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2章 四天王の手下
第43話 セルティスが抱えているもの
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結局、森の中で迷ってしまったらしい。
日が差していたはずなのに、いつの間にか月が見えている。
真っ暗になった森を進むのは危険だ。道も見えなくなっている。
「この状況は……野宿か……?」
アランはため息をつきながら言った。
ホークは困ったような顔をする。
セルティスが心配だ。
確かに頼れる剣士だけど女の子だからいろいろと不便なこともあるだろう。
ホークがセルティスのことを心配するとは随分と優しい。
これには、当然理由があるわけだが、あまりホークは触れたくないようで。
セルティスは道をどこで間違えてしまったのか、自分の責任だと落ち込んで
いた。
「ごめん、あたしが道を間違えたな……」
セルティスも野宿は覚悟している。
アランは落ち込んでいるセルティスを見て唖然とした。
「セルティスのせいじゃないだろ、これは」
あまりに落ち込んでいるので、アランも言葉を選んで答える。
セルティスは無反応だ。相当ショックを受けている。
ホークもセルティスのこんな姿を見るのは、初めてだ。
「本当に真面目だな」
セルティスは沈黙したまま、遠くを見ているようだった。
ホークはボーっとしているセルティスを見て、目の前でパチッと手を叩いた。
「セルティス! そんなに落ち込むなって」
セルティスはホークが手を叩いたことで、我に返った。
「あぁ……悪い」
「セルティス、大丈夫か?」
アランが目を丸くしている。
セルティスは頷くものの、身体がふらつき、バサッと大きな音を立てて倒れてしまう。
「おいっ!」
ホークが咄嗟に身体を支えた。
すると、急に優しい光が包み、セルティスたちの身体を浮かせた。
「えっ? なんだ?」
アランは周囲を警戒した。
モンスターの仕業か。
手裏剣を投げようとした瞬間、眩しい光が直撃し、何も見えなくなった。
ホークもまた眩しい光で周りが見えず、何が起こったか、わからなかった。
「……?!」
気がついたところは部屋の中だ。
そしてベッドの上で寝ている。
幻なのか現実なのか、ホークは記憶をたどっていた。
「セルティス! アラン!」
ホークは勢いよく飛び上がった。
「静かに」
人差し指を口元で立てて、言ったのはメルだった。
「メル……?」
ホークは目をぱちくりさせていた。
メルは小さな可愛らしい少女で背中の羽をパタパタさせている妖精。
戦う時には、大人の女性へと変化する。
大人の女性に変化したときは召喚獣となる。
ビシレットダンジョンにて出会った妖精だ。
「アランは強くなるっていって外で、トレーニングしているよ。セルティスは
まだ寝ている」
メルはニコッとした。
ホークは周囲を見ながら、状況を聞く。
「なぁ、あの時、何が起こったんだ?」
メルは順番を追って説明した。
「ここね、私たち妖精が住む村。森に迷い込んだんだね。この森はモンスターが多くって危険なんだよ。だから、パトロールしていたの。その時にセルティスやホーク、アランを見つけた」
「それで連れてきてくれたのか?」
ホークは頭を整理しながら言った。
「そうだよ、真っ暗な中で迷っていたし、セルティスが急に倒れたし」
メルが羽をパタパタさせて、セルティスのほうに駆け寄った。
「そうだ、セルティス、なんで倒れたんだ……」
ホークはセルティスを愛おしそうに見ながら、言った。
メルは首を傾げた。
「わからない。私の回復魔法でも回復しないから、精神的な疲労で倒れたのかも。熱も出てるし」
ホークは驚愕した。
「熱!? セルティス、熱があるのか?」
メルは頷いた。
メルもセルティスを心配そうに見ている。
「セルティスって自分で何もかも背負っちゃうからさ、疲れちゃったのかも。身体のことに関しては魔法で回復させることができるけど、精神的なものは魔法でも回復させらないんだ」
ホークは少し残念な気持ちになった。何故、もっと頼ってくれないのだろうか。
「なんでも、ひとりで抱え過ぎだ。なんでもっと……」
メルはホークの肩に乗ってきて、ニヤリと悪戯な笑みを浮かべた。
「好きなのね。セルティスのこと」
ホークは顔を真っ赤にした。
「バ……バカッ! そんなんじゃねぇ!」
メルは笑いが止まらなかった。
明らかにホークは動揺しているし、顔が真っ赤になっている。
その様子が可笑しい。
「バレバレ。顔が真っ赤」
ホークは驚愕する。
「えっ……?」
ホークは自分の頬をバシバシ叩いている。
明らかに誤魔化そうとして頬を叩いていることがメルにはお見通しだ。
「素直になりなさい」
メルはそう言って、背中を強く叩いた。
「痛いって……」
ホークは意外と強く叩かれて驚いていた。
肩に乗るくらいの小さな妖精のどこにパワーがあるのだろうと思ってしまうほど、強かった。
「もう、頼りないなぁ。ホークがセルティスを守ってあげなくてどうするのよ。セルティスはホークを必要としているのよ」
メルはホークの目をじっと見ている。
「えっ?」
ホークは一瞬、硬直してしまった。
(俺を必要としている……?)
