インターセプト

レイラ

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第2部 5幕

インターハイ開幕4

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 俺はスリーポイントシュートを放つ。

 何もかもがスローモーションに見えた。

 ボールの軌道も人の動きも。

 まるで、時間が止まったかのようだ。

 ほんの1秒、2秒のことなのに、1分くらい経った感覚だった。

 ボールがリングに入るまでの時間。

 これほどまでに長く感じたことはなかった。

 だから、俺はスリーポイントが成功したことに気が付かなかった。

 ものすごい歓声で、ようやくスリーポイントが入ったと認識した。

「ナイシュー!」

 美香の声が聞こえたかと思うと、慧や貴の声、観客席からの声が飛び交っていた。

「どうしたんですか?」

 風斗が声をかけてきた。

 俺はこの感覚を説明することができず、風斗になんでもないと言って、笑顔を見せた。

「今のはまぐれだろう。データとしてはスリーポイントシュートが得意ではなかったはず」

 吉村が市村の肩を叩いて、小さな声で呟いている。でも、その声は、はっきりと俺に聞こえていた。

 確かにスリーポイントは、そこまで得意じゃないけれど、完全に舐められている気がする。

 まさか、三ツ谷高校もインターハイで城伯高校と戦うことになるとは思っていなかったはずだ。

 弱小チームで、無名の高校だったのだから。

 ピーッ

 笛がなった。

 審判は三ツ谷高校の選手交代を合図した。

 吉村がアウト、黒山がコートにインした。

 黒山が入ったことで、俺には黒山がついた。

 市村は、どうやらポジションを変更し、シューティングガードとしてコートに立つようだ。

 黒山はジェームズにパスをする。

「いけっ!」

 黒山は、ジェームズに1対1の勝負をしろと、目で合図した。

 ジェームズは頷くと、1対1を仕掛け、レインアップシュートをする。

 1、2、3のリズムでジャンプし、ボールをリングに置いてくるようにシュートを打とうとした瞬間。

 貴がボールを叩いた。

 ジェームズのシュートをブロックした。

 そのボールを取ったのは、風斗だ。

 風斗は手で、すぐ戻れと合図する。

 俺は風斗をマークしている野崎の壁になり、風斗をゴール下まで行かせようとした。

 野崎の壁になるということは、スクリーンをかけにいくこと。

 俺がスクリーンをかけにいき、風斗がプレーしやすいようにする。

 そして、俺は野崎の壁を利用し、方向転換して、右のコーナーへと移動する。

 風斗はそこを見逃さなかった。一度、ゴール下までドリブルで切り込む、ドライブをしたものの、シュートはしなかった。

 シュートをすると見せかけて、俺へとパスをする。

 野崎にスクリーンをかけにいった後、俺が方向転換をし、空いたスペースでパスを受けにいった。

 これをピックアンドロールという。

 俺はノーマークになっていて、迷わずスリーポイントを打つ。

 コーナーからのシュートは難しいが、これも、外す気がしなかった。

 ボールは綺麗な弧を描き、シュッとリングの中へ入っていった。

「よっしゃ!」

 俺はガッツポーズをした。

 2本連続のスリーポイントシュート。

 先ほどとは、また違う感覚だ。

 貴は市村がドリブルしているところを狙い、ボールを奪った。

「ナイス、スティール!」

 貴は俺にボールを渡す。

 行ける!

 俺は再びスリーポイントを打った。
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