インターセプト

レイラ

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第2部 5幕

インターハイ開幕17

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 そろそろ、スリーポイントを阻止してくるだろうと考えていた俺は、既に次のプレーを考えていた。

 とりあえず、今はディフェンス。狙えれば、ボールを奪う。つまり、スティールだ。

 市村から吉村、吉村から野崎、野崎からジェームズ、ジェームズから立川とパスを繋いで、城伯高校を翻弄した。

 シュートする素振り、ドリブルをする素振りを見せて、速いパスで回していく。

 最終的に立川にボールが渡ると、両手でリングに叩きつけ、ダンクをする。

 そこに慧が手を伸ばす。

 ボールを叩いてブロック。

 だが、慧はブロックしたとき、立川に体当たりする形になってしまった。

 その瞬間、笛が鳴る。

 慧のファウルだ。これで慧は4ファウル。

 あと、ひとつファウルをもらったら、ファウルアウト。退場となってしまう。

 慧は、立川の体を起こすために手を引っ張った。

「ごめん」

 慧は何度もその場で謝った。

 怪我をしていないようだから、少しホッとした表情だ。

「気にするな、それだけ良いディフェンスしてるってことだよ」

 立川は助けてもらったお礼として、肩をポンポンと叩いて合図した。

 ファウルになるのは、ある程度仕方がない。それだけ、粘り強いディフェンスをしているということにもなる。

 立川には、フリースロー2本が与えられる。そのタイミングで、高宮コーチはメンバーチェンジを要求した。

 慧に代わり、快がコートの中へ。

 慧は4ファウルなので、コートには出しづらくなってくる。

 ラストなら良いのだが、まだ、3クォーター。4クォーターも残っている。この状況なので、基本的には、いざという時しかコートの中には入れない。

 高宮コーチは、立川が1本目のフリースローをしている間に、俺を呼ぶ。

「樹、セットプレーになったら、もっとスクリーン使え」

「はい」

 セットプレーは、型が決まっているプレー。そのときにスクリーンを使うことで、スペースが空けて、攻撃しやすいようにする。

ボールを持っていない選手、オフボールの選手がボールを持っている選手のディフェンスを抑え、壁を作って一時的に動きを封じる。これがスクリーン。

 これをもっとやって、オフボールの選手が、ボールを持っている選手を自由にプレーできるようにする。

 高宮コーチは、そういうことを言いたいのだと理解した。

 俺もそう考えていた。そして、外、中、外、中とパスを繰り出し、チャンスがあれば、シュート。

 外はスリーポイントラインよりも外側、中はペナントエリア、台形の中のことを指す。

 ただし、ペナントエリアはオフボールの選手が3秒以上いたら、反則なのでいかに素早く開くかがポイントだ。

 俺は一度、頭をクリアにするため深呼吸をした。ちょうど、そのとき、立川の1本目のフリースローが外れた。

 立川のフリースロー2本目。

 2本目は外したときにリバウンドがとれるように、しっかりとポジションにつく。

 立川の2本目のフリースロー。

 ゆっくりとした動作で、軽くボールをつき、シュートを放つ。

 ボールはリングの周りをぐるぐる回った。

 そのボールはリングを3周したあと、リングの中へ滑り落ちた。

 2本目のフリースローは成功。

 城伯高校のオフェンスだ。

 俺は、快にフリースローラインまで来いと指で合図する。その後で、灯にスクリーンをかけにいけと目で訴える。

 灯が快をマークしている立川にスクリーンをかければ、壁ができる。一時的に立川のディフェンスを止められる。


 すると、快が今までいた場所が空く。そこに、俺はドリブルで、ゴール下まで切り込むドライブをする。

 ノーマークでシュートができる。ただ、スムーズにはいかないことも考えている。

 俺は、ボールをリングに置いてくるようにシュートしようとしたとき。

 市村のシュートブロック。

 ボールをバシッと叩いた瞬間、俺の目に腕が直撃し、バランスが崩れ、倒れる。

「樹先輩!大丈夫ですか?」

 快がすぐに駆け寄ってきた。

 俺はすぐに立ち上がるものの、目に当たったため、しばらく目が開けられなかった。

「悪かった。大丈夫か?」

 市村も声をかけてきた。
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