メルは呆れた様子でため息をついた。
「セルティスもホークも鈍感ねぇ……」
ホークはメルを細目で見た。
「鈍感で悪かったなぁ」
メルはホークの様子を楽しんでいた。
「守りたいんでしょ。セルティスを」
ホークは急に真面目な顔をした。
「あぁ……セルティスはセルティスだ。だけど、俺が大事にしていた女性と
被ってしまう。だから、セルティスが放っておけなくなる」
メルは頷いた。
「なるほどね。セルティスは多分、自分でもわからないんだよ。ホークを頼りにしたい。でも、どう頼ればいいか、わからない」
ホークはメルの言葉を聞いて納得した。
セルティスに何があったのか、わからない。
でも、ずっとひとりで生きてきたような雰囲気はある。
ホークは眠っているセルティスの髪をそっと撫でる。
「ずっと、ひとりで生きてきて不安も恐怖も抱えてきたんだよな。辛かったな」
セルティスは眠っているはずなのだが、ホークに優しく髪を撫でられて、安心
したのか、頬に涙が伝っていた。
日が差していたはずなのに、いつの間にか月が見えている。
真っ暗になった森を進むのは危険だ。道も見えなくなっている。
「この状況は……野宿か……?」
アランはため息をつきながら言った。
ホークは困ったような顔をする。
セルティスが心配だ。
確かに頼れる剣士だけど女の子だからいろいろと不便なこともあるだろう。
ホークがセルティスのことを心配するとは随分と優しい。
これには、当然理由があるわけだが、あまりホークは触れたくないようで。
セルティスは道をどこで間違えてしまったのか、自分の責任だと落ち込んで
いた。
「ごめん、あたしが道を間違えたな……」
セルティスも野宿は覚悟している。
アランは落ち込んでいるセルティスを見て唖然とした。
「セルティスのせいじゃないだろ、これは」
あまりに落ち込んでいるので、アランも言葉を選んで答える。
セルティスは無反応だ。相当ショックを受けている。
ホークもセルティスのこんな姿を見るのは、初めてだ。
「本当に真面目だな」
セルティスは沈黙したまま、遠くを見ているようだった。
ホークはボーっとしているセルティスを見て、目の前でパチッと手を叩いた。
「セルティス! そんなに落ち込むなって」
セルティスはホークが手を叩いたことで、我に返った。
「あぁ……悪い」
「セルティス、大丈夫か?」
アランが目を丸くしている。
セルティスは頷くものの、身体がふらつき、バサッと大きな音を立てて倒れてしまう。
「おいっ!」
ホークが咄嗟に身体を支えた。
すると、急に優しい光が包み、セルティスたちの身体を浮かせた。
「えっ? なんだ?」
アランは周囲を警戒した。
モンスターの仕業か。
手裏剣を投げようとした瞬間、眩しい光が直撃し、何も見えなくなった。
ホークもまた眩しい光で周りが見えず、何が起こったか、わからなかった。
「……?!」
気がついたところは部屋の中だ。
そしてベッドの上で寝ている。
幻なのか現実なのか、ホークは記憶をたどっていた。
「セルティス! アラン!」
ホークは勢いよく飛び上がった。
「静かに」
人差し指を口元で立てて、言ったのはメルだった。
「メル……?」
ホークは目をぱちくりさせていた。
メルは小さな可愛らしい少女で背中の羽をパタパタさせている妖精。
戦う時には、大人の女性へと変化する。
大人の女性に変化したときは召喚獣となる。
ビシレットダンジョンにて出会った妖精だ。
「アランは強くなるっていって外で、トレーニングしているよ。セルティスは
