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1章 セルティスと仲間たち

第35話 回復魔法が効かない!

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 アランは爪をかわそうと、身体を反らそうとした。

「…っっっ!?」

 一瞬、三毛猫の姿が消えたような気がした。

 そのため、三毛猫の爪をかわすことができず、左肩を爪で突き刺された。

「アラン! 大丈夫?」

 ミラトが駆け寄ってくる。

「あぁ、大丈夫だ」

 アランはそう答えると、三毛猫に近づき、手裏剣を剣のように扱って、三毛猫を突き刺す。

 三毛猫はあっさりと爪で手裏剣を受け止めた。アランは舌打ちする。

(こいつら、雑魚のモンスターでは、なさそうだな)

 三毛猫はゆっくりとアランに近づいてくる。

「にゃぁ」

 三毛猫は甘えさせてとかわいい声で鳴き、アランの顔をスリスリする。

 アランは本当の猫のようで、思わず頭をなでなでしたくなった。

 そんなアランの油断したところを逃さなかった三毛猫は、アランの首を爪で引っかいた。

「油断は禁物だよ」

 三毛猫は更に腹にパンチをした。

 アランは三毛猫のパンチの勢いで、仰向けにドサッと倒れた。

「アラン、全然、大丈夫じゃないじゃん」

 ミラトはすぐにマジックソッドをアランにかざして、優しい風を起こす。

(仲間を回復させて!)

 マジックソッドに埋め込まれている魔石に強い意志を込めた。

 優しい風がアランを包み、傷を癒していった。

 アランは回復していく傷を見て、ミラトにウィンクした。

「サンキュー」

 ミラトはそのウィンクに目が点になった。

「あっ……」

 一瞬、キュンッとしてしまったことに、動揺した。

 しばらくボーッとしていたミラトは、アランに声をかけられてハッとする。

「ミラト! 油断するな!!」

 気がつけば、三毛猫がミラトを狙っている。

 ミラトはかわす余裕はなく、反応も鈍かったため、咄嗟の動きもできない状態だった。

「やばいっ!」

 三毛猫は爪を立てる。

「死ね」

 ミラトは思わず目を閉じる。

 アランは素早く三毛猫の爪を手裏剣で受け止めて、ミラトを抱えた。

 その格好は、お姫様抱っこだ。

「へっ?」

 ミラトはアランに抱えられて、呆然とした。

 この抱きしめられている感覚がなんともいえなかった。

 厚い胸板が何故か安心感をもたらす。

「大丈夫か? 何、ボーッとしてんだよ」

 アランはすぐにミラトを下ろすと、三毛猫に向き直った。

 ミラトはカーッと顔が熱くなった。

「ありがとう」

 動揺を隠しながら、アランに感謝する。

(もう少し、抱きしめられていたかったな)

 と、心の中で思った。アランは首を横に振る。

「礼はいらない。仲間なんだから助けるのは当たり前だろ」

 そう言って、アランは三毛猫に手裏剣を素早く投げる。

 その手裏剣は一瞬、消えて、三毛猫の爪を刺した。

 三毛猫は雄叫びを上げた。

 爪をかなり深くまで刺されて、痛みが激しかったようだ。

「にゃぁー!!」

 三毛猫は怒り狂ったように、爪から炎の球を起こして、アランに投げつけた。

 アランは後方へと回転し、炎の球をかわすつもりだった。

 しかし、思ったよりも炎の球が速かった。炎の球が、アランの頬を掠った。

「ちっ」

アランは舌打ちをして、連続で手裏剣を投げた。

 その手裏剣は光の筋となって三毛猫を突き刺した。

 三毛猫は手裏剣を爪で地面に叩きつけた。

 手裏剣でシュッと音を立てて、地面に突き刺さる。アランはその様子を見て、フッと笑った。

 アランは三毛猫に強烈なキックを仕掛けた。

「悪いな。俺、武器はこれだけじゃないんだよ」

 三毛猫は予想していなかったか、突然のキックに意識を失う。

 三毛猫が動かないことを見て、アランはドヤ顔をする。

 ミラトはアランの頬の傷を見ようと、手を触れた。

「このくらいなら、魔法士なくても大丈夫だね」

 ミラトはそう言うと、ハンカチで出血を止め、絆創膏を貼った。

 アランは、照れくさそうにしていた。

「あ、ありがとう」

 ミラトは感謝されて、なんか恥ずかしくなり、慌てて言った。

「さっきのお礼だよ」

 ミラトはアランの目を見ることができず、白猫、黒白猫、トラ猫の方を見た。

 ライラは、三毛猫と黒猫が倒されたことにイライラしている。

「なんで、そんなに弱いんだ!」

 ライラは白猫、黒白猫、トラ猫の3匹に荒っぽい言い方で叫ぶ。

「まとめて全員、殺せ!!」

 ライラの声を合図に、白猫、黒白猫、トラ猫がレビーとノースに襲いかかった。

 レビーは白猫と黒白猫にストレートパンチをする。

 グローブに埋め込まれている魔石から光を放ち、白猫と黒猫は空を舞った。

 白猫と黒猫が体勢を整える寸前に、ノースは銃、ブレイクガンを撃つ。

 白猫と黒猫は跪いた。

「役立たずめ!」

 トラ猫が言い放ち、レビーに爪を立てた。

 レビーは素早く反応して、ジャンプして爪をかわした。

 が、すぐに白猫がレビーに噛みついてきた。

「こっちには気づかなかったのか」

 白猫はしてやったりという表情をした。

 レビーは舌打ちすると、息を吐く。

 肩から血が流れているのを感じながら、白猫にキックをした。

 レビーの得意技、跳び膝蹴りだ。

 白猫は体重が軽くて、キックをされただけでも勢いよく吹き飛んだ。

「どいつもこいつも弱いな」

 ライラは呆然とした。

 ホークはダガーでライラの首を切る寸前で止めた。

「じゃあ、お前はどうなんだ?」

 ニヤリと笑っている。

 ライラはホークの挑発に乗った。

 稲妻のような速さでホークに近づき、爪でホークの首を引っ掻いた。

 ホークはライラの動きを読むことができなかった。

 ホークの首からは、血が滲んでいる。

「ホーク、大丈夫か?」

 セルティスが駆け寄ってきた。

 その時、ライラの強力な爪がサラティスの背中を狙っていた。

 セルティスはその気配に気がつき、ラグナロクを鞘から取り出そうとしたその瞬間のことだった。

 セルティスの身体は地面に強く押し倒された。

 驚いて一瞬、目を閉じてしまった。

「!?」

 セルティスの目の前にいたのは、ホークだ。

「ホーク、何を……」

 セルティスは呆然として、しばらく動けなかった。

 ホークがセルティスを助けた。

 そう、助けたけれど、ホークの背中にはライラの爪が食い込んでいる。

 ホークはセルティスの上に乗るような形で動けなくなっていた。

 セルティスはすぐにホークをその場に寝かせて、声をかけた。

「ホーク! しっかりしろ!!」

 その声にミラトは、すぐにホークにマジックソッドをかざして、傷を回復させようとする。

 ところが、ミラトの回復魔法が効かない。

「なんで……?」
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