方

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 日差しが差し込んでくる。

「んん?」

 眩しい。

 セルティスは目を覚ました。

「んん?」

 目をパチクリしている。

 何度も確認して、目を見開いた。

「きゃっ」

 セルティスは凍りついてしまった。

 隣でホークが寝ている。

(あたし、昨日、どうしてたんだっけ?)

 ホークに背を向けた。

 顔が凄く熱い。

セルティスが布団の中でモゾモゾしていると、ホークの声がする。

「起きたのか?」

 セルティスはドキッとしてしまい、顔を布団で隠す。

「セルティス、どうしたんだよ」

 ホークはセルティスに声をかけた時、照れていると察した。

「かわいいな、おまえ」

 セルティスの頭を撫でる。

「もぉ、なにすんだよっ」

 セルティスはホークのほうを向いて、腕をつかもうとしたとき、勢い余ってベッドから落ちそうになる。

「きゃっ」

 ホークはサッとセルティスを抱きとめた。

「たまにかわいい声あげるんだな」

「もぉ、恥ずかしいからっ! あまり言わないで」

 セルティスは、バシバシッとホークの頭を叩く。

「あのさ、おまえが言ってきたんだぜ」

ホークはセルティスの額をコツッと叩いた。

「へっ?」

 セルティスはキョトンとしてしまう。

 一呼吸置いて、昨日のことを考えてみる。

 慰められて、寝ようって言われたことは覚えている。

 そのあとはどうしたのか。

 しばらく沈黙したのち、セルティスは思い出した。

「あっ」

(言った。ホークに一緒に寝てって。ホークといると落ち着くからって。なんで、あたし、そんなこと言ったんだ)

 ホークはヘヘッと笑った。

「でも、嬉しかったぜ。頼ってくれてありがとう」

 セルティスは急に顔を伏せた。

 嬉しかったと言われて、ドキドキした。

(あれっ? どうしたんだろ。胸が締め付けられる感じ)

「セルティス、おまえに辛くて悲しい思いは、もう、させない」

 ホークはセルティスの頭をポンと叩いて、ニコッと笑う。

「ありがとう、ホーク」

 セルティスはこの時、ホークがこんなにも心配してくれて、いつも守ってくれていることを実感した。

「ホーク、優しくしてくれてありがとう」

 セルティスはもう一度、感謝をした。

 セルティスとホークの会話が筒抜けだ。

 アランとミサは笑っている。

「筒抜けよね」

 ミサはそう言いながら、セルティスとホークの関係が気になるのだった。

「あの2人、付き合ってるのかな」

「やっぱりそう思うよなぁ。でもさ、セルティスもホークも鈍感なんだよなぁ」

 アランはボソッと呟きながら、腕を組む。

「えっ? 嘘でしょ? あれ、もう付き合ってるって雰囲気なのに」

 ミサは肩を落とす。

 セルティスとホークに何を期待していたのだろう。



「とりあえず、行こうぜ。これからのことも考えないといけないしな」

 アランが大雑把に着替えて顔を洗いに行く。

「ちょっと、大雑把ねー」

 ミサはそう言いつつも、楽しそうにアランを追っていく。
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