まだ寝ている」
メルはニコッとした。
ホークは周囲を見ながら、状況を聞く。
「なぁ、あの時、何が起こったんだ?」
メルは順番を追って説明した。
「ここね、私たち妖精が住む村。森に迷い込んだんだね。この森はモンスターが多くって危険なんだよ。だから、パトロールしていたの。その時にセルティスやホーク、アランを見つけた」
「それで連れてきてくれたのか?」
ホークは頭を整理しながら言った。
「そうだよ、真っ暗な中で迷っていたし、セルティスが急に倒れたし」
メルが羽をパタパタさせて、セルティスのほうに駆け寄った。
「そうだ、セルティス、なんで倒れたんだ……」
ホークはセルティスを愛おしそうに見ながら、言った。
メルは首を傾げた。
「わからない。私の回復魔法でも回復しないから、精神的な疲労で倒れたのかも。熱も出てるし」
ホークは驚愕した。
「熱!? セルティス、熱があるのか?」
メルは頷いた。
メルもセルティスを心配そうに見ている。
「セルティスって自分で何もかも背負っちゃうからさ、疲れちゃったのかも。身体のことに関しては魔法で回復させることができるけど、精神的なものは魔法でも回復させらないんだ」
ホークは少し残念な気持ちになった。何故、もっと頼ってくれないのだろうか。
「なんでも、ひとりで抱え過ぎだ。なんでもっと……」
メルはホークの肩に乗ってきて、ニヤリと悪戯な笑みを浮かべた。
「好きなのね。セルティスのこと」
ホークは顔を真っ赤にした。
「バ……バカッ! そんなんじゃねぇ!」
メルは笑いが止まらなかった。
明らかにホークは動揺しているし、顔が真っ赤になっている。
その様子が可笑しい。
「バレバレ。顔が真っ赤」
ホークは驚愕する。
「えっ……?」
ホークは自分の頬をバシバシ叩いている。
明らかに誤魔化そうとして頬を叩いていることがメルにはお見通しだ。
「素直になりなさい」
メルはそう言って、背中を強く叩いた。
「痛いって……」
ホークは意外と強く叩かれて驚いていた。
肩に乗るくらいの小さな妖精のどこにパワーがあるのだろうと思ってしまうほど、強かった。
「もう、頼りないなぁ。ホークがセルティスを守ってあげなくてどうするのよ。セルティスはホークを必要としているのよ」
メルはホークの目をじっと見ている。
「えっ?」
ホークは一瞬、硬直してしまった。
(俺を必要としている……?)
メルは呆れた様子でため息をついた。
「セルティスもホークも鈍感ねぇ……」
ホークはメルを細目で見た。
「鈍感で悪かったなぁ」
メルはホークの様子を楽しんでいた。
「守りたいんでしょ。セルティスを」
ホークは急に真面目な顔をした。
「あぁ……セルティスはセルティスだ。だけど、俺が大事にしていた女性と
被ってしまう。だから、セルティスが放っておけなくなる」
メルは頷いた。
「なるほどね。セルティスは多分、自分でもわからないんだよ。ホークを頼りにしたい。でも、どう頼ればいいか、わからない」
ホークはメルの言葉を聞いて納得した。
セルティスに何があったのか、わからない。
でも、ずっとひとりで生きてきたような雰囲気はある。
ホークは眠っているセルティスの髪をそっと撫でる。
「ずっと、ひとりで生きてきて不安も恐怖も抱えてきたんだよな。辛かったな」
セルティスは眠っているはずなのだが、ホークに優しく髪を撫でられて、安心
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