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1章 セルティスと仲間たち

第18話 感謝の気持ちを忘れない

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 セルティスたちは、レビーを加えて、シオルの街を調べることにした。

 なぜ、街や人が焼き尽くされたのか、まだ、焼き尽くした犯人がいると思ったからだ。

 とはいえ、もう真っ暗だ。諦めて休むことにしたほうが良さそうだ。

 休む場所を探そうとシオルの街を歩きまわった。

 シオルの街に来てすぐ、焼き尽くされた人や街を目の当たりにしていた。

 しかし、先を進むと、先ほどとは変わって人々が忙しそうに働いている姿がある。

「まだ、街が生きてた」

 街全部が焼き尽くされていたと思っていたアランは、ホッとした様子だった。

 一部は、焼き尽くされていたが、ここはまだ賑やかだ。

 アランの言葉にセルティスも頷いた。

 それにしても、真っ暗になっていたが、まだ人々は元気に働いている。

 最も、今は夜勤で働いている人もいるから、時間は関係ないかもしれない。

 グゥゥゥ~~

 アランのお腹がなった。

 ホークとレビーが笑った。

「お腹空いているのか」

 ホークはアランを冷やかした。

「うるせぇな!」

 アランはムッとしてホークを睨みつける。

 セルティスは飲食店らしき建物を見つけて、声をかけた。

「だったら、そこで食べるか?」

 アランは目を輝かせた。

「そうしようぜ!」

 アランは食べ盛りの年齢なので、特盛の牛丼を5杯も食べていた。

 アランは食べ終わると、満足そうにお腹をさすっていた。

 そして、財布を取り出して、店員に値段を尋ねた。

「1450円だよ」

 店員がテキパキと計算して、アランに告げる。

 アランがお金を出そうとすると、セルティスはサッとお金を出した。

「えっ?」

 アランは仰天している。

 セルティスは優しく言った。

「アランは、まだ、給料もないだろう?だからあたしが奢る」

 アランは困惑した。

「でも、流石に悪いから、お金返すよ」

 セルティスは困惑しているアランに、提案した。

「わかった。どうしてもって言うなら、アランがしっかり稼げるようになってから、返してくれればいい」

 アランは少し考えたが、頷いた。

「ありがとう。ちゃんと稼げるようになって返すから」

「へぇ、俺も奢って欲しかったな」

 ホークはボソッと言った。

 その声は、セルティスにも聞こえていた。

「あんたはちゃんと、稼いでるだろ」

 ホークには冷たくあしらった。

 レビーは静かにセルティスたちのやりとりを見ている。

 夕食をすませたセルティスたちは、ホテルでチェックインする。

 ただ、部屋は3部屋しかない。3部屋しかとれなかったので、セルティスは
ホーク、アラン、レビーに譲った。

 しかし、アランは、ホークとセルティスに一緒になって欲しいという気持ちだった。

 だから、思いついたようにポンと手を叩いた。

「セルティス、ホークと一緒の部屋でいいじゃん!」

「え?」

 セルティスだけでなく、ホークも目が点になった。

「お似合いのカップルだと思うぜ。いいじゃねぇか。2人の時間作れよ」

 アランは悪戯に笑っている。

「まて、カップルってなんだ?」

 急に慌てて言い出したのは、ホークだった。

 アランはニヤリと笑って、半ば強引にセルティスとホークの腕を引っ張り、部屋に連れていく。

「お2人さん、ゆっくり時間を楽しんでな」

 アランはそう言って、去っていく。

「ちょ……」

 セルティスとホークは同時に言いかけて、黙った。

 セルティスもホークも黙ってしまった。

 先に声をかけたのは、ホークだった。

「…先にシャワー浴びるか?」

「あぁ、ありがとう」

 セルティスは、ぎこちなく言った。

 お言葉に甘えて、セルティスは先にシャワーを浴びることにした。

シャワーを浴びたセルティスは、ほんのりと赤くなっている。

 ホークもシャワーを浴びる。

「やっぱり、あたし、別のところで寝るよ」

 セルティスはそう言って、部屋を出て行こうとする。

 ホークはセルティスを呼び止めた。

「どこで寝るつもりだよ」

 セルティスは少し考えた。

「……野宿かな。この辺、泊まれるところここしかないしな」

 ホークはため息をついた。

「いいよ。俺、床で寝るからベッド使えよ」

 セルティスは沈黙した。

「女の子を床に寝かせるわけにもいかないし、野宿だって危険だしな」

 ホークは恥ずかしそうに言った。

「……あたしなら大丈夫だ」

 セルティスは冷めた口調で言う。

 ホークはため息をつく。


「いいから。ベッドで寝ろよ」

 セルティスは困惑していたが、ベッドで寝ることにした。

「ありがとう」

 セルティスはベッドに入って、寝る前に呟いた。

 ホークはセルティスが呟いたのを聞いて、気になって尋ねた。セルティスは、息をフーッと吐いてから、言った。

「1日の最後に必ず、感謝する。無事でいられたことに。あたし達はいつ、どうなるかわからない。こうやって生きていられることは、当たり前じゃない。だから、こうやって生きていられることに感謝する」

 それを聞いたホークは、剣士としての覚悟とそれに伴う恐怖もあるのだと感じた。だから、ホークは決意した。

「俺はセルティスを守る! おまえは強い。でも、本当は怖さもあるんだろ?」

 セルティスは黙っている。

「おまえ、ひとりで背負ってきたもの、俺も背負ってやる」

 ホークは強い口調で言う。

 セルティスは目から一粒の雫が溢れ落ちた。

「ありがとう」

 セルティスは小声で言った。

 ホークは、セルティスの涙を手で拭った。
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