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2章 四天王の手下

第39話 アランの幼馴染

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 セルティス、ホーク、アランはミリッツという村に来ていた。

 ここは比較的静かな村だ。

 でも、商人が真面目に懸命に働いていた。

 セルティス、ホーク、アランの3人は、旅に必要なアイテムを揃えている。

 セルティスたちに必要なのは回復薬だ。

 どんなものにも使える回復薬を多めに買う。

「最近、村にもモンスターが多いから、気をつけてな、女剣士さん」

 商人はそう言って、セルティスに回復薬を渡す。

「ありがとう、何かあったら言ってな。あたしが助ける」

 セルティスはそう言ってお店を出る。セルティスたちは、買い物を済ませた。

 グー

 大きな音がなる。

「……あっ……」

 アランのお腹の音だ。

 アランは恥ずかしそうにしている。

 セルティスは思わずクスッと笑った。

 アランは頬を膨らませてセルティスを見る。

「なんだよっ!」

 ホークはニヤニヤ笑って冷やかした。

「お腹空いてるのか?」

 「うるせぇ!」

 アランは恥ずかしさを誤魔化しているように見えた。

 グー

 また、アランのお腹がなった。

「うぅっ」

 セルティスは飲食店を探す。

「何か食べようか」

 優しく言ったセルティスに、アランは頷いた。

「そうしようぜ」

 セルティスは笑った。

「食べ盛りだしな」

 セルティスは飲食店を見つけた。

「ここ、美味しそうだけど、どうだろ?」

 アランに聞く。

 アランはメニューを見ずに、すぐにセルティスの見つけた飲食店に入った。

そんな様子を見て、セルティスは本当にお腹が空いていたんだと可笑しくなってしまう。

 アランは大盛りのライスと大盛りのステーキを頼んでいた。

「よく食うなぁ。若いって証拠だよな」

 ホークは呆れていた。

 ホーク自身もアランと同じくらいの時、こんなに食べてたのだろうか。

セルティスも驚いていたが、食べ盛りの少年だから食べるんだと微笑ましく思った。

「アラン、強い体を作るには野菜もたくさん食べないとダメだぞ」


 セルティスは、何故か母親の気持ちになって、栄養のことを考えていた。

 丈夫な体を作るには、トレーニングだけでなく、バランスよく食べることも必要だ。

 食べることは体を作る基本だ。

「ふぁーい、ちゃんと食べれるよー」

 アランはもぐもぐさせながら、言った。

 セルティスは目を丸くしていた。

「落ち着いて食べなよ、アラン。ゆっくり食べることも大事だぞ」

 セルティスは一気に食べようとしているアランに警告した。

 案の定、アランは急いで食べ過ぎて、咳き込んだ。

「ゴホッ、ゴホッ」

 アランは水を飲んで、一度落ち着かせた。

「大丈夫か? 焦って食べるからだぞ」

セルティスはアランの背中をさすった。

「なんか、お母さんみたいだな」

 ホークがボソッと呟いた。

 セルティスはホークの呟きに微笑んだ。

「あたしも歳をとったのかもな」

 セルティスの言葉にホークは、思わずセルティスをじっと見てしまった。

 ホークは女性に聞くのは失礼かと思っていたが、疑問に思って聞いてみた。

「失礼だと思うかもしれないけど、セルティス、何歳?」

 セルティスは特に嫌な顔もせずに答えた。

「27」

 27と聞いて驚いたのは、ホークだけでなく、アランもだった。

 ホークはじっとセルティスを見ている。

「もっと若いのかと思った。27って、俺と3歳しか違わないじゃん」

 アランはホークの言葉に納得した。

「ホークは年相応に見える。30だろ?」

 ホークは少しムッとしたが、そんなこと無視して呟く。

「セルティス、20歳くらいかと思った」

 セルティスは驚愕した。

「そんなに若く見えていたのか?」

 それには、ホークとアランも頷いた。

「それは嬉しいな」

 セルティスは苦笑いした。

セルティスは心を落ち着けてから、ゆっくりと食事をする。

 セルティスは野菜を中心にバランスよく食べている。

 しかし、少食なのか、あまり多くは食べてない。

「セルティスこそ、もっとちゃんと食べないとダメなんじゃねぇか?」

 アランが言うと、ホークも同意した。

「意外と少食なんだな。なんか、心配だな」

 ホークが独り言のように言った。セルティスは目を丸くする。

「なんで?」

 ホークは聞かれて言っていいものか考えた。

「うーん、セルティス、細いからさ、あまり食べないと、すぐ折れそうなくらいだからさ」

 結局、小声で言った。

 セルティスは苦笑いした。

 ホークは言ってから、ごめんと手で合図して謝った。

 そんな会話をしながら、楽しく美味しく食べて過ごした。

 食事後、セルティス達は、また、街中を歩く。





 その頃、復活した四天王を見て、笑いが止まらない男がいる。

 その男はワイルドアップバングショートで紺色の髪。コバルトブルーの瞳を持つ。名前はソーヤ・クラウド。

 ソーヤは四天王を復活させたことに大喜びだ。

「ようやく、復活した!! 邪魔するものは全て消して新しい世界を創るのだ!」

 四天王のひとり、アッシュはニヤッと笑った。

「よく甦らせてくれた。魔石を持つ者を殺して魔石を奪う!」

 そう言うと、何もないところから、急にモニターが出てきて、映像が映し出された。

「まずはこいつだな」

 と言って、ターゲットにしたのはアランだ。

「アラン・ヒロドか」

 アッシュは不敵な笑みを浮かべる。

「なぁ、こいつをどうするんだ?」

 アッシュに聞いたのは、四天王、エバンだ。

「あらっ、殺すのは簡単よね。でも、それじゃ、面白くないわよね。だから……」

 そう言ったのは、四天王で唯一の女性、ベアトリクスだ。

 四天王、ゼビルはポンッと手を叩く。

「そうだ。こいつの親しい奴、探そうぜ。そいつにそのアランとかいう奴を殺してもらう」

 ベアトリクスは目を輝かせて言った。

「そうすると、面白いかもねー、アランの幼馴染はどう? ほら、いたよ」

 モニターに映された1人の少年を指差す。

「面白くなりそうだな」

 アッシュは何かを企んでいるような笑みを浮かべた。

「じゃぁ、幼馴染のところへ行ってみるか」

 そう言って、早々とアッシュはアランの幼馴染のところへ向かう。

 四天王は人間型のモンスターで、完全に人間になりすますこともできる。

「いいねぇ。四天王! お前らの好きにしていいぞ!!」

 ソーヤは大笑いしながら叫んだ。